夏の余韻と、波の予感
夏祭りの翌朝。
僕は自室のベッドの上で、スマホを手にぼんやりと写真を見返していた。
画面の中には、浴衣姿の雨宮さんと並んで笑う自分。
その背景では、夜空に咲いた花火がぼんやりと光っていた。
(……夢じゃなかったんだよな)
> 『また、来年も一緒に行けたらいいね』
祭りの終盤、花火の音にまぎれて聞こえたその言葉を、僕は何度も思い出していた。
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「というわけで、次のイベントは“海&BBQ”っす!」
翌日、僕たち平均点クラブのメンバー――
コウダ、セキネ、ノジマ、そして僕は駅前のファミレスに集まっていた。
「場所はね、俺のおじさんの別荘だ!」
ドヤ顔でそう宣言したのは、コウダくんだった。
「庭がめっちゃ広くて、裏手はすぐ海。まじで、楽園」
「嘘みたいなロケーションだな……」
「ほんとだって。俺も子どもの頃に何度か行ったけど、海入れるし、BBQ用のスペースもあるし最高だよ!」
「というか、そういうのはもっと早く言ってくれよ……!」
「まあまあ、そこは平均点クラブ流のゆるさってことで」
「なにその雑なブランディング!?」
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「それで……なんで霜降さんがここに?」
僕の向かいに座っていたのは、夏祭りでも現れた“監視委員”こと霜降 明香音さん。
「別に変な意味じゃないけど、平均点クラブの“行動”には危険が伴うと思ってね?」
「そんな“監視対象”みたいに言われる筋合いはない!」
「それに、海って楽しいじゃん? 海水浴、浜辺のスイカ割り、焼きそばに花火。でしょ?」
「最後の花火は夜だよね!? それ、BBQ終わってるよね!?」
男子陣がワイワイ騒いでいる中、霜降さんはソフトドリンクをくるくる回しながら、僕のほうをちらりと見た。
「ちなみに佐藤くんも、今回“監視強化対象”だからよろしくね」
「……どうして」
「雨宮さん来るって聞いてたし。……ね?」
(その“ね?”の含み、こわい)
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帰り道、スマホが震えた。
> 【雨宮さん】
「BBQ、行けることになりました! 楽しみにしてるね」
(やった……)
思わずにやけそうになる顔をおさえつつ、返信を打った。
> 【僕】
「こちらこそ。みんな楽しみにしてるよ」
霜降さんの言葉がちょっと引っかかるけど――
楽しみにしてる。僕自身も、きっと。
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帰宅して、スケジュール帳を開いた。
【8/20】海&BBQ
【8/28】宿題ラストスパート会
(……なんだかんだ、予定びっしりだな)
創作の手は少し止まっているけれど、
こういう“日々”も、きっといつか物語になる。
> 夏のページは、まだ折り返し地点。
ページの隅に、そう書き込んだ。




