35、PM3:00
午前中の時間ならば、日差しがでていてまだ温かいと感じられる。しかしこれくらいの時間になると、この季節では寒いか温かいかという瀬戸際のラインであった。
「あうー……疲れました」
午前中に張り切りすぎて、周りに仕事を指示しながら自分の仕事もどんどんハードにしていった少女は、ついに力つきたようで、机に突っ伏した。
少女が力つきると共に、生徒会にいたメンバーに休憩という雰囲気が伝わり思い思いに腕を休めていった。
「ったー! 疲れたぜェ!」
「……さすがにこれは、きつかったかな?」
身体を延ばす会長と、その隣で困ったように別の少女が笑う。
「確かにこれはきつかったかもしれません。若干の考えなしだったと後悔しておりますよー」
だらける少女のとなりで、副会長だけが黙々と作業を続けていた。
「あ、先輩もやすんで大丈夫ですよ?」
「これが終わったら、そうする」
きりが悪いのだろうか、と思った少女であった。しかし見る間に書類を送っていく副会長を見る限り、きりが悪いようには見えない。となれば、今がのっているところなのだろう、ならば邪魔にならないように下がっているに限った。
「くっそ! なんだよ、もうこんな時間じゃねェか?」
「どんな時間です?」
少女が見上げると、それはちょど世間一般で言うところのおやつの時間というやつだった。
「ふっふっふーん」
意地が悪そうに少女が笑う。
「おい。んな目でこっちみんなよ! ハンパなく嫌な予感しかしねェんだが?」
「会長さん! 私疲れちゃいました。働き過ぎてしまったので、脳味噌の糖分が空っぽになっちゃったみたいです!」
どこか甘えつくような少女の声。
「へぇー。そいつは大変だな。次からはキビ砂糖でも持ってきてやるから今日は勝手に頑張れ」
「会長さん。私ケーキが食べたいです。駅前に私のお気に入りのケーキ屋さんがあるんですけどー」
「——てめェ人の話し聞きやがれ!」
夢見る少女の瞳で語り出した少女を、何とか現実世界に戻そうとする会長であった。
「私、実はこの生徒会室でみんなで囲んでケーキ食べるの、憧れてたんですよー! お金は私がもちますから、ねぇいいでしょう?」
強い期待を瞳に宿した少女に、生徒会長は思わず気後れした。しかししばらくした後に、降参というように大きなため息をついた。
「分かった……分かったぜ。ただし、てめェを騙したってやつはこれでチャラだぜ?」
「ありがとうございます。会長さん! なんでも柔軟に対応してくれる会長さんのそういうところ、私嫌いじゃないですよ!」
飛び跳ねるように喜ぶ少女は、どさくさにまぎれて生徒会長に、ひしっと抱きついた。
「てめェ。アルコールでも飲んだんじゃねェのか?」
少女のはしゃぎように、生徒会長は呆れた目を向けた、
「んじゃ……ちっと行ってくるぜ。注文は纏めて、後で俺にメールで送ってくれ。……後、金は割り勘な」
そう残して、生徒会長は出て行った。
雪が、降り始めたのは、それからしばらく過ぎてのことだった。
少女は嬉しそうに空を見上げていた。
今日はきっと、最高の日になる。
そう、思っていた。
なのに——。
「遅すぎです。会長さん!」
感動の熱も冷めてしまったとばかりに少女はふてくされながら、時計を睨む
時刻はすでに4時を回っており、生徒会長は未だ不在のままだった。
暖かいストーブの前を占領しながら、少女は携帯電話を取り出して催促の電話をかける。
学園から少し離れた、人通りの少ない路地で、男の携帯電話は鳴っていた。
それは半ば雪に埋もれながら鳴っていた。
近くには男が倒れている。
雪は、しんしんと、ただしんしんと、静かに舞い降りる。
……更新履歴……
2013/03/18
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2012/12/29
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