寝起き即、夏祭りモード!
「……うぅん……まって……もうちょっとだけ……空、飛ばせて……」
誰にともなくうわごとを呟きながら、僕は布団の中で身をよじっていた。
創作合宿から帰宅したのが昨日の夕方。夕飯もそこそこにベッドへダイブし、気づけば朝――というか昼前。
体は心地よい疲労感に包まれていた。 まるで夢と現実の境目が曖昧なまま、物語の世界にまだ浸っているような感覚。
(ああ……もう一日くらい、こうして寝ていたい……)
その時――
> 【ピロリン♪】
スマホが震えた。
【セキネ:おい佐藤、今日の予定忘れてないよな】
【ノジマ:夕方5時に神社前集合!】
【コウダ:浴衣女子が見れるって話だぞ!!起きろ!!】
「……あっ……!」
脳内で眠気と現実が衝突し、やっと思い出した。
今日は――地元の夏祭りだ!!!
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「やばいやばいやばい……!」
急いでシャワーを浴びて、適当なTシャツに着替える。 髪を乾かしながらスマホを見ると、LINEの通知がさらに増えていた。
【ノジマ:雨宮さん来るらしいぞ】
【セキネ:マジで!?】
【コウダ:これは運命……!】
(雨宮さんも……!?)
創作合宿中に誘われた図書館デート。 あれが本当に“デート”だったのか、僕はいまだに判断しかねているけれど……
彼女と、夏祭りで――再会できるかもしれない。
その想像だけで、少し胸が熱くなった。
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夕方五時。夏祭り会場となる神社前は、すでに人で賑わっていた。
「お、佐藤~! ようやく来たな!」
手を振っているのはコウダくん。 セキネとノジマも揃っていて、全員私服(ちょっと背伸びした感じ)が妙にキマっている。
「よう、創作帰りの文豪さん。疲れて死んでるかと思ったぜ」
「いや……まぁ、死にかけてたけど、なんとか蘇ったよ」
僕がそう言うと、ノジマが肩を組んできた。
「創作なんてな、書いても消しても、最終的には夏祭りで癒やされるんだよ!!」
「癒やしのベクトルおかしくない!?」
そんなやりとりをしていると――
「……こんばんは、佐藤くん」
ふと、静かな声が背後から届いた。
振り返ると、そこには浴衣姿の雨宮さんが立っていた。
水色の浴衣に、夜空のような紺色の帯。 髪はいつもよりきちんと結い上げられていて、すごく……綺麗だった。
「わ……」
思わず、言葉を失う僕に、彼女は少しだけ微笑んだ。
「……来てくれて、よかった」
(なんだろう……この夏、何かが始まる気がする)




