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第11話 春華殿の夏の昼下がり

夏の陽射しは高く、白い簾を透かして差し込む光が、広間の畳に淡い模様を描いていた。

池から運んだ蓮の花は水盤に浮かべられ、ほのかな香が漂っている。


その折、女官が小さな包みを携えて現れた。

「徳妃さまからでございます」


明玉が受け取って開くと、中には精緻に蓮の花を刺した手巾と、几帳面な筆で綴られた短い手紙が入っていた。


──「先日は助けてくださり、心より感謝申し上げます。貴妃さまのご厚情を忘れませぬ」


明玉は手巾の柔らかな布地に指を触れ、微笑んだ。

「まあ……清真さまらしい。ご自分のお加減もすぐれぬのに」


春桃が目を輝かせて覗き込み、「綺麗な刺繍ですね!」と声をあげる。

李杏花は「大事におしまいくださいませ」と言いながら、几帳の傍らにそっと並べ置いた。


ひととき談笑したのち、広間は静けさに包まれていった。

長椅子に横になった明玉は、薄絹の袖を胸元にかけ、ゆるやかにまぶたを閉じる。

脇では春桃が大きな団扇を握ったまま舟を漕ぎ、李杏花も真面目に控えようとしたが、やがてこくりと首を傾けた。


周守謙は柱にもたれ、「さあ、我らは貴妃さまの夢の番人でございます」と軽口を叩いたものの、当人が最初に目を閉じてしまい、女官たちは忍び笑いをこぼす。


明玉は蓮の香に包まれながら、ふと呟いた。

「……清真さまも、今は静かに休めているとよいのですが」


その声もすぐに寝息に溶け、春華殿にはただ穏やかな昼の眠りが満ちていた。


――今日も春華殿は、平和である。

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