夏の終わりと、宿題の墓標
8月28日・午前10時。コウダの家。
「おい佐藤、今さら聞くけど――お前、宿題、終わってるよな?」
「……死んだふりしていい?」
「やっぱりお前もかぁぁぁ!!」
恒例の「宿題ラストスパート会」は、コウダの家で開催されていた。
集まったのは、僕、コウダ、ノジマ、セキネ。 平均点クラブの面々が、一人また一人と追い詰められている。
ノジマが、机に顔を伏せて呻いた。
「……あのさ、どうして読書感想文って、“2冊”もあるの?」
「1冊目で力尽きたからだろ。俺なんて感想どころか“あらすじ”しか書いてねぇぞ」
「それ、感想じゃなくて要約じゃん!」
「よし、今から“感想:文字が多くて疲れました”で出そう」
「ある意味正直!」
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3ページ目を書いたところで、全員の集中力が死んだ。
「なぁ……アイス食べたくない?」
「わかる……ていうかもう勉強ってなに?」
「この問題集、ページ数しか進まない」
「それは“進んでない”って言うんだよ」
気づけば、勉強机の上にはアイス、ポテチ、謎の折り紙作品。
「お前ら……勉強どこいった」
「うるせぇ、現実逃避だよ」
「じゃあさ、もう『宿題完成ごっこ』しようぜ。回答欄を埋めてる“風”のポーズで!」
「……それもう末期では!?」
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「……よし。午後からマジでやる」
「え? さっきもそれ言って寝たよね?」
「午後って2回あるの?」
「さっきのは“午前の午後”。今度は“本気の午後”。」
意味のわからない論理を展開しながら、僕たちは再びノートを開いた。
その時、ノジマがぽつりと呟いた。
「なぁ……夏休みの自由研究って、提出しなきゃダメ?」
「え? 提出あるの!?」
「待て、俺それ一文字も手をつけてない……!」
「よし! 急げ! 今から“スライムの育成日記”書くぞ!!」
「育ててすらいねぇよ!!」
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結局、夕方までかかって宿題は(たぶん)ギリギリ終わった。
「ふぅ……終わった……終わったよな?」
「“終わったことにした”だけじゃね?」
「……明日の僕がなんとかしてくれる」
「未来に丸投げ!」
窓の外では、ひぐらしの声が鳴いていた。
今年の夏も、終わりが近づいている。
でも――なんだかんだで、ちょっと楽しかった。




