クラス対抗試合
適正検査から数ヶ月が過ぎた。
結局僕はエドロフ教官からのスカウトを断り学生を続けていた。
最初は飛び級での抜擢という肩書きに惹かれたが、冷静に考えれば、まだ知識の浅い僕がいきなり王国騎士へとなってしまえば それこそ世間知らずのまま生涯を終えてしまう。
それに、ようやく友達も出来て学校生活が楽しくなってきたところなのだ。
早々に鬼教官元で働くには惜しい。
というわけでここ数ヶ月は、学生として勉強に友達にと充実した日々を送っていた。
アルとテリー、それにクレセアも含めた4人で過ごすことが多くなった。
「よし、よく聞けお前らー。」
いつもの調子で担任のラルフ先生が話し始める。
「1ヶ月後に始まるクラス対抗試合について軽く話すぞ。ざーっと伝えるからしっかり聞いてくれよ。」
そう切り出した先生は淡々と説明を続けた。
要約するとー
クラス対抗試合は毎年行われている一大イベントの一つで、具体的な内容は、3つの種目にクラス単位で参加しそれぞれの種目ごとのポイントの合計点数で競い合うというものらしい。
種目も毎回決まっており
・フラッグ争奪戦
・仮想敵を討伐する模擬戦
・各クラスの代表者数名同士で行う実践形式のトーナメント戦
以上の3種目を3日間に分けて執り行うそうだ。
「今日から開催までの1ヶ月間で他のクラスに勝てるよう各自特訓するからな。それから、トーナメント戦に参加する代表者は決めてあるからこれから発表する。」
「一人目、クレセア・オリビエ。」
「はい!」
だろうな。と内心思った。
堂々とした返事を聞くに本人もそのようだ。
「二人目、フィオナ。」
「ええ!?わ、わたしですか!?」
先生に呼ばれた女子生徒は、クレセアと仲のいい女の子で、たまにクレセアが彼女の話をしている。
魔力は強くはないが魔法理論の暗記が得意なおっとりした女の子と聞いている。
「こらこら、決定事項だからクレームは受け付けないぞー。それに、代表選手に選ばれればそれだけで成績に良い評価が付くんだからな。」
フィオナは諦めたように項垂れていた。
「さて、次3人目。ガルド。」
「はい!がんばるっす!」
3人目として呼ばれた男子生徒は、フィオナとは打って変わってやる気十分といった感じだ。
「そして最後、クロムウェル。」
「は、はい!」
クレセアを見習って自信満々に返事をしようと思ったが、どうしても動揺が出てしまった。
先生はメンバー発表が終わるといつも通り授業を開始したのだが、どうにも僕は集中できなかった。
「二人ともさすがだな!」「お二人とも選抜おめでとうございます。」
授業が終わるとともにアルとテリーが声をかけてくれた。
「二人とも他人事だな〜。クレセアはともかく僕はすごく不安だよ…。」
「えー、私だって不安だよ?」
クレセアはそう言いながらも一ミリも不安そうに感じないいつも通りの笑顔だ。
「同じ選抜メンバーとしてよろしくっす!」
そう溌剌と声をかけてくれたのはガルドだ。
「同じ選抜メンバー同士仲良くしたいね!フィオナちゃんも呼んでくる!」
そう言うとクレセアは廊下にいたフィオナを連れて戻ってきた。
「改めて、私はクレセア・オリビエです!」
「フィオナと言います。よろしくお願いします。」
「ガルドってもんっす!よろしくっす!」
「クロムウェルです。よろしくお願いします。」
四人それぞれが自己紹介を終え、テリーとアルを加えて6人で談笑した
「クロ君って、あの鬼教官にスカウトされたっていう期待の新入生っすよね!?」
「やめてよ恥ずかしいから!僕よりクレセアの方がすごいよ!」
「クレセアちゃん新入生代表だもんね。」
「いやー俺からすれば代表に選ばれてる4人ともすごいけどな!」
「そうですよ。みなさんクラスの代表として戦うんですから、自信を持ってください。」
ガルド、僕、フィオナ、テリー、アルの順で話す
ふと、クレセアが何事か考え込んでいるように見えた。
「クレセア、どうかしたの?」
僕の問いかけに対して一瞬遅れて反応する
「あ、ごめんね!なんか、友達が増えて嬉しいなーって考えてた!」
友達か。
クレセアの言葉で改めて意識する。
これまで無気力で生きてきた僕がまさか友達と仲良く話しているとは誰が想像できただろうか。
ベルクさんには改めて感謝しないとな。




