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車内より

「……さん」

 誰かが呼んでいる。

「……トさん」

 少し低い声の、男の声。

「カイトさん」

「ぅうーん、ああ、おはよう車掌さん」

 カイトと呼ばれた男は、あくびをしながら答えた。

 見かけは二十歳くらいで、黒いコートと中に白いシャツを着ており、ジーパンをはいている。

車掌と呼ばれた、少し背の低い、初老の男が

「そろそろ、次の星に着きますよ」

 と言った。

 カイトは寝そべっていたシートから起き上がり、背伸びをした。

 カイトの頭30cmほど上には天井があり、かなり煤汚れている。蛍光灯が、点いたり消えたりしていた。

「もうですか、早いですね。まぁそろそろ食料もなくなってきたし、丁度いいかな?」

 と、言った瞬間


ぼおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ


 と無駄に大きい音、汽笛が鳴った。

 窓の外は、黒い煙が一面に広がっていた。車内にも黒い煙が入り込み、やたらと臭かった。

「着きましたよ、惑星MP3です」

 車掌は何も無かったかのように言い、

「ぅうーっぷ、この匂いは慣れられないなあ……」

 カイトはこの匂いに苦しんでいた。

「ははは、この匂いにはすぐ慣れますよ」

 車掌は高らかに笑い、

「……何百年もこの匂いを嗅ぎ続けている人が言っても、説得力ないですよ……」

 カイトが不快そうに言った。

 匂いが消えてるとカイトは、大きく深呼吸をし、肺の中の空気を入れ替えた。

「ふぅー、じゃあ、ちょっくら行ってきますね」

「はい、行ってらっしゃいませ。良い観光を」

 列車を下りていくカイトを、車掌は満面の笑みで見送った。


   列車を降りると、カイトの視界に美しい光景が広がった。木々(といっても、あくまでそう見えるだけ)は青々と茂り、花(といっても、あくまであくまでそう見えるだけ)生物達(といっても、あくまであくまであくまでそう見えるだけ)は活き活きと野を飛び跳ねていた。

「へぇー、綺麗な星だなぁ」

「@*&+?`!"#$%&」

 重い意味不明な声が、どこからか聞こえる。

「へぇ……って、うおーい!? なんなんだ、じいさん、いきなり!!?」

 いきなりかなり年の老けたおじいさん(といってもそう見えるだけで彼は宇宙人である)が話し掛けてきたので、カイトは心底驚いた。

(しかも何言ってるか分かんな……そうだ、『翻訳しまっしゅ』のスイッチいれるの忘れてた!)

『翻訳しまっしゅ』とは、全宇宙の言語を翻訳してくれる、ありがたいアイテムである。

 急いでそれのスイッチを入れたカイトは、このいきなり話し掛けてきた『人』を見た。

 見かけは背丈が高く、尖った耳のようなものを持っていて、逞しい体を持っていた。目はかなり吊り上っている。

「あのー、あなた、は?」

 カイトは恐る恐る聞いた。

「わしはゴハンバス。この星の『門番』じゃよ」

 ゴハンバスと名乗った者はカイトをじろじろ眺めてきた。カイトは少々怯えている。

「アンタ、何者じゃい?」

 いきなり聞いてきた。

「えっと、俺はカイト。宇宙を旅してる者です。先程この星に入ってきたんで、一応星に入る許可が欲しいな……と」

 語尾がうんと小さくなってしまった自己紹介を終えた。

  カイトがドキドキしながら返事を待っていると、

「別に構わんよ? 何も無い星じゃが」

 あっという間に許可が下りた。

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