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幸始終幕

最高の、チームと……

 誠は考え事をしながらガラスの向こうに客が二人増えたのを見ていた。

(四〇〇〇人の前でも緊張しなかったのにな、ってあのときは歌ってないか。バンドねぇ……秋彦はいろんなこと考えるな。なんでもできるし。あ、歌は楽器要らない。なるほど)

 秋彦の合図のあとにイントロが流れてきた。

(あ、僕の好きなやつだ)

 誠は自然と目を閉じる。なぜか眩いライトに包まれてステージに立ったときの事が頭に浮かんできた。

(ほんと夢みたいだったな)

 秋彦がしていたようにヘッドホンに、そっと手をそえ深く息を吸い込む。

(今度は歌っていいんだ……僕の声で!) 

 誠は、その体から伸びやかに音色を解き放った。

 !

 誰もが初めて聞く誠自身の歌声。

 全員ガラスの向こうに釘付けになった。

 鳥肌の立つ腕を抱きしめ驚きに目を輝かせたのはアヤメだけではない。

 秋彦は、喜びのあまり叫び出すのを押さえ両手を握りしめている。 

「お前ってやつは、ほんっと何やらしても……」 

 誠は、喉を潰してからリハビリに通い、時間をかけ、やっと問題なく喉を使えるようになった。今ならいくらでも声を出すことができるのだ。

 それに誠は音楽に詳しくないだけで歌自体は好きだった。

「誠ちゃんは期待を裏切らない子ね、ほんとに」

 アヤメが心の底から幸せそうに微笑む。

「さすがアヤメさんのお気に入りっすね」

 貫凪が楽しくてたまらないという顔でニカッと笑う。

「……」

 音響係はこの上なく間抜けな顔で、ただ呆気にとられている。

 秋彦は……ついに我慢できず身をよじって笑い出した。

「誠ー! お前やっぱ、最高だーー!」



   怒鳴る武史。

  「お前、何だよそれ! 何でそうなるんだよ!」

   キョトンとする誠。

  「何って……何が?」  

   顔を引きつらせた一哉と宏。

  「お前ふざけてんだろ!」

   慌てて間に入る教師。

  「ほらほら、みんな仲良く。誠くんは、お歌好き?」

   にっこり笑う誠。

  「大好き!」

   うれしそうな音楽教師。

  「そう。よかった。誠くんの好きに歌っていいのよ」

   絶句する三人。

  「ひいきだ! えこひいきだ! だって誠の歌……」





そう、誠は


 信じられないくらい





  音痴だったのだ。



     終


最効の、結末

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