表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/57

謎がひしめくミステリー通り!君の物語に新たな仕掛けを

霧の向こうへと足を踏み入れた僕の前に、異世界のような光景が広がっていた。


街並みはどこかヨーロッパ風で、レンガ造りの建物が並び、街灯にはくすんだ灯りがともっている。

通りの至るところに「謎」「推理」「真実」などと書かれた看板やポスターが飾られ、空気そのものがひんやりと“意味深”だった。


「ここが、【ミステリー通り】。言葉と論理が交差する、創作者たちの迷路です」


文学NAROちゃんが微笑む。


「きっとあなたの創作に、新たな“仕掛け”が見つかるはず」


そう言って、彼女は振り返る。すると――


「……さて、ここから先は、私よりも適任がいるので」


足音がカツン、と鳴った。


霧の中から、長いコートと帽子をまとった誰かが姿を現した。


片手にはステッキ、もう片方には虫眼鏡。

細い体格、やたらとキメ顔、そして――


「初めまして、創作者、勇者・サトウ。私はこのミステリー通りの案内人……」


帽子を取って、片目を閉じる。


「名探偵、NAROCKナーロック・ホームズだ!」


「……ナーロック?」


「ああ!よろしく頼むぞ、ワトソン……もといサトソン君!」


「……サ、サトソン?」


「ん? なにか問題でも?」


「いえ、なんでもないです、ナーロックさん……」


(なんか濃いキャラきたー!?)


文学NAROちゃんが微笑を浮かべて去っていき、僕は濃いキャラのガイドと共に歩き出すことになった。



--


「さて、ここからが本番だよ、サトソン君。謎とは何か――その核心を見に行こうじゃないか」


そう言ってナーロックが連れてきたのは、古書店風の建物。


扉を開けると、棚にはずらりとミステリーの名作たちが並んでいた。

アガサ・クリスティ、江戸川乱歩、綾辻行人、米澤穂信……本棚のひとつひとつに“トリックの種”が詰まっている。


「“謎解き”とは、問いを立てる芸術だ。

人は“何が起きたか”より、“なぜそうなったのか”に心を奪われる――」


「つまり、“因果のズレ”を見せつけるわけですね」


「その通り! 不自然な点、矛盾、違和感、それらが観客の中に“問い”を植え付ける。

伏線もトリックも、それを導くための“案内板”でしかないんだよ」


ナーロックは棚から1冊の本を取り出す。


【全ての登場人物がウソをついている】 ――信じられるのは、たったひとつ。読者の記憶だけ。


「ほら、こういうコンセプトが観客をぐっと惹きつける。“あれ? 言ってたこと矛盾してない?”って、自分で気づかせるようにね」


僕は本を手に取ってページをめくる。


(……確かに、何気ないやり取りが後から意味を持ってくる。

嘘、記憶、視点……そうか、“演劇”ならではのギミックもあるかもしれない)



---


通りの奥に進むと、今度は舞台のセットのような小さな劇場に案内された。


「ここでは、“観客参加型の演出”が研究されている。

たとえば――“舞台裏の誰かが犯人”という演出。あるいは、途中で照明が落ちた隙に何かがすり替えられる、なんて演出上の“隙間”を使うのもアリだ」


「なるほど……」


「脚本家は“物語を作る者”であり、“嘘を整える者”でもある。

観客に“自分で気づいた”と思わせるように、計算された嘘を設置するんだ」


ナーロックは、自身のステッキで劇場の床をコツンと叩く。


「さて、ここまでの講義を踏まえて、サトソン君。君なりの“問い”を、そろそろ立ててみないか?」


「……“問い”」


「演劇の中で、観客が“おかしい”と気づく瞬間。

それが君の物語の“鍵”になるかもしれない」



---


外へ出ると、霧が少し晴れていた。


ナーロックは帽子を目深にかぶり直す。


「謎とは、仕掛けるものではなく、“自然に疑問が芽生えるように整える”ことだ。

そのためには、“常識”や“当たり前”を、ちょっとずらしてみるといい」


「……少し、見えてきた気がします」


「ならば、上出来。ではまた、謎が深まった時に!」


ナーロックが片手を挙げ、通りの奥へと消えていく。


僕は、手元に残ったノートを開いた。

さっきまで白紙だったページに、今なら何か書けそうな気がする。


(“問い”を立てる。観客に違和感を感じさせる……)


今度こそ、観客が「なるほど!」と唸る仕掛けを作ってみせる。


秋の風が吹き、ミステリーの通りがゆっくりと背後で閉じていくのを、僕は静かに見送った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ