32、I miss you
明日なんてこなければいい。
子供ではないのだ。もう、そんな空想を言うよな人間ではない。
しかしそれほどまでに大切な人で、大好きな親友だったのだ。
そんな親友に昨日から避けられ続けている。親友が好きだと言っていた先輩を奪うようなことを——現実はたぶん違うが、疑われるようなことをしたのは事実だったし、先輩といられる時間を楽しみにしていたことは否定できない。
すべての責任は、自身にある。
「んで? テメェはどうしてここに来たんだ? 暇なら何か手伝ってけよ!」
放課後の合図と共に、一目散に逃げ出した親友を追いかけてやってきた生徒会室。しかしそこに求めた少女の姿は無く、いるのは昨日から謹慎が解けた復帰した副会長と生徒会長だけである。
「あの、あのコは?」
「あのコって、うちの書記のガキか? ついさっき嵐のように来て、調子わりぃから今日は帰ります! とか言って出てったぜ?」
分かってはいたが、完全に避けられている。それも親友がもっとも大切にしていた生徒会での活動時間すら犠牲にして、避けているのだ。落ち込むなという方が無理があった。
「そう……ですか……」
がくりと肩を落として、生徒会室に背を向ける。
「まぁ。少し待とうぜ。当てがはずれてどうせ暇なんだろ? 話しでもしようじゃねェか?」
ストレートに言われるとしゃくに障るが、時間が余っているのは事実である。
深いため息を漏らしたら後、手近なイスに座った。
「……俺のせいだ。すまなかったな……」
成り行きを見守っていた副会長が言う。
「いえ……自業自得です……」
気にしてないと伝わればよいと笑いかけたが、逆に渋い顔を返されてしまった。おそらく自嘲的に見えたのだろう。
「俺からも行っとくぜ。悪かった! あのガキをケシカケたのは俺だ」
生徒会長が頭を下げる。
「だから、本当に。気にしないでください。そんなに謝られたら私が悪者みたいです」
親友から見れば、きっと悪者なのだろうなと思う。
深いため息をついた。そう思えば思うほど、どんどん落ち込んでいく。少なくとも、親友に非はない。
「……もう、昔みたいには戻れない……かな……」
ぼそりと呟いた。そんなの絶対に嫌だといいたいが、其れを決めるのは自分ではない。親友が許さないと決めれば、破局である。
「いつものアンタらしくねェな? だいたい俺の見立てじゃあのガキは腹立ててるようには見えねェ。気まずいから逃げてるっつう類のくだらねェ理由だぜ」
1つの迷いもなく断言する生徒会長。その姿が、なぜかうらやましく感じた。
「あのコのこと、詳しいですね……」
「ま、なんだかんだで結構長いつき合いになってんでな。これくらいでへそ曲げる奴じゃねぇってことは知ってるつもりだぜ? だいたい。アンタもこれくらい分かってんだろ?」
「……」
諭されるまでもなく、理解しているつもりだ。しかし、現実の結果を見るとそれを信じることは難しかった。
「こいつは重傷だぜ……」
「……今回の件は俺達のミスだ。お前に不手際はなかった」
「それでだぜ! 丁度今、仲直りに少しは強力してやンのが筋なんじゃねェかって話してたとこなんだ」
胡散臭いものを見るような目で2人をみた。
心配してくれるのはありがたいが、この2人の協力してもらったとして、現状が良くなるとは思えない。むしろ悪い方向へ偏りそうだ。
「気持ちだけ受け取っておきますよ。それでは、私はこれくらいで帰りますね」
「おっとまちやがれ! 俺は隠し事とかきれェだからストレートに言っちまうがな! 正直な話しうちの生徒会で最も仕事が速いのはあのガキだ。そのガキが、昨日に引き続き今日もいねェとなると……分かるだろ?」
つまり迷惑だから早く仲直りしろと言っている訳である。
「俺達もわりぃと思ってンだ。普段なら急かすようなことはしたくねェんだが、仕事に学園祭に関わるモノがチラチラ出始めてな。そろそろなりふり構ってられる状況じゃなくなってるみてェなんだ……っつう訳で、アンタが何言っても手伝うから覚悟しやがれ!!」
生徒会長は笑顔でそう告げると、立ち上がり、床に捨ててあった木刀を握る。
「え……っと? 生徒会長、何を?」
「任せろ! 俺達生徒会が動けば、テメェ等の仲なんて一瞬で修正しちまうぜ! 大船にのった気でいろ! なぁに、感謝なんて一つもいらねぇからよォ!」
振り上げられる木刀を目で追いながら、この大船どころか草船にも負ける船ではないかと、疑問に思った。




