表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/57

【番外編 NAROちゃんズの日常 その壱】ジャンル会議とナビの憂鬱

なろうタウン――そこは、創作を愛する者たちが集い、ジャンルという名の世界を旅する者たちを導く“ナビキャラ”たちが住まう、創造の街。


 その中心に位置するジャンル管理棟では、今日もまた三人の少女たちが、ある意味で世界の命運を握っていた。



---


「ふぁぁ〜……今日の報告書、また“追放モノ”が増えてるわね〜」

 金髪巻き髪、ピンクのアイシャドウがキラリと光る恋愛ジャンルNAROちゃん、通称・恋愛NAROは、大きなあくびをしながらデスクに積まれた紙をぱさぱさとめくる。


「ふむ……“俺を追放した王国は滅びる運命にあるらしい〜最強魔導士は田舎でスローライフ〜”。ジャンルタグは……恋愛……って、ちょっと! これ恋愛要素どこよ!?」


「お嫁さんができるんだってさ」


 蝶の羽をきらめかせながら、異世界ファンタジーNAROちゃん、通称・異ファンNAROが自席でくるくる椅子を回している。


「村娘のエリーゼちゃんが“あなたのごはんがいちばん美味しい”って笑うシーン、私は推せたな〜。あれだけで恋愛タグ認定でしょっ☆」


「単に飯がうまいだけじゃないの……?」


 静かな声が部屋の奥から響いた。黒髪セーラー服姿の文学ジャンルNAROちゃん、通称・文学NARO。今日も紅茶を傍らに、タイプライター風の端末で作品チェック中だ。


「これは、そうですね。

 スローライフに恋の香りを添えた、やさしい混合種。

 分類としては“異世界ファンタジー”が主旋律で、“恋愛”は、調和を添える副旋律になるでしょう」


「知ってるよっ! でもさ〜、せっかくなんだし、もっと恋愛エピ強化しよーよ。そういえばサトウも誰かとくっついてくれてもいいんじゃない〜?」


「勇者・サトウのことですか。

 彼の言葉には、まだ、ふわりと揺れる“迷い”の気配がございます。

 焦らずに、物語の風が、進むべき方向を選ぶまで見守ってあげましょう」


「それがいいんだよね〜!」


 恋愛NAROが手を握りしめる。


「最近はこっちにもあんま顔出さないみたいだし、いろいろと順調だといいな!」


「それはさておき、今日の業務会議、始めます!」


 異ファンNAROがピッとホログラム端末を立ち上げる。


「本日担当する“新着小説アドバイス”案件は12件。“ジャンルタグ誤分類チェック”が30件。“ジャンル相談室”には、また来てるよ? “吸血鬼と人外の恋愛って異世界に入るの?”って質問」


「入る時と入らない時があるやつだ……」


 恋愛NAROが頭を抱える。


「っていうか、多すぎじゃない? 読むの!」


「読むという行為は、言葉と心の対話です。

 一つひとつの物語が、生まれるまでの時間を想えば、丁寧に向き合うことが、わたしたちの務め、でしょう」


「読め。導け。ジャンルの名のもとに」


 文学NAROが立ち上がり、手に分厚い本を抱える。


「私たちNAROは、創作者たちの灯火。ジャンルを超えて、彼らの道を示す……」


「おお、今日も詩的〜」


「異ファン、あなたは“冒険モノ”の二次チェックにまわって。恋愛は相談室担当、私は文学ジャンルの新着を監修いたします」


「了解〜! じゃ、いってくるねっ!」

 異ファンNAROはぱたぱたと羽を揺らし、ファンタジー館へ飛んでいった。


「しょーがないな〜……じゃあ、今日も私が“恋の悩み受付嬢”やりますかぁ……♡」

 恋愛NAROはスマホ片手ににっこり笑い、恋愛館の窓口へ向かう。


 文学NAROは残された部屋で一人、静かにパネルを眺めながら呟いた。


「勇者・サトウ。

 彼は、また新たな出逢いの中で……物語の“種”を蒔いているようです。

 やがて、これから始まる“舞台”の上で……その種が、どんな花を咲かせるのか。

 静かに、楽しみに、見守っていましょう」


 その声は、まるで本の余白に書かれた詩のように、静かに部屋に響いた。



---


 こうして今日も、NAROちゃんズは創作の裏で静かに(ときに賑やかに)働いている。


 彼女たちがいなければ、このなろうタウンは――いや、物語そのものが成り立たないのかもしれない。


 読者がページをめくるたびに、どこかで彼女たちが囁いているかもしれない。


「――さて、次の物語はどんなジャンルで、どんな結末を迎えるのかしらね?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ