波打ち際で、夏は爆発する
快晴の朝。
僕たち平均点クラブの面々は、コウダくんのおじさんの別荘前に集合していた。
背後には庭先の芝とパラソル、その向こうには――
どこまでも青く広がる海!
「うおおおっっしゃああああ海だぁぁぁぁ!!」
「おいコウダ落ち着けまだ準備終わってない!」
「すまん! でもテンション爆上がりだぁああ!!」
ノジマとセキネも、ビーチボールや浮き輪を抱えて全力で騒ぎ出している。
僕はといえば、波の音を聞きながらタオルを肩にかけ、遠くの海を眺めていた。
(うん……夏、きたな)
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「佐藤くん、日焼け止め、ちゃんと塗った?」
ふいに後ろから声をかけられ、振り向くと――
そこには、ビキニ姿の雨宮さんが立っていた。
白地に淡い青のフリルがついた水着。
派手すぎず、でも彼女らしい可憐さがあって、思わず言葉を失ってしまう。
「……あ、う、うん! 塗った塗った!」
「ふふっ、顔赤くなってるよ?」
「な、なってないよ!?」
そしてもう一人。
「ほらほら佐藤、ボーッとしてないで! こっちこっち!」
霜降明香音さんが、元気よくビーチボールを片手にやってくる。
彼女の水着は、スポーティーな黒のセパレートタイプ。
肩を出したタンクトップ風のデザインで、活発な雰囲気がよく似合っていた。
「おおっ……霜降さん、意外と……」
「ん? なんか言った?」
「い、いやなにも! 似合ってるなーって思っただけで……!」
「へぇ、ありがと♪」
(なんか……情報量多くてキャパが……)
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海に入るやいなや、男子陣は全力でバシャバシャと水をかけ合い、砂浜ではビーチフラッグを始め、
さらにはスイカを持ち出して即席スイカ割り大会まで始まっていた。
「ノジマ、目隠し逆だ! そっち海!!」
「アアアアァァァ!!」
「コウダ、スイカ割りの棒振り回すな! 人いるから!」
一方で女子陣はというと、霜降さんが豪快に水をかけ、雨宮さんがその横で控えめに笑いながら逃げていた。
その様子を、僕は少し離れたところで眺めていた。
(……楽しいな、こういうのも)
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「……ん?」
そのとき、波打ち際を歩いていた僕の視界に、どこか見覚えのある後ろ姿が飛び込んできた。
長い黒髪に、麦わら帽子。 白いロングワンピースの下から、水着の紐がちらりと見える。
「……早乙女、先輩?」
声をかけると、振り返った彼女は、まるでバツが悪そうに眉をひそめた。
「……あら、佐藤くん」
「先輩、まさかここで会うとは」
「……友達に誘われて。ほんの気晴らしよ。あなたたちこそ……騒がしいわね」
「す、すみません……」
「別に怒ってるわけじゃないけど。……ふふ、元気ね、君たち」
どこか照れたように笑う先輩に、僕はちょっと驚いた。
普段の凛とした雰囲気とは違って、どこか柔らかい。
それは、海の光のせいなのか――それとも、彼女自身が少しずつ変わっているのか。
「……見なかったことにしてくれる?」
「はい、もちろん」
(でも、麦わら帽子の下の水着……先輩も、ちゃんと“夏”してるんだな)
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午後には庭先でBBQ大会。 コウダくんが大はしゃぎで焼きまくる肉の煙と香ばしい匂いが、空へと立ち上っていく。
「うまっ! これマジうまい!」
「セキネ、肉一人で食いすぎ!」
「ノジマ、焦げすぎそれ! それ炭だよもう!!」
霜降さんはジュース片手に男子の暴走を監視しつつ、
雨宮さんはひと足早く片づけを手伝いながら、僕の隣に座っていた。
「ねえ、今日……来てよかったね」
「うん。ほんとに」
空は高く、潮風は心地よく吹いていた。




