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dye black  作者: No Name
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修行

───「さて、クロ。そろそろ修行を始めるかの。」

あれから、2日が経った。

その間、ベルクさんはこの世界の事を更に詳しく話してくれた。

僕らの居るこの次元の最下層には基本的に生き物が寄り付かない。

というのも、ここは他の次元と違いマテリアルと折り重なっており資源が少ない。

アストラルからはマテリアルに一切干渉が出来ないため食べ物や飲み物も自己補完するしかないらしい。

自己補完というのは、このアストラルの体はマテリアルとは全くの別物で、マテリアルでは分子が世界を形造りアストラルからの干渉を防ぎ守っている代わりに、ベルクさんのように魔力を行使し術式の発動をすることも出来ず身体能力にも制限がかかっている、非常に不便な状態らしい。

僕がこの体で目覚めた際に感じた体が軽いような感覚や五感が鋭くなったような感覚は正しく、マテリアルでは人間の本来の身体機能の30%程しか出せなくなっているらしい。

どこかで聞いた事のあるような話だが、実際に体感してる以上納得する他なかった。

アストラルでは、大気に満ちた魔力の粒子、【魔素】さえ自在に扱えるようになれば食べ物から得るはずのエネルギーの補給も、生命活動には欠かせない水分の補給も補うことが出来るらしい。

僕はまだ基礎のきの字も知らないので、この2日間はベルクさんが魔素から作り出してくれた水やパンの様なものを食べさせてもらっていた。

魔素は大気中だけでなく、自身の魂魄からも生成されており、ベルクさんはこれを鍛錬で膨大な量を生成し魔力として変換したものを体外へと放出して術式を行使するらしい。

「ベルクさん、この次元には生き物が寄り付かないと言ってましたが、上に行けば人間が居るんですか?」

ふと、気になったので質問をしてみる。

「おお、上に興味があるか?上に行けば人間だけでなく、様々な種族の生き物がおるぞ。こことは違い魔法や魔術も使えるしの。」

「ん?それらは術式とは別物ですか?」

「全くの別物、という事も無いんじゃが、魔法は魔力が扱える者なら詠唱さえ覚えれば比較的簡単に術式が使えるシステムみたいなものじゃ。魔術と呼ばれる構築術式は、魔法として世界に認められてはいないものの、予め式札などに構築された術式に魔力を正しく流せば発動するもので、これも術式の構築が出来ないものでも扱える。」

「なるほど…ここで使えないのはなぜですか?」

「魔術に関しては、まあそもそも人が寄り付かんから用意されていない という感じじゃな。魔法は世界に認められなければそもそも使えるようなもんではないのじゃ。」

世界に認められる…? まだまだわからないことが多いが今は気にしないようにする。

「ベルクさんは魔法とかに頼らなくても術式を自分で組み上げて使える、プログラマーみたいな感じってことですね」

「ん?なんじゃ?プログラ??」

しまった。あまりにも現実味がないので忘れていたが、ここはもう今まで生活していた世界とは別物。科学技術に関する事は通じないのか。

ん?待てよ

「ベルクさん、世界がそこまで複雑になっているのに言語はどうなっているんですか?」

「それも、世界の力じゃな。それぞれ違う言語で話していても世界が補正し理解出来る言語で聞き取れるようになっておる。」

なんだか、本格的にゲームの中みたいな話になってきた。

「マテリアルでは世界の力はないのか?」


「そういうのは一切ないですが、魔法の代わりに自然のエネルギーを利用した機械というものを生み出し、科学という技術が発展しているのですごく便利ですよ」


「ふむ…マテリアルを観測していると何やら金属の乗り物や複雑な建物が多いとは思っておったが、魔素を利用出来ずとも上手く発展しておるのじゃな」


幽霊なんてこれまで信じてもいなかったし、ましてや僕らの方が幽霊より不便な身体だったなんて想像もしていなかった。

魔法や他の種族なんかも幽霊とは全く関係の無いファンタジーのお話だと思っていたが、これまでの常識は捨てた方が良さそうだ。

異世界転生の物語は好きだが、今自信に起きていることは異世界でもなければ転生とも少し違うような…

これは果たしてどういう扱いになるのだろう


僕が現実をどうにか理解しようと思考を巡らせていると、ベルクさんは何やら術式を発動させておりその中から皮の袋のようなものを取り出す。


「クロ、これに着替えるといい。」

そう言うと、皮の袋から衣服を取り出す。

ベルクさんが身につけているのと同じようなデザインの、少しゆったりとした上下黒で統一された長袖長ズボンと上から羽織るローブのようなもの。

靴も入っており、これもベルクさんと同じような皮の靴だ。

「ありがとうございます」

感謝を伝え、渡された衣服に着替える。

(そういえば、服は死んだ時と同じものなんだな…)

どういう原理なのかを考えようとしたが、どうせ分からないため思考を放棄し急いで着替える。

「これ…すごく軽くて着心地がいいです」

そう言うと、ベルクさんは嬉しそうに笑った。

「はっはっ!そうじゃろう!わしの魔力で作った極上の服じゃ!多少の攻撃な弾く上に汚れ等もつかんぞ!」

言い終えると、ベルクさんはまた足元に術式を展開させ中に入るよう合図する。

「さて、準備も出来たところでそろそろ行こうかの。」

僕が円に入ると、術式の光が強くなり次の瞬間には目の前の景色が変わっていた。

「あの…ここは?」

目の前には、木々が一切なく地表が硬い土と大きな岩で覆われた大地が広がっていた。

「術式を教えるのに、あそこではちと狭いからの厳しく教えるから覚悟するんじゃの。」

そう言うと、何やら術式を展開させる。

ベルクさんの手元に小さい円が現れ、それと同じ模様のとてつもなく大きな円が上空にも現れたかと思うと、その円を中心として薄い幕のようなものが半球状に地面に向かって広がる。

「これは…結界みたいなものですか?」


「その通りじゃ。万が一のための保護じゃがな。それはそうと、まずは基礎の魔力の扱い方から始めるぞ。」


「魔力って、ベルクさんが術式を発動する時に手から出ているやつですか?」

僕がそう言うと、ベルクさんは驚いた顔をする。

「なんと。もう魔力を知覚できておるのか。」


「いえ、何となく見える程度ですけど…」

やはりあの液体のような不思議なものが魔力ということなのだろう。

「十分じゃ!それなら話しは早い!早速扱い方から教えるぞ」

「まずは、己の体の中心部を意識してみろ。体の中心に球体があり、その中に炎のようなものがあるのを感じるのじゃ。」

ベルクさんに言われた通り、目を閉じ体の中心に意識を向ける。

すると、半信半疑だったが意識を向けた途端すぐに理解した。

まさに体の中心部に球体があり、その中に炎のようななにかを強く感じ取る。

「いい感じじゃ。炎を感じ取れたら、その炎を球体の中に広げ球体そのものもを温めるようなイメージをしてみろ。」

言われた通りやってみようと意識すると、炎がすごい勢いで強くなり球体に広がる。

その瞬間、球体のある辺りがすごく熱くなり体全体の脈が強くなった。

「ほう。凄まじい才能じゃの。次は、その球体のエネルギーを全身に張り巡らせるイメージじゃ。血管の様に細部まで行き渡らせるように。」

そういえば、幽霊みたいな状態なのに脈はあるんだな。などと考えが浮かんだが、今はベルクさんの教えを全うすることに集中する。

球体から、少しづつエネルギーが身体に巡っていくような感覚。

中心部からゆっくりゆっくり外側に向かってエネルギーの管が広がっていくような感覚。


ー 突然、ゆっくり広がっていたエネルギーが一気に全身を駆け巡る。

全身に激痛が走り、激しく脈打つ。

「う、うわああぁぁぁ」

思わず声にならない声を挙げる。

「落ち着け!!ゆっくりと全身に巡らすエネルギーの量を減らすんじゃ!!」

そう言われても、僕の意思に反して球体から勝手に流れて来るのだ。

ベルクさんが、大声を出しながら僕の身体に両手を当て何かやっている。

意識が朦朧としかけたが、徐々に激痛が収まり始め落ち着きを取り戻す。

「無事か…?どうしてこんなことに…」

今のはベルクさんにとってもイレギュラーだったらしく、動揺しているのがわかる。

「すみません。僕にもよく分からなくて…今は平気です。」

僕の言葉に、安心した様にベルクさんが胸を撫で下ろす。

「よし、それで身体の調子はどうじゃ?」

そう言われ、自身の身体に意識をやる。

「これ…なんだかすごく力が湧いている感じがします。」

先程の球体から、エネルギーが血液のように全身を巡り、溢れ出したエネルギーが湯気の様に全身から立ち上っているのが見える。

「それが、魔力を身体に巡らせている状態じゃ。その状態を維持できるようになるのが最初の修行じゃな。」

…維持するのが修行、ということは長時間経つと疲れたりするのだろうか。

今のところはそんな感じはしないのだが、とにかく今は言われたことをこなすよう努める

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