2、記憶の色彩
気がつけば視界までもが赤に染まっていた。
そのことに気がついた少女は、はっ、と我に返り大きく身を引いた。
赤い。
右も左もすべてが赤かった。激しい吐き気に襲われ少女は、ぐっと喉を詰まらせた。反射的に手が動き、口へ向かう。
しかしその過程で、少女は周りに広がるすべての赤よりも、より一層赤い自らの手を見てしまった。
「……うっ…………」
逃げるように一歩後ろへ下がった。靴の底でグチャリと湿った音が聞こえた。
「っ!!」
少女は勢い良く上半身を起こした。
呼吸は乱れ、首筋は汗でじわりと湿っていた。
「……ここは病院……ですか?」
見たこともない白いベットに、白いカーテン。特有の潔癖感をまとったこと部屋は、間違いなく病室だった。
開かれた窓からは爽やかな風と夕暮れが入り込んでいて、この部屋には少女の他に誰もいなかった。
少女は瞳を閉じると、背中から倒れこんだ。
バフという音とくぐもった音を鳴らした布団は一瞬だけ膨れ上がり、直ぐに自重にしかれてゆるゆると戻っていく。
「……夢……。じゃありませんよね? まさかあんなことになるとは、思いませんでした……。」
少女は自分を悔いた。
何も考えず、ただ面白そうだという理由で気まぐれに踏み込んだ。もしそんなことさえなければ、大切な友人と笑いながら今日を終えることが出来たはずだった。
夕暮れに染まる天井を見ながら、少女はふぅっ、と溜息をついた。
「苺狩りとか……もう絶対いかないです……」
今日という休日を使って、少女は友人と共に苺狩りに挑戦のだった。
初めうちは美味しいと感じたが、食べた数が少女2人の指の数で数えられないくらいになってくると状況は一転した。むろん、苺の味は変わらず可愛らしい甘さを宿していたのだが、次第にそれを食すことに僅かな苦痛を感じるようになった。
普段ならばそこで苺を食べる行為をやめていただろう。しかし苺狩りとしてビニールハウスに入るのは、当然ただではない。結構な額の入場料を支払っている。だとするならば、1つでも多く苺を食べるべきなのだろう。その思いが、少女の手に更なる苺を握らせ続けたのだった。
そして、そこから意識がない。おそらく食べ過ぎで倒れて、救急車で運ばれたのだろう。
少女は瞳を閉じた。
苺の艶やかな赤が、今でも目の裏に浮かび上がるようだった。
少女は再びため息を付いた。これから起こるであろう医者とのやりとりを考えると、恥ずかしくてしょうがなかった。




