企始虐説
付きまとうは、不穏
宏の家に集まった三人はパソコンの画面をのぞきこんでいる。
「ここなら間違いないだろ。ゴシップ大好物って感じだからな」
パソコンに強い宏が早速、話に乗ってきそうな雑誌社を見つけ出した。
武史と一哉が誠のことをネット上に流そうと持ち掛けたが、宏はそれを却下して新たな案を出してきた。週刊誌にネタを持ち込めば金になるというのだ。人のプライベートな部分に土足で踏み込むことが大好きな連中だから必ず食いつく、と。
電話をかけたのは口のうまい武史だ。
「そう、そうなんですよ。小さい時から一緒で仲良いんです。でもちょっと問題のあるやつで、はい、もしかして聞きたいんじゃないかなーと」
話している武史の手がオッケーのジェスチャーを示す。
「え? ほんとですか? いえ! 絶対行きます。はい、それじゃ後日」
すぐに一哉と宏が詰め寄ってきた。
「何、何? なんだって?」
「あー、最初はイタズラかと思われたけど楽勝! “まさか、あのMAKOTOですか?”だってさ」
「へー、あのMAKOTOってったって……あの誠なのにな」
全員が渋い顔でうなずき合う。
「しかも直接向こうに行って話してくれだってよ。まぁそれもイタズラ対策なのかも知んないけどさ。やったぜ! 俺一度行きたかったんだよ。バイトなんかいくらでも休めるしー。一哉も行けんだろ暇なんだから」
楽しそうな二人を前に宏がため息をついた。
「俺はパスだな。すげー面白そうだけどダメだわ。だから二人で楽しんできてくれ。ネット上に楽しい噂が流れるの楽しみにしとくよ。つーかネタ代もらったら、ちゃんと俺にもよこせよ?」
「わかってるよ。お前が考えたアイデアだからな。んじゃ、久々に誠を地獄送りにできることを祝って……」
意地悪く笑った三人はそれぞれが持っていた缶をぶつけ合った。
「みんな新しいお友達と仲良くしてあげてねー」
もじもじしながら教室を見回す小さな子。
「ねぇ、あたしたちといっしょに遊ぼ」
「あやとりしよ」
照れながらも女の子に囲まれている人形のような子。
「なんだやっぱりお前、女だったのか」
「こんな顔した男いないもんな」
「なぁ、おまえ外人なんだろ?」
「なんでそんな名前なんだよ?」
肩にふれられただけで簡単にしりもちをつく。
「ち、ちがうよ、僕日本人だもん」
「うそつけ! 俺たちと顔違うじゃんか」
「ちがわないよ」
「外人は日本語しゃべっちゃいけないんだよ!」
「そうだよ、お前は英語しゃべるんだよ、英語!」
みんなに見下ろされて青白く華奢な子は泣き出した。
「ち、ちがっ、うっ、僕……は」
泣き出したその子をみんな一斉に蹴飛ばし始めた。
「泣き虫オカマー♪」
「外人のオカマー♪」