始まり
暗闇の中、彼は微笑をたたえていた。
その姿は…まるで彼が世界を支配しているかのような―怯えも恐れも感じられない「残虐」を行使する「神」だ。
彼の目の前に広がる血の海…おぞまじい死体… その中心に座る彼は思い立ったように立ち上がり死体の一つを楽しげに踏みつけた。 響く「グシャっ」という鈍い音。広がる紅 は真っ赤に染まり彼の周りを埋め尽くしていく。
「もう…やめてくれ…」 暗闇の奥の誰かが必死な声でそう訴えかける。
暗闇の中では顔ははっきりとは見えない。 ただ発している雰囲気が異常だった。微笑の奥に感じられるのは凄まじい殺気…人を憎んで…憎んで憎んで憎んで…最後に残った果ての「感情」とでも言うべきだろうか。
「何…?そんなに怖がらなくてもいいじゃな いか…ハハハハハハっそんなに僕のことが 怖いんだ?」
幼さが残る声で彼は笑いながら誰かにそう話かける。
「やめてくれっ…もうやめてくれ……何故 だ…何故君がこんなこと…君がこんなことをするはずが…」
「…ははっあははははは…ほんとにさ…そん なことも分からないなんて…あんたほんとに馬鹿?…」
「な…」
「最後に大切な獲物を残しておいてよかったよ……もうこの世界の景色を見るのは最後だね…最後に見ておいたら?」
「ひいっ…ち、近づくな…近づくな近づくな!」
「あんたみたいな奴は僕、嫌いなんだ。だからね…さようなら」
ドンっという鈍い音がした。
激しい息づかいが聞こえなくなるのと同様、それは一つの生の終焉を意味する音……
最後に残ったのは止まない笑い声だけ。微笑が笑い声へと変わる…
口元の上の彼の片眼には赤の眼帯が見てとれた。
「あーあ…みんな殺しちゃった…ふふ…」