(小説パート)Re:恋コメ短編03・成瀬ユナ編 「いつからか、じゃない。今、好きになったんだ――」
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幼なじみって、特別なんだと思ってた。
でも――特別って、いつからそうなるんだろう?
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成瀬ユナは、僕の隣にいるのが“自然”な存在だった。
小学校の入学式。同じクラス。隣の席。お互いの家を行き来して、ゲームして、アニメの話して。
別に意識したことなんて、なかった。
彼女はただ、僕のそばに“いつもいた”。
だからこそ、たった一つの些細な変化に、僕の心は激しく揺れた。
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今年の夏祭り。僕たちは例年通り、地元の神社に行った。
でも、なぜか今年だけは違って見えた。
「あれ、浴衣……着てるの、初めてだよね」
「うん。ちょっと、似合うかなって思って……変じゃない?」
「……いや、すごく、似合ってる」
横顔が、ドキッとするくらい綺麗だった。
胸の奥が、ぐらっと揺れた。
なんだよそれ。こんな顔、見たことない。
なのに――懐かしい。
“好きになるって、こういうことなのかもしれない”
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それ以来、僕はユナを“女の子”として意識するようになった。
一緒に登校しても、会話がぎこちなくなった。
休み時間、話しかけられても、どこか素っ気ない返事になる。
「……なんか、最近のアンタ、変じゃない?」
ユナは笑ってたけど、目が少しだけ寂しそうだった。
(気づいてる。僕の気持ちに、たぶん気づいてる)
でも、壊したくない。
今の関係を、もう少しだけ続けていたい。
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「……アンタ、前より目を見なくなったよね」
放課後の帰り道、ユナが不意に言った。
「昔みたいに、もっと気楽に喋ってよ。
それとも、なんか……私のこと、嫌いになった?」
僕は、たまらず答えた。
「違う。……むしろ、その逆だよ」
ユナが、驚いたように瞬きをする。
「僕……たぶん、君のことが好きだ。ずっと“いつからか”って思ってたけど――
違う。“今、好きになった”って言える。ちゃんと、そう言えるようになった」
沈黙。蝉の声だけが響く。
ユナは、しばらく黙ったあとで、小さく呟いた。
「……あんた、バカみたいに正直だよね」
その表情は、少し泣きそうで、だけどとても嬉しそうだった。
「でも……それ、ちょっと嬉しかった。うん、ちょっとだけ」
そう言って、ユナは僕の腕を小突いた。
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幼なじみ。
ずっと隣にいた存在。
だけどそれは、いつか終わるための関係じゃない。
変わることを怖がらずに、踏み出したとき。
それはきっと――恋になる。
ーおわりー




