新学期スタート!食欲の秋 スポーツの秋 そして文化の秋
9月の始業式――
蝉の声は遠のき、風がほんの少しだけ涼しくなった気がする。
「……あ~、現実だ……」
ホームルーム前、教室の席に着いたコウダが机に突っ伏した。
「夢のような夏が終わった……」
「お前の場合、宿題地獄が現実だったろ……」
「俺にとっての夢とは、昼まで寝ることだったんだよォォォ!」
「成仏してくれ……」
そんなコウダの横で、セキネとノジマはスマホを見せ合いながら騒いでいた。
「これ見ろよ! 霜降の水着、マジで目のやり場に困ったよな!」
「いや、俺は雨宮派なんだよ……あの“奥ゆかしさ”が……!」
「お前ら、まず人としての奥ゆかしさを育てろよ……」
いつものように賑やかな平均点クラブ。教室の空気に、夏休みの余韻がふわりと漂っていた。
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そういえば、夏の終盤――海でのバーベキューや、浜辺の夕暮れ。
雨宮さんと霜降さん、そして僕との距離感は少しだけ変わっていた。
明確に何かが始まったわけじゃない。
でも、“まだ見ぬ何か”の輪郭だけが、ぼんやりと心に残っている気がする。
(……たぶん、どこかでまた、ちゃんと向き合う日が来るんだろうな)
そんな気持ちを抱えながら、僕は窓の外に目をやった。
秋空は高く、どこまでも澄んでいた。
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「さて、文化祭と体育祭が近づいてきたので、今年も学年横断の企画班のグループ分けを行います」
担任のその一言で、教室がざわつく。
「1年から3年まで混ざったチームを組んで企画を進めていきます。文化の秋、スポーツの秋、そして――青春の秋を皆さん楽しんでください!」
担任がそう言い終えると、クラスのみんなが騒ぎ始めた。
「よし、今年こそ! ダンスで目立つチャンスだ!」
「いや、演劇でヒロイン役と仲良くなるという神ルートがある!」
「俺は模擬店で接客スキルを磨くぞ!」
「文化祭は“裏方”こそ至高。暗幕張るだけで神になれる!」
それぞれの思惑が交差し、教室は戦場と化した。
コウダ vs セキネの「模擬店バトルロワイヤル」。
ノジマ vs ノジマ自身の「運動音痴コンプレックス克服闘争」。
なぜか“くじ引きに細工した”疑惑まで飛び出し、最終的に担任の独断でグループが分けられた。
コウダ、セキネ、ノジマ → 体育祭実行班
僕 → 文化祭企画班
※ちなみに雨宮さんや霜降さん→ 体育祭実行班
「うわあああ! セキネと体育祭とか、どう考えても事故の未来しか見えない!!」
「誰が事故だ!!」
「去年のお前の踊り方、狂ったダチョウみたいだったぞ!!」
「うわーん! 文化班がよかったぁあぁ!!」
「もう遅い。さようなら、青春の夢……」
(みんな楽しそうでいいなー)
普段からつるんでいた平均点クラブの仲間とは異なり、文化祭班は、あまり話したことがない面子が多かった。
(……はたして、うまくやれるんだろうか)
そんな不安を抱えながら、楽しそうにしている平均点クラブの仲間たちを見ていた。
夏が終わり、秋が始まる。
それは、“次の物語”が動き出す合図だったのかもしれない。
僕はまだ知らない、“謎”と“事件”が近づいていたことを。




