小悪魔コンビとの邂逅
翌日、昼休みの廊下。
僕は、コウダ、セキネ、ノジマの平均点クラブの面々といつものようにじゃれ合いながら、購買部へ向かっていた。
「今日は絶対カレーパンを死守する! 昨日、ノジマに先越されたからな!」
「ふふ、甘いな……今日は俺、すでに前線配置済みの友人にパシリを依頼してあるのだよ」
「それって買ってきてもらうって意味じゃないの!? 自分で行けよ!」
そんな言い合いをしていると、前方から二人の女子が歩いてくるのが見えた。
(あれ……昨日の)
昨日の文化祭企画班の会議で、プレハブの隅で話していたあのふたり。
茶髪で元気そうな猫目の子と、黒髪ロングの無表情っぽい子。
すれ違いざま――
「……あ、センパイ♪ 昨日はお疲れさまでした~」
茶髪の子が、僕に軽く手を振ってきた。
「え、あ……うん。お疲れさま」
「月城ひよりです。役者班に入りました~。よろしくお願いしますね、脚本のセンパイ♡」
「……一ノ瀬 瑠花。演出班。よろしく」
黒髪の子も続けて、視線だけをこちらに向ける。
どちらも名前は初耳だけど、妙に印象に残る二人だった。
(……役者班と演出班、ってことは……)
どうやら、次回の会議あたりから、がっつり関わることになりそうな気がした。
「じゃ、またね~。センパイ、変な台詞書いたら許しませんからねっ♪」
そう言い残して、二人はすれ違っていった。
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「……おい。今、あの子ら、ユウにだけ話しかけてなかったか?」
「えっ、マジで!? どんなフラグ!? え、ユウって後輩キラーだった!?」
「違う違う! ただ文化祭の関係でちょっと……!」
「なにその“文化祭の関係で仲良くなりました”って青春ラブコメ展開!?」
「いや、ほんとになんでもないから!」
僕が慌てて否定しても、三人はニヤニヤが止まらない。
「くそっ、羨ましい……いいなぁ、ああいうあざと可愛い系後輩と演劇やるとかさぁ……!」
「俺も文化祭班に転属したい……」
「お前らまず台詞覚える記憶力を身につけろ……!」
昼休みの廊下に、くだらない叫びが響く。
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購買でパンを確保したあと、教室へ戻る途中。
僕はさっきのふたりの顔を、ふと思い出していた。
(……月城ひよりさんと、一ノ瀬 瑠花さん)
どちらも、ただ可愛いとか目立つってだけじゃない。
どこか、言葉に対する目線が鋭いような、そんな印象があった。
(脚本……どうしようかな)
僕の担当は、物語の土台となる“脚本”。
あの二人と、これからどう関わっていくのかは分からないけど――
少なくとも、油断はできそうにないな。




