第3話 初仕事
昼食を終え、俺と野獣先輩はオフィスへ戻った。
「小鹿、ここに座れ」
野獣先輩の指示で、自分のデスクの椅子に腰を下ろす。
目の前には高級そうなデスクトップパソコンが鎮座していた。
「すげぇ……」
テンションが上がる。
最新のモデルっぽいし、スペックも申し分なさそうだ。
「電源入れるぞ」
野獣先輩がスイッチを押し、パソコンが起動する。
そして、俺の右手にマウスを持たせ、その上から分厚い手が覆いかぶさった。
「え……?」
戸惑う間もなく、先輩の手が俺の手を導き、画面上のカーソルが動く。
「まずはこのソフトだ。使い方を教える」
先輩の低い声が耳元で響く。
同時に俺の頭は警報を鳴らしていた。
え、え、え、何これ!? 近い、近いぞ!?
なんでこんな密着してるんだ!?
パソコンの使い方なんて、まともに入ってこない。
ただ、熱を帯びた大きな手の感触だけが、俺の意識を支配していく。
そうこうしている間に時間が過ぎ、
気づけば時計の針は終業時間を指している。
最初は戸惑ってばかりだったが、
野獣先輩の妙に手厚い指導のおかげか、
なんとか一日目の業務を終えることができた。
しかしまだ、俺には最後の仕事が残っている。
そう、その日の締めくくりは、新入社員の歓迎会だ。