んっまーい!
「おい!どこだと聞いているだろう!答えろよ!」
勇者の声を無視して淡々と調理を進めるヨヅル
「おい!俺は勇者だぞ!言う事を聞け!無視をするな!」
暴れ続ける勇者が鬱陶しいほど騒いでいる。
「おーい!みんなー!自称勇者様がお目覚めだぞー!」
調理をしながら、笑いながら人々に声をかける。
釣られるように円の外の人々も笑い出した。
「あはは、石ころでも投げてやったらどうだ?あんまり大きいのは投げるなよ?爪くらいのやつだぞ!」
それを聞くと、子供達は石ころを拾いに動き出した。
「おい!やめろ!俺が何をしたって言うんだ!ふざけるなよ!」
「おい」
勇者の声にヨヅルが返した。
とても冷たい声で・・・
勇者からは顔が見えない、町の人々からは炎で見辛い。
どんな顔をしているかはわからないが、その声はとても恐ろしいものだった。
「お前はこれから死ぬよりも辛い目にあうんだ。わかるか?」
「だ・・だから!なんでこんな事になっているんだよ!」
「お前がこの世界に余計な知識を広めようとしたからだ、魔王は悪なのは皆知っている事だ。だがな?勇者も世界にとっては悪なんだよ。」
「なんd・・」
言い返そうとした自称勇者の言葉も、漂い始めた香りに止められた。
「よーし!揚がったぞ!」
その声を聞き、小石を投げていた子供達が近寄ってきた。
「ほれ!熱いから気をつけて持っていくんだぞ!」
はーい!という元気な返事を聞き、うんうんと頷く
「やっぱり子供は元気じゃないとな!」
「なあ、それって天ぷらか?」
「ああ、天ぷらだ。食いたいのか?」
子供達に手渡していた天ぷらを見て勇者が催促してきた。
「やらないぞ?お前は世界の敵だ、そして世界の敵は俺の敵だ。」
あ、そうだ
と呟き、一部の火を消してから子供達を呼び込んだ。
「おーい、ガキ共!うまかったか?」
子供達は元気に答える。
「おいしかったー!サクサクでふわふわなの!」
「そうだろう!これはな、この自称勇者の世界の食べ物なんだ!」
「おい!そこのクソガキ共!それを俺によこせ!」
ヨヅルが分けてくれないと知ると、今度は寄って来た子供達に脅し始めた。
「あーらら、いいかーガキ共!びびることはないぞ!こういう時はな?こうするんだ!」
泣きそうな子供達を宥めてヨヅルは天ぷらを片手に勇者に近づく。
そして、耳元に口を近づけると・・・
サクッ サクサク
「んっまーい!てな?ほら、見てみろこいつの顔!」
音と匂いで涎をたらして泣きそうな勇者がそこにはいた。




