授業1
「さて、今日は適性測定を行う。各自準備をして待機するように」
昨日の告知通り、アスリアス先生が測定の準備を始める。
「ふぁ〜おはよう、クロ…」
「クロさんおはようございます。」
眠たそうなテリーと朝から爽やかなアルが声をかけてくれた
「二人ともおはよう!今日の適正測定、緊張するね」
「そうですか?クロは問題なさそうですが。」
そう言いながら、これまた爽やかに笑うアル。
「そういえば二人は目指してる職業とかあるの?」
「僕はサポート系の魔法職として討伐者を。」
「んー俺はタンク系の前衛職だな。体は丈夫だからな!もちろん俺も討伐者志望だ!」
(二人ともしっかりと目標が決まってるのか…すごいなあ)
「そういうクロはそうなんだ?」
感心を遮るようにテリーが尋ねてくる
「僕も魔法系の戦闘職を…まだよくわかんないけど」
「魔法系であれば僕と同じですね。」
今度はアルが食いついてきた
「術式は少しなら使えるから、一応活用できればなって」
「「術式!?」」
今度は二人同時に反応した
「あ、えっと…一応育ててくれた人が教えてくれて…」
二人ともしばらく唖然としていた
「いやあ…何かあるとは思っていましたがまさか術式を使えるなんて…大賢者にでも育てられたのですか?」
笑いながらも呆れた様子のアル
「大賢者?有名な人?」
「大賢者を知らないのか?無知な俺でも知ってるぞ?」
僕の問いに今度はテリーも呆れたように問い返す
「大賢者は20年前の他国との戦争でも活躍した英雄で、国内でも3人しかいないSSSランクの討伐者でもあるんですよ。」
(SSSランクか…昔ベルクさんがそんな話をしていたな)
「とにかく、大賢者は大袈裟にしても僕らの年齢で術式が使えるなんて異常なんですよ。魔法ですらまともに使えない者も少なくないんですから。試験をパスして入学してきたというのも納得しました。」
(そういえば、ベルクさんも入学前に成績優秀者がどうって言ってたのはこういうことだったのか…)
「それでは、これより適正診断を行う!名前を呼ばれた者から順番に前に出るように!」
ついに測定が始まった。
先生からの説明によれば、適正測定は全部で5つの測定項目があり、最初の2つは魔法系への適性を測る工程、次の2つで身体能力の適性を測る。最後の工程は知識や人格を測る工程となるそうだ。
名前を呼ばれて前に出た生徒はまず魔力量を測定する魔道具で測定を行い、次の工程へと進んでいく。
順番待ちをしている生徒たちは、僕と同じように緊張を隠せない者や、アルやテリーのように余裕の表情で談笑している者など様々だった。
「次、アルヘイム!前へ!」
名順番が来たアルは、行ってきますねと相変わらず爽やかに言い残し進んで行った
「次、テリー!」
「おっす!」
テリーは豪快に返事をしながら進んでいく
ひとりになるとさらに緊張が増していく
「楽しみだね!クロ!」
突然後ろから声をかけられ、咄嗟に飛び退く
「あはは びっくりさせてごめん!」
見ると、満面の笑みを浮かべたクレセアが立っていた
「クレセア!おはよう。僕はちょっと緊張してるんだ。」
言いながら、今の驚いた衝撃の成果先程までの緊張がないことに気づいた
「え〜クロは緊張なんてしなくても全然平気そうなのに!」
彼女の言葉で何となく気持ちが和む
「そういえばクレセアは何を目指す予定なの?」
「私はヒーラー志望かな!私の家系は代々ヒーラーとして活躍してきたんだよ!」
(なるほど…遺伝的に得意な職業とかもあるのか…)
「次、クロムウェル!前へ!」
クレセアと談笑していると、いつの間にか僕の番になっていた
「お!クロの番だね!行ってらっしゃい!」
そう言いながらにっこりと微笑んでくれる彼女に手を振りながら先生の元へと向かう
「ありがとう!行ってきます!」
先生に案内された先には、両手に収まる大きさの丸い水晶の中に、菱形の宝石のような物が浮いている不思議な魔道具の前へと案内された
「これは魔力総量を測定する魔道具だ。これに手を添えてみろ。」
言われるまま魔道具に手をあて、しばらく待つ。
少し離れた位置にいる、おそらく記録を取っているのであろう外部の測定員さんが結果を紙に書き残しアスリアス先生へと手渡す
「よし、ではこの紙を持って先へ進め。」
言われた通り受け取った紙を持って先へ進むと演習場のような広い空間へと出る
「はい。次の方ですね。記録用紙をお預かりします」
そこにいた次の受付の方に紙を手渡し説明を受ける
「ここは実演形式で魔法系の適正判定を行います。数メートル先に次々と的が出てきますので、制限時間内にできる限り多くの的に魔法を当てて破壊してください。破壊できなかったり外れてしまった場合は得点にはなりませんのでご注意ください。」
「あの、すみません。的に攻撃するのは魔法ではなく術式でもいいんでしょうか?」
僕の問いに意味がわからないという顔をする測定員さん
「えっと、まあ…その線から出ずに的を破壊していただければ大丈夫です。」
(さっきの二人の話を聞いてなければすごく困惑していただろうな)
などと思いつつ指定の位置に立ち集中する
『××××…』
的の出現に合わせて発動できるように術式の詠唱を始める
遠くの方に的を出現させるための魔法陣が展開され始める
どうやらこの演習場全体が魔道具のような仕組みになっており、自動で様々な魔法を発動できるようになっているようだった
などと考えていると、ついに魔法陣から的が現れる
『××××』
事前に待機させ発動を待っていた術式から次々と矢の形状をした炎が的に向かって飛んでいく
的は魔力で構築された物のようで炎の矢に貫かれた瞬間に跡形もなく消え、間を置かずに別の場所に再度的が現れる。
事前に構築した術式には魔力を補填すれば連続で矢を放てるようにしておいたので、後は的に向かって狙いを定め発射していくだけの簡単な作業だった
的を破壊する毎に数が増えていき、たった今出現した的は出現後に不規則に動き回るようになっていた
(なるほど…少しづつ難易度が上がるのか…)
的の動きを予測しながらそこへ目掛けて次々と矢を放つ
(ピピーーーーー)
最後の的を破壊した途端にホイッスルの音が鳴る
「…終了です…全弾命中…」
驚愕といった表情のままの測定員さんが、譫言のように呟き、結果の紙を渡される
(やっぱり術式を使えるのが珍しいのか)
渡された紙を持ち、未だに呆けている測定員さんを尻目に次へと進む