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第22話 『「AIアイドル」その名を刻んだ先に』

第22話『「AIアイドル」その名を刻んだ先に』



拍手と歓声がまだ耳に残っている。

全国大会のステージを終えたホロミューズは、楽屋に戻るなり、しばらく言葉を失っていた。


ひかりのいない新体制、そして新メンバー・アカネを加えての初めての大舞台。

緊張とプレッシャーの中で、それでも三人はやり切った。


「……やっぱ、本番って、すっごいね」


ミナトが座り込んで、深く息を吐く。

その顔は汗に濡れているけれど、どこか満ち足りた笑顔だった。


「緊張してたの、バレてたかな……?」

アカネが遠慮がちに問いかける。

けれどソラはすぐに、首を横に振った。


「大丈夫。あの会場にいた誰も、あなたを“新人”だなんて思わなかったよ」


「……ほんとに?」

少し頬を赤らめて、アカネが笑う。


そのやり取りを見ていたユウトは、椅子に腰を下ろしながら、静かに一言を告げた。


「最高だった。……本当に、よくやったよ」


誰かが笑い、誰かがホッとしたように肩を落とす。


その空気の中で、ナナだけがふと、真剣な表情になる。

「……でも、これで終わりじゃないよね」


ユウトはその言葉にうなずいた。

「ああ。今日のパフォーマンスが“未来”を切り開くなら、ここからが本当の勝負だ」


大会は終わった。

だが──AIアイドルとして、ホロミューズとしての「戦い」は、まだこれからだった。


---


ライブが終わった翌日、ユウトは部室に顔を出すと、既にソラとミナト、そしてナナが集まっていた。アカネの姿はなかったが、それぞれの表情には、昨日のライブの余韻と、やりきった安堵がにじんでいる。


「昨日の反響、すごかったよ。SNSのトレンドにも“ホロミューズ再始動”って入ってたし」

ミナトがタブレットを見せながら嬉しそうに話す。


「予選突破も確定したし、これで全国大会に出られるね」

ソラが冷静に確認すると、ユウトは小さくうなずいた。


「うん。予選を通過できたのは、みんなの努力の成果だ。昨日のライブ、本当に良かった。特に——アカネのパフォーマンスが大きかったと思う」


ナナが静かに頷いた。


「アカネ、ステージに立ったのは初めてだったのに、堂々としてたよね。なんていうか、ちゃんと“ホロミューズ”になってた」


「……でも、まだまだ伸びしろがある。アカネ自身も、自分に何か足りないって思ってるはずだよ」


ユウトの言葉に、メンバーたちは真剣な顔をする。全国大会に進出するということは、次はこれまで以上に強力なライバルとぶつかるということ。それは、昨日のライブを見に来ていた、あの謎のAIグループも含まれている。


「ユウト」

ソラが口を開く。


「次のステップは?」


「大会まで時間はあまりない。だから……しばらく特訓期間に入る。みんなのレベルアップはもちろんだけど、アカネには“センターとしての意識”を持ってもらう必要がある」


「アカネが……センター?」


ナナが驚いたように聞き返すが、ユウトは真剣な表情を崩さず続けた。


「ひかりが抜けて、チームのバランスが崩れた。その穴を埋めるのは、今のアカネしかいないと思ってる。もちろん、プレッシャーはあるだろう。でも、それを乗り越えてこそ——ホロミューズはもう一段上に行ける」


沈黙が流れたが、やがてナナが静かに口を開いた。


「……あたし、サポートする。アカネの力になれるように、全力でやるよ」


ソラもミナトも、うなずく。


「なら、決まりだね」

ユウトは立ち上がって、窓の外を見つめる。


「ホロミューズは、まだ進化できる。全国のステージで、それを証明しよう」


その目は、すでに次の戦いを見据えていた——。


---


ユウトは部室のモニタールームで、前日の映像を見返していた。

熱狂に包まれたステージ、躍動するホロミューズの姿。

ミナトの笑顔。ソラのまっすぐな歌声。アカネの必死なステップ。


そのすべてが、想像を超えていた。


「……よくやったな、みんな」


モニターの中で、AIたちが汗をかくこともなく、それでも全力で踊っている。

AIだから感情がない――そんな言葉を、すでに否定してくれているような光景だった。


そこへ、スマホの着信音が鳴った。ユウトが画面を見ると「ナナ」の文字。

通話ボタンを押すと、元気な声が耳に飛び込んできた。


「ユウト、やっぱバズってるって! 今、トレンド入りしてるよ!」


「マジか……」

少しだけ笑みが漏れる。


「“あの赤い髪の子、初ステージとは思えない”って。アカネ、結構注目されてる」

ナナの声からも、手応えと興奮が伝わってくる。


「……頑張ってたからな」

ユウトは頷きながら、アカネのパートを巻き戻してもう一度再生した。


緊張しながらも必死についていく彼女の姿に、胸が熱くなる。


「ひかりも、きっと見てるよな」

ぽつりと漏らした言葉に、電話の向こうでナナが静かに答えた。


「うん。あたしもそう思う」


少し沈黙が流れたあと、ナナの声が真剣な色を帯びた。


「ユウト、ここまで来たら……もう言い訳できないね。全国大会、絶対に勝とう」


ユウトは視線を画面に戻しながら、静かにうなずいた。


「ああ。ホロミューズで、必ず勝つ」


今度は、誰の代わりでもなく。

AIだからじゃない、人間とAIが一緒に作った、本物のアイドルとして。


ホロミューズの挑戦は、ここからが本番だ。


第22話『「AIアイドル」その名を刻んだ先に』

(完)

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