いざ創作合宿へ!山道と物語の入り口
夏の朝。
照りつける陽射しの中、僕は駅前のロータリーで汗をぬぐっていた。
手にはリュック、そしてノートPCの入ったサブバッグ。
なんだか修学旅行前のような、不思議な緊張感。
「お、佐藤。早いな」
声をかけてきたのは、クラスメイトの 安宅マコト。
普段はちょっと飄々としてるけど、どこか空気を読むのがうまい、創作肌の持ち主。
「バス、もう来るってさ。乗っちゃおうぜ」
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僕と安宅は、地元市内の創作合宿に参加するため、山間にある研修施設へ向かっていた。
主催は地域の文化交流団体。
“文章書き”や“イラスト描き”たちが集まり、泊まり込みで作品制作に打ち込むイベントだ。
「緊張してんの?」
「……ちょっとだけ。どんな人が来るんだろうって」
「まぁ、変人ばっかりだよ。俺も含めてな」
安宅がにやりと笑う。
「でもさ、“本気で何かを作ってる人たち”と過ごすのって、結構いい刺激になるぜ」
僕は、ちょっとだけ心が軽くなった気がした。
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山道を抜けたバスは、やがて木々に囲まれた研修施設の前で停車した。
バスを降りた瞬間、ひんやりとした風が僕の頬を撫でた。
「……うわ、空気……冷たい」
「標高高いからね。昼は涼しいけど、夜はけっこう冷えるぞ」
周囲は、見渡す限りの森。
虫の声が遠くで響き、どこか懐かしい土の匂いが鼻に届く。
施設の建物は、木造のロッジ風。
エントランスには「創作交流キャンプ in 八ヶ岳」と手書きの横断幕。
(……本当に来たんだな)
どこか非日常的な、けれど居心地のよさを感じる場所だった。
参加者たちは次々と施設内に吸い込まれていく。
大学生っぽい人、眼鏡をかけた文学青年風の人、スケッチブックを抱えた女の子。
「さ、行こうぜ。受付はあっちだ」
安宅の背を追いながら、僕は思った。
ここは、僕の“物語”を見つめ直す場所になるかもしれない。
あのキャラクターたちの声が――もしかしたら、ここでまた聞こえてくるかもしれない。
荷物を抱え直して、僕は一歩、合宿所の中へと足を踏み入れた。




