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出撃間近

皮肉者の、煽り方

 スタジオホールはざわめいていた。

 ステージ前では大勢のカメラマンがそれぞれのカメラをチェックしながら待機している。そのまわりには大手のスカウトそしてプロデューサーたち。スカウトはそのほとんどが女だった。

 ここに集められたメンバーには共通点がある。それは全員がアヤメをよく思っていない、ということだ。

 顔を合わせるなり必然的にゴングが鳴る。

「ねぇ、アヤメさん、私たちが暇じゃないってことは知ってるわよね。これで、もしつまんない用だったりしたら承知しないわよ」

「そうそう、こっちはわざわざ時間つくってきてるんだから」

「そう言えば、この間の不祥事ってあなたが原因だったって本当なの?」

「それ私も聞いたー。事実でしょ? だってあなたのことが怖くて逃げ出した子ってたくさんいるらしいじゃない」

 だが珍しくアヤメは腕を組んだまま不敵な笑みを浮かべるだけで何も言い返さない。そのせいでさらに苛立ちを募らせた女たちはますます騒ぎ立てる。

「ちょっと、何とか言ったらどう? それとも図星だから何も言い返せないってことなの?」

「その眼鏡じゃ世間が見えないだろうから教えてあげるけど、あなたの時代はとっくに終わってんの! いいかげん引退したらどう?」

 言葉を濁しもしないストレートな攻撃に貫凪のほうがビクついている。(あぁ女って怖い。しっかし……アヤメさんって、ほんとみんなに好かれてんだな)



 ホールの騒ぎを知らない二人は複雑な顔で廊下を歩いていた。ギターは秋彦が運んでいる。

「誠、あの人たち、なんて言うか……ひどかったな」

 アヤメが誠のためにスタイリストを連れてきた。だが誠は、どの服も嫌だから自分の服で行くと言って聞かず、メイクをすると言われれば拒否して、近寄るな、という態度に出た。そして結局二人とも帰してしまったのだ。

 だが二人ともその前に、舐め回すような目つきで誠を見ていたし、必要以上に体にさわろうとしたり無駄に服を脱がそうとしたり二人っきりになろうとしたりと、誠に不快な思いをさせていたことは間違いないので自業自得だった。

 秋彦は本番前の最後の注意をする。

「どこまでがお披露目って言うのかわかんないけど、もし歌ってくれって言われたら俺が出す合図がどれのことなのか間違えないようにな。まぁ、誠は俺よりずっと賢そうだから大丈夫だと思うけどさ。万が一間違えた時も、大丈夫だよな?」

 誠は、しっかりうなずいてみせる。

 もうすでに当初の目的からは大幅にずれているのだが、それに気付いているのは残念なことに誠ひとりだけだった。

「よっしゃ、そんじゃいこうか。誠ちゃんのお披露目に!」

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