中2、3月。
ホワイトデーの日に告白しようと思った。
色んな思いはあったが、しっかり自分の気持ちを伝えるには手紙が一番だと思った。問題はどうやって渡すかである。3月になり、自転車で通学する人も増え、バレンタインの時のようにはいかなかった。生徒に見つかるだけならまだしも、学校の先生たちも「チョコなどは持ってこないように」と注意している。なぜ生徒の恋愛の妨げをするんだ、と疑問に持ちながらも堂々と学校内で渡すのは怖かった。
そこで思いついたのが安藤さんの家だった。家が近いという大きなアドバンテージはそうない。安藤さんの家族に会ったことはなかったが、ここで怖気づいてはいけないと思った。
ホワイトデーの夜、部活が終わって自宅に帰り、安藤さんの家を訪ねた。玄関の前でもう一度深呼吸をし、インターホンを押した。中から足音が聞こえた。ガチャっとドアが開くとそこにいたのは安藤さんだった。親が出てくるだろうと思っていたため少し驚いた。
「あ、えっと、これ買ったものだけど、お返しです。」
そう言って、おかしと小物のセットを渡した。
「ありがとう。」
「あと、これ、手紙書いたから読んで。」
「わかった。」
単純なやり取りだったが、自分は満足感でいっぱいだった。暖かい玄関とオレンジ色の照明が外の肌寒さを消してくれた。体操服を着ていた安藤さんがいつも以上に可愛かった。
「じゃあバイバイ」
「バイバイ」
1ヶ月前と同じ言葉だったが、安藤さんの笑顔はこれまでよりずっと、柔らかかった。
『鈴華さんへ
こういうのは直接言った方がいいのかもしれないけど、頭真っ白になってしまいそうだから。バレンタインのときはありがとう。めっちゃおいしかった!もっともっと安藤さんのことが好きになりました。前と矛盾してると思うけど、よかったら僕と付き合ってください。返事待ってます。
海成より』
次の日も通常通り授業があった。周りからは「このクラスももう終わっちゃうねー」と声が聞こえてきた。自分も少し寂しく思いながら部活に向かっているとき、学校の玄関に何か違和感を覚えた。
とある下駄箱の中に手紙が入っていたのだ。この学校にラブレター貰う人なんているんだなぁ、と少し羨ましく思いながら近づいていった。
しかし、その手紙が入っていたのは自分の下駄箱だった。
なぜ最初に自分の下駄箱だと思わなかったのか、なぜ安藤さんからの手紙だとすぐ分からなかったのか。しかし下駄箱に手紙があるという、恋愛小説でありそうなことを経験している自分が自分でないような気がした。
『海成くんへ
きのうは本当にありがとう。うれしかったよ!最近、海成くんが表彰とかされてる姿をみて、やっぱりすごいなーっと思います。他にも勉強や部活、何にでも一生懸命に取り組んでいてかっこいいな!って思うよ。これからもいろいろなことがんばってね。あと、手紙の返事なんだけど、こんなダメダメな者でよかったら、これからもっともっとよろしくお願いします!
鈴華より』
学校から家まで歩いて帰っていた。
隣には鈴華が歩いている。話すことがなくなり、無言で歩いている。その沈黙もまた、心地よかった。
暖かい風が二人の背中を押してくれた。
完




