無心習慣
得意の、シミュレーション
(今日も元気で何よりだ)静音の雄叫びは二階の一番奥の部屋までしっかり聞こえていた。勢いからして今度は静音が勝ったんだろうかとぼんやり思いながら誠はベッドに横になっていた。一睡もしていない上に、おなかはいっぱい。横になってしまえばすぐにでも睡魔に襲われそうなものだが、なぜだか誠の目は冴えていた。
大の字になって天井を見上げ自然と秋彦のことを思い返す。(僕の写真でオーディション、か)早速目を閉じてどんな結果になるのかシミュレーションしてみる。
(……)
(え?)眉間にしわがよる。
(あれ?)目を開けて跳ね起きる。
(ちょっと待てよ?)目が泳いでいる。
(これは、まずいって!)
携帯を開き、そこで初歩的な失敗に気付く。(あー、秋彦のアドレスー)仕方なく携帯を元の場所に戻し、また大の字に倒れ込んで、もう一度目を閉じた。それからしばらく考えていたが、そのまま少し眠ることにした。
確かに秋彦のところに行けば、誠が気付いた致命的ミスを教えることもできただろう。でも誠はそれをしなかった。ちゃんと冷静になった上で、だまって秋彦からの連絡を待つことにしたのだ。二週間か、それよりもっとかかるのか、それまでは誠が今まで送っていた繰り返しの毎日を過ごしながら待とうと決めたのだ。