18、星の砂
小瓶を傾けると、中で青い砂がさらさらと流れていった。
「少しだけ華やかさにかけますかね?」
瓶のコルク栓をはずして、白い砂を少しだけ混ぜて、再び小瓶を傾けて色のバランスをとる。
少女は机の上に小瓶をおくと、腕を組んで唸り始めた。
「おい、ガキ。出来たか?」
「会長さんは本当にいつも他人任せですね……。夏休みの思い出に生徒会で旅行に行くのは良いですが。……が、いくら浜辺の砂が星形で珍しかったといっても、ボトル3つ分も持って帰ってくなくてもいいじゃないですか! 第一もってかえってきたなら自分で処理してくださいよ! このまま瓶つめしても味気ないですから、砂に色つけたりいろいろ処理しなきゃならずで、大変なんですよ!」
悠長に話す男に、少女はキッと牙をむけた。
「わりぃな。俺は芸術的なセンスがねぇからそいういった作業は苦手だぜ! っつか俺としてはそのまんまボトル詰めにして放置する予定だったんだが……」
「む! そんなのだめですよ! せっかく持って帰ってきたのですから、やっぱり綺麗な形にして生徒会室に飾ったり、おみやげとしてご学友にプレゼントするのが道理じゃないですか!」
「まぁ好きにすればいいぜ」
言われなくても好きにしますとも、と少女は会長に向かってべーと舌を出した。
会長は天井を仰ぎ、肩をすくめる。。
「なんです? まだ何か用ですか?」
自分の机から少女の机までやってきた会長を、少女は胡散臭そうに見上げた。
「そうツンケンすんなよ」
会長はそういうと、少女の机の端に寄せてある書類の山を持ち上げた。
「何するんですか! それは私の仕事ですよ!」
少女は腕を振って書類を奪おうとするが、それより早く会長は一歩退いた。
「結果的に俺がテメェの仕事を増やしちまったみてぇだしな。これくらいは肩代わりでやってやるぜ」
「へ? 会長さんが私に仕事を回すではなく、私の仕事をやる。ですか!?」
少女はお化けでも見たかのような視線で、会長を見上げた。
「あ、ありえません。あまりに非現実的過ぎます……。私は今、どうやら夢の中にいるようです……」
「このガキ。テメェの頭の中の俺はどうなってんだよ!」
「人間よりもむしろ、猿やゴリラと似た生命体だと認識して——って、痛! 痛いです!」
会長は書類の山を握ったまま、器用に両拳で少女の頭を挟み、ぐりぐりと力を入れる。
「痛い! 痛いです!! ほんとに痛いですってば!! すみませんごめんなさい失礼しました、もう言いませんので止めてください!」
早口で懇願するその願いを受け入れた会長は、少女の頭を解放した。
少女はくらくらする頭を片手で押さえて、会長を見上げる。
「うぅ……酷いめに合いました……。しかし会長さん。お仕事任せちゃって面目ないです。ありがとうございます」
「気にすんじゃねーよ。っつかテメェも初めからそう言えっつんだよ。素直じゃねぇーやつだぜ」
素直か素直じゃないか、というよりも会長がいつもダラケていることに問題があるのでは、と内心で強く思った少女だったが、何も言わずに黙っている事にした。
「おい……」
奥で黙って作業をしていた副会長が会長を呼び止めた。
「ん? あぁ、騒がして悪かったな」
「それはどうでもいい。お前にその量では今日中には終わらない。半分寄越せ」
書類から目を離さず、副会長はぶっきらぼうに片腕を差し出した。
「おう! 気がきくね、助かるぜ!」
会長は手にした書類の半分を渡した。
「あ……先輩。ありがとうございます」
副会長はちらりと少女を見て、気にするなと示すと、黙々と作業を再開した。
「ちょっと待て、なんでテメェはこいつにだけ素直なんだ?」
「人望の問題ですよ」
少女は微笑みかけた。




