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強引音人 下段

絶妙な、やりとり

 即答だ。力強い返事をもらっても、全く安心できる要素はなく誠は焦っていた。(やっぱり初めて会った人の部屋にいきなりきたりしちゃいけなかったよな。でもこんな展開は予想できなかったし。何にしてもあきらめてもらわないと)

『どう考えてもバレる』

「俺、悪知恵働くから問題なし」

『ここは現実』

「うん、知ってる。二人で夢つかもうぜ!」

『オーディションは本人が行くもの』

「あぁ、だから誠が本人くん」

『歌なんてダメ』

「歌は俺担当だから」

『僕は人見知りする』

「気にしない気にしない。そのくらいの方が顔とギャップがあっていいよね」

必死に説得しようという誠の思いとは裏腹に秋彦のとんでもない決意には火がついてしまったようで聞く耳を持たない。

『詐欺と偽装』 

「バレなきゃいい」

 誠は捕らえられた獲物の気分を味わっていた。今にも泣き出しそうな顔になっている。

『親にバレたら大変なことになる』

「誠がテレビや雑誌に出るようになったら御両親はきっと大喜びだろうねぇ……ということで大丈夫!」

(大丈夫じゃなぁぁぁぁい!)首が落ちそうなくらいに拒否を示しているというのに秋彦は満足そうに、うんうんとうなずくばかり。途方に暮れている誠を放っておいて今度はあちこちの物をひっくり返し始めた。

「カメラ、カーメラー♪」 

(まずい! 撮る気満々だ)危険を察した誠はその場から逃げ出そうとあわてて立ち上がる。だが即座に後ろから腕をつかまれ動きを止められてしまった。引きつった顔の誠がゆっくり振り返ると見るからに何か企んでいる顔の秋彦がにっこり頬笑んでいる。その手には発掘されたてのデジカメがしっかり握られていた。

(あぁ……この顔知ってる、悪代官だ……これ観念した方がいいのかな。でも落ちればすむんだし、でも合格したらすまないし。って、つまりどうすりゃいいんだ!)そろそろ自分の意見は通らないと感付いてはいたが、とりあえず悪あがきに一言伝えてみる。

『これは作業着』

「マジ? 確かに地味な服だとは思ったけど。じゃあ俺の服貸すよ。俺、だぼっとしたのが好きだから体の割に服はかなり大きめなんだよね。心配すんなよ、こんなのばっかじゃなくてちゃんとしたのも持ってるって! 洗濯もしてるからきれいだし」

 話しながら押し入れに頭を突っ込んでいる。どうやら衣装ケースをかき混ぜて、お目当ての服を探しているらしい。

(やっぱりその方向で話は進むんだな。僕は発言権なしか。他人の話なら面白そうだけどまさか自分がやるとはね)観念した誠は、ため息まじりに最低限の一言を書いた。

『汗かいてて人の服着られない』

「そんなこと気にすんなって、何なら風呂入ってから着替えてもいいし」

 そう言うと同時に見つけた服を差し出してきた。当然のように。

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