(小説パート) Re:恋コメ 短編02「ツンデレ会長は素直になれない
■本文
「……返すわよ、そのプリント」
そう言って差し出されたのは、次週の試験範囲表。
学校の屋上。昼休みの風の中で、芹沢カレンはまっすぐ立っていた。
「ありがと。会長、助かるよ」
僕が受け取ると、彼女はふいっとそっぽを向いた。
「べ、別にあんたのためってわけじゃないから。委員会経由で回すより、早いだけ」
「うん、知ってるよ。……でも嬉しい」
「っ……!」
カレンの耳が、ほんの少し赤くなる。
彼女は学年一の優等生で、風紀委員長で、生徒会副会長。
いつも完璧にふるまうのに、どこか“抜けてる”ところがあった。
書類のミスを誤魔化そうとして余計目立ったり。
忘れ物をして、そのくせ謝れなかったり。
「自分に甘い人、嫌いなの」
そう言いながら、自分にはいちばん厳しい。
そんなカレンを、僕はずっと見ていた。
「……でも、ほんとにちゃんとやりなさいよ。中間試験、平均点切ったら補習だから」
「それ、心配してくれてるってことでいいの?」
「ち、ちがっ……!」
「……ふふっ」
僕が笑うと、カレンはプイと横を向いた。
けど、その頬はほんのりと朱に染まっていた。
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少し前、夜の図書室でふたりきりになったことがあった。
誰もいない静かな部屋で、カレンは小さく呟いた。
「……わたし、ひとりで頑張るの、もう疲れたかも」
僕はそのとき、なにも言えなかった。
ただ、彼女の背中を見ていた。
だから今は、ちゃんと伝えたい。
「カレン。次の試験、僕もがんばるよ。……だから、さ」
「だから?」
「結果出せたら――今度、昼休み、一緒にごはん食べよう?」
カレンの目が、大きく開かれる。
「……なんで、わたしが」
「いやなら、いいけど」
「……べ、べつに。いいけど? べ、べつに……!」
目を逸らしながら、でも僕の制服の裾を少しだけ握っていた。
風が吹いた。
遠くでチャイムが鳴る中、カレンはぼそりとつぶやいた。
「……ツンデレとか、言ったら、許さないから」
「うん。カレンは、カレンだから」
「……そうよ」
風に髪がなびく。
ほんの一瞬、彼女はこっちを見て、照れたように笑った。
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> “気づかれたくないのに、気づいてほしい”
芹沢カレンの恋は、まだ小さな種のまま。
でもその芽は、確かに、揺れていた。
ーおわりー




