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第23話『ホロミューズ解散ライブ!?』

『第23話 ホロミューズ解散ライブ!?』


全国大会本選を控えた数週間前。

今日、ホロミューズが立つのは、本選の前哨戦とも言えるプレミアイベント――「NEXT STAGE FES」。


ここで披露するパフォーマンスは、公式な大会評価には関わらない。しかし、その存在感や注目度、会場の規模は、本選とほとんど変わらない。

各地から選ばれた注目グループが並び立ち、未来のセンター候補たちが火花を散らす、実力と魅力の“公開査定”とも言える舞台だった。


部室でその概要を読み上げながら、ユウトは深く息を吐いた。


「ここで爪痕を残せれば、本選での扱いも変わる。つまり、ホロミューズが“ただのAIアイドル”じゃないってことを証明する場所になる」


隣で資料を覗き込んでいたナナが、小さくうなずく。


「予選突破したとはいえ、噂は消えてないもんね。“ひかりがいなくなったホロミューズはもう終わりだ”って」


ユウトは無言でモニターに視線を戻した。映し出されるステージは、まさに夢の入り口のようだった。


---


開演の数時間前。

ホロミューズのメンバーは、部室で最後のミーティングを行っていた。


空気は静かだが、張り詰めたものはなかった。

むしろ、どこか穏やかな緊張感と、静かな闘志が漂っている。


「“ホロミューズ、解散ライブ決行”。また出てる」

ミナトがスマホを見つめながら、苦笑する。


「今さら訂正するのも、変な話になりそうだしね」

ソラも肩をすくめた。

「“解散ライブ”って言葉だけが、どんどん一人歩きしてる感じ」


「まあ、ひかりが卒業した直後だし。全国大会前のこの時期に大きなライブってなったら、勘違いする人もいるよね」

ナナがそう言って、視線をユウトに向ける。


ユウトはしばらく黙ったあと、ぽつりとつぶやいた。


「……本当は、止めることもできたんだ。解散なんて言葉、使ってないって。でも……あえて否定しなかった」


「え?」

ミナトが顔を上げる。


「“ホロミューズは終わる”って噂が広まる中で、それをライブでひっくり返せたら、インパクトがあると思ったんだ」

ユウトは静かに目を伏せた。

「ひかりが抜けたからって、俺たちの物語が終わるわけじゃない。それを証明する機会になると思った」


ナナが、ふっと笑う。

「わざと誤解させたってわけじゃない。でも……この状況を、ちゃんと意味のあるものにしようって思ったんでしょ?」


「そう。だからこそ、このライブは“終わり”じゃなくて“始まり”だ」


ソラが手を伸ばし、メンバーたちの中心に手のひらを出す。

「じゃあ、行こう。ホロミューズの“未来”を見せるために」


ナナ、ミナト、ユウト、そしてアカネが次々に手を重ねていく。


「せーの!」


「ホロミューズ!」


部室の中に、いつもより少しだけ大きな声が響いた。


その声は、静かに、だが確実に、彼女たちの新しいステージへと向かっていた。


---

ライブが順調に進行して終盤に差し掛かった。


「次が……ラストです!」


ミナトの声に、客席からどっと歓声が沸く。

光と音が交差するステージの中心で、3人の少女が立っていた。


ソラ、ミナト、そして――アカネ。


眩いスポットライトに包まれながらも、アカネの足元はしっかりとステージを踏みしめていた。

震えるマイクを握る手。それでも彼女の瞳は、真っ直ぐに前を向いている。


「……ありがとう、みんな」


ソラが静かに語りかけるように言った。


「今日のステージは、ひとつの区切りであり、新しい始まりです。ホロミューズは解散なんかしません。けど……一度、立ち止まって、自分たちの形を見つめ直したくて。そんな気持ちで、このライブを企画しました」


観客のざわめきが少しずつ静まる。


「ネットではいろんな憶測が流れたけど、私たちの答えはこれです。今、こうして――私たちは、ここにいます」


続いて、ミナトが一歩踏み出す。


「ひかりが卒業して、すごくさみしかった。でも、だからこそ出会えた仲間がいる!」


彼女の隣でアカネが一瞬きょとんとしたあと、照れくさそうに笑う。


「アカネちゃん。今日の主役だよ!」


小さな笑いと拍手が起きる中、アカネはそっとマイクを口元に持っていった。


「……まだ、ステージには慣れていません。怖くて、逃げたくなるくらい。でも……ナナさんが手を引いてくれて、ソラさんとミナトさんが支えてくれて、ようやくここまで来られました」


彼女は少し間を置いて、続ける。


「ひかりさんのようにはなれないかもしれない。でも、私なりの“ホロミューズ”を見つけていきたい。……これからも、よろしくお願いします」


ステージの隅、客席の最後列――

ナナは静かにその光景を見つめていた。


アカネの言葉を聞きながら、心の中でうなずく。


(あんた、ちゃんとここに立てたんだね)


ナナの手にはペンライト。そして、胸にはほんの少しの悔しさと、大きな誇らしさ。


(次は、あたしの番)


アカネが戻った位置で3人が並ぶ。

音楽が流れ始め、ホロミューズの代表曲が響く。


そこにもう、迷いはなかった。

3人の声が、ひとつになって、観客の心に届いていく。


鳴り止まない拍手の中、アカネは一瞬だけ客席のナナの方を見た。

照明の中で表情は見えなかったけれど――その視線に、確かな思いが交差する。


ホロミューズは生まれ変わる。

かつてと違う形で、けれど確かに続いていく。


そしてこの日、もう一度その名が刻まれた。


ホロミューズ――新たな一歩。


第23話『ホロミューズ解散ライブ!?』 (完)

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