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運命  作者: 古井たいせい
6/7

中2、2月。

安藤さんに告白するということは決めていた。


が、そんな勇気もなかなか出ず、気づけばもう雪も解けかかっている時期になってしまった。相変わらず学校内でも安藤さんと関わることはなく、姿を見ない日も続いた。


3組の楽しさが、何か告白しないでもいいと主張しているようにも思えた。実質、半年以上喋っておらず、安藤さんの好きな人が変わっていてもおかしくない。それに1つ不安だったことに、安藤さんはかなり男子からの人気も高かった。勉強もできて運動もできるというのは大きな魅力なのだろう。危機感を感じながらも、踏み出せない自分がいた。


そんな時、思いがけないことが起きた。その日はバレンタインデーだった。バレンタインといえば定番の恋愛行事だが、自分にそんな意識はなかった。毎年、母と従妹から貰うだけで、そういえば今日バレンタインか、というくらいの日だった。


午後の休み時間になって次の授業の準備をしている時、突然廊下に呼び出された。あの、安藤さんの家を教えてくれた子だった。なにか緊張している様子でほんのり顔が赤い。それはまさしく、バレンタインの女の子のようだった。そしてその子は口を開いた。


「放課後、部活終わったら男子の自転車小屋に来て。」


「って鈴華が言ってた。」


自分の予想が外れた驚きと、安藤さんが自分を呼んだという動揺で、どう反応していいか分からなくなった。「え、うん」と少し雑な返しでその場を乗り切った。その後の授業は全く集中できず、安藤さんのことばかりが頭を埋め尽くしていた。


授業を終え、部活に行こうとした時、はっと思い出した。今日は部活に行けないということに。眼科に行く予定をしていたのだ。母親もその予定で仕事から帰ってくるため、キャンセルできるような状況ではなかった。


とにかく安藤さんに伝えなくてはいけない。女子バスケ部はもうランニングを始めていたが、なんとか安藤さんを呼び止めることができ、今日の事情を話した。それが実に10ヶ月ぶりの会話だった。


安藤さんはランニングで息が乱れ、話しづらそうだった。周りの女子バスケ部の人たちもこっちを見ていて、いろんなことに申し訳ない気持ちになったが、予定を次の日にしてもらうことにした。


もちろん次の日の授業も頭に入らなかった。


とりあえず昨日はごめん、からだよね。でもその次なんて話そう?あっちから喋ってくれるかな。そんな事を永遠と考え続け、放課後になるのを待った。その日は職員会議があり、部活が一斉に休みだったため帰りの会が終わるとすぐ自転車小屋に向かった。


男子の自転車小屋は女子とは全く違うところにある。自転車通学でない人がこの付近を通ることは滅多になく、さらに雪で自転車に乗ってくる人もいなかった。そのため、今ここに人が来る可能性はかなり低い。いい場所見つけたなーと感心しながら待っていた。


すると二分くらいで安藤さんの姿が見えた。その周りには女子バスケ部の人たちもいた。友達のバレンタインを見届けようとしていたのだろうが、もう少し上手く隠れてもいいんじゃないかと思った。安藤さんはその周りの子たちに背中を押され、小走りでこっちに向かってきた。


その少し照れながら走る姿は、可愛かった。


「昨日はごめん。急に言って。」

練習通りに喋った。

「あ、いや、あたしも急でごめんね。えっと、これ、作ったから食べて。」

渡されたのは可愛く包装されたクッキーとチョコレートだった。

「あ、ありがと。ホントにありがと。」

前日に一度喋ったことが良かったのか、自然に会話ができた。

「あ、あと、」

安藤さんが何か言おうとした。しかし、

「んーとなんだったっけ……えっと……」


安藤さんは考え込んだ。おそらく緊張で頭が真っ白になったのだろう。でもその緊張している様子も、思い出せ!と自分に問いかけている様子も、全部が可愛かった。安藤さんってこんなに可愛かったっけ…と見惚れながら待った。するとふと顔を上げ、

「早めに食べて。」

と言ってきた。思わず少し笑ってしまった。本当は何を言いたかったのかは分からない。でも安藤さんはどこか満足げな顔をしていた。僕は「うん」と答えた。


「じゃあバイバイ」

「バイバイ」


そう言って帰った。その時に告白することも考えていたが、そんなに急ぐ必要はないと思った。改めてしっかり伝えようと思った。しばらく喋っても関わってもいなかったが、安藤さんは自分を好きでいてくれたのだった。

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