カオスだ。
懐から出した寸胴鍋の蓋に手をかける。
ほんの少しだけ開いた鍋の中からは、食欲が促進してしまいそうな匂いがする。
その匂いは一気に広がり、周囲から数秒の間音を消した。
「さあ!くいたい奴はいねーか!俺の特性だぜ!」
宴の〆に相応しくはないけどな・・・と苦笑い
「まあ、酒だけでもまだまだ続くしな。気にしなくていいか・・・」
町人達に若干の呆れを見せるものの、ヨヅルの目は温かみを帯びていた。
しかし、当然の様に騒ぎ出す奴がいる。
勇者だ
飢えた狼よりも凶暴な目つきで暴れているのだから始末が悪い。
「はあ、いいよ。ちょっと待ってろ、くわせてやるから。」
そう言うと、ヨヅルはスープを椀で掬い
勇者の頭にかけた。
「あちゃああああ!おい!おいやめろ!あつい!けどうまい!なんだこれ!おい!」
縛り付けられているというのにクネクネ動く勇者
「うわぁ・・・5割り増しできもちわるくなった。」
「ごわり?ってなーに?」
ふと呟いてしまった言葉に、カレーをおかわりしに来ていた少女が聞いてきた。
「なんでもねーよ。ほら、おかわりしていきな!」
「うん!」
走り去る幼女を微笑ましく見つめるヨヅル。
そのヨヅルを狂気を含んだ目で睨み付ける勇者。
そして、その勇者を見て笑い転げる子供達。
「うん、なかなかのカオスだ・・・」
だからそろそろ終らせよう。
終らない宴などない。
全ては平和のため、自分のため、世界のため。
「〆だ、勇者は肥料になってもらうぞ。」




