読解とはなにか。俺たちに必要な“国語”の心!
放課後の視聴覚室。
窓の外には夕焼け、室内には赤点を叩き出した男子たちの暗い顔。
「……ここが……地獄の門か……」
「いや、むしろ浄化される場では?」
誰かがぼそりと返すと、前方のプロジェクター下に仁王立ちする霜降明香音・委員長が、冷たい視線を走らせた。
「はい、静かに。無駄口叩く暇があるなら、傍線部の理由でも答えてみたら?」
「ひいっ!」
地味にダメージが来る。
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国語の授業、委員長ver.
「“読解力がない”ってのは、“読み飛ばしてる”のと一緒。
目に入った文字を“意味”として受け取れてないの。だから――」
「……心を込めて読む?」
「違う。“目的”を持って読むの。問いに対して、どの情報が必要かを整理して読む。
たとえば――“なぜ主人公は立ち止まったのか”って問われたら、“立ち止まった”直後の文を探す。
答えはその前後、3行以内にあるのが基本よ」
「うわ、今さらだけど、めっちゃ役立つなそれ……」
「今さらとか言わないで。私は真剣なんだから」
(この人、委員長の中の委員長だな……!)
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問題文に線を引き、傍線部の理由をたどる作業を繰り返すうちに、僕はふと気づく。
(……これ、読者目線の練習みたいだ)
どのセリフが伏線なのか。
どこに感情の山場があるのか。
読解力って、創作でもめちゃくちゃ必要じゃないか?
(もし自分の小説に、こういう“読ませどころ”がちゃんと作れてなかったら……読者は意味を見つけられず、離れていくかもしれない)
「……なるほど。読解って、物語の“心”を読み取るってことか」
ぼそりと呟くと、前方でノートをめくっていた霜降さんがちらっと僕の方を見た。
――ほんの少しだけ、口元が笑ったような気がした。
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その日の夜。
勉強の休憩がてら、僕は自分の書いた短編の文章を読み返していた。
(このセリフ……読者はどう受け取るだろう)
(この行動の理由、ちゃんと文中に描けてるかな)
ただ書くだけじゃない。“読ませるための仕掛け”を意識しながら見直す――
それは、今までの僕にはなかった感覚だった。
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◆ おまけの教室裏
「なあ……国語って、案外すごくね?」
「俺もうちょっと真面目に受けようかなって……」
「国語で目覚める男子たち、ってタイトルで小説書けそうじゃね?」
「それ読まれたら、俺らバカってバレるだろ!!」
「赤点からの軌跡――第1話“読解力、参上”」
「あーもう! 静かにしろってば!!」
霜降委員長の喝が再び轟く。




