傷だらけの再開
クリートは知らない間に意識が消えていたようだ。
目を覚ますと朝日が昇っている。
少し眩しくて目を閉じるがもう目が完全に覚めてしまったため1度カーテンを閉め近くの本を読もうとしたが来訪者が来た。
「おーい、クリート生きてるよな!」
その声はクリートの父トランスだ。
クリートはしーっ!と注意をしてこちらのベッドにトランスを呼んだ。
トランスは安心の気持ちだったろう。
それが顔でわかってしまっている。
「クリート大丈夫か?」
「大丈夫だよ父さん、とりあえず隣にも人が居るから……」
「私のことですか?」
ノルンが突然会話に入ってきた。
できる限りいざこざを無くしていきたいクリートにとっては最悪なタイミングだ。
「おお、お前ここにいたのか」
「あなたはクリートさんのお義父さまでしたっけ」
「そうそう!いやまさか2人ともこんな近くになるなんてな!」
だがクリートはここからトランスの地獄の尋問タイムが入るかと覚悟していたが2人とも顔見知りだということをこの場で初めて理解した。
その点は少し安心だがトランスが余計なことをノルンに話していないかドキドキしている面もある。
でもあの雰囲気だと何も余計なことは言ってない感じがする。
「クリート、お前最近で何回死にかけてるんだ?」
「数え切れてない……」
「お父さんこう見えて結構心配症だからな、お母さんにも心配かかってるから気をつけろよな」
「おっしゃる通りだな、本当にすみません」
実際何度も死にかけてるため親や知り合いには顔が上がらない。
そこから何事もなく父は帰った。
クリートの父は忙しいから早めに帰らないといけない。
トランスは職業キメラハンター
現異混合事件時に人と人が混合することも同時且つ大量に発生した出来事があった。
現異混合事件後キメラによる事件が多発しそこからキメラ討伐隊、それがさらに大きくなりキメラハンターという職業にまでなったことがある。
トランスはキメラ討伐隊時からキメラハントに尽くしているため今ではそこそこ名の知れたハンターなため世界中を旅しに回っている。
今は徐々に減ってきているキメラもいつ起きるか分からないためトランスは年に2回程度ぐらしいか帰ってこない。
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そのことを知っているためできる限り早めに帰してあげたのだ。
まぁ中には変なことを言われる前に返したかったのもあるが。
クリートはベッドで寝転がりながらノルンにトランスとの出会いを少し聞いてみた。
「ノルンよ」
「どうかしましたかクリートさん?」
「あの父さんといつ出会ったんだ?」
「私たちを助けてもらったのが初めてですね」
「父さん強かったか?」
「とても強かったです」
「そりゃなんか子供の俺も嬉しいよ」
少しお父さんのことを褒められると嬉しい気持ちになるのが子供のようなものだ。
例えた血が繋がってなくてもそれは変わらないと思う。
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時と場面は変わりフェークへと戻る。
フェークはクリートとフレドを救急車で搬送させるとそのまま家の近くの公園へと戻った。
公園に戻るとオブジェから出て近くを見回しているソルーを見つけた。
「ソルー!大丈夫か?」
「良かった!クリートさんとフレドさんは大丈夫ですか?」
「いや、良くは無い」
「行かなくても良かったのです?」
「いや、行ってもやることが無い、ここは邪魔にならないよう影から見守るよ」
これは彼なりの空気を読むといったことだ。
フェークはソルーの服を見ると制服がボロボロなことに気づいた。
「ソルー、これ当分は休校だがこの服の傷で大丈夫か?」
「一応予備は数枚ありますが・・・」
「一応クリーニングに渡すか・・・」
「そうですね、そちらの方が確実ですし」
ソルーはモジモジしながら顔を赤くしこちらを見ている。
「どうした?」
「・・・です・・・」
「すまん聞こえない!」
「怖かったです!だからその、良かったら落ち着けるように・・・抱き着いてくれませんか?」
「ここでか!」
「良ければでいいのです」
「・・・わかったよ」
フェークはソルーを抱き寄せもう離さないという固い意思を持つ感じに抱きついた。
「・・・これでいいか?」
「・・・もう少しお願いします、怖かったんです」
「そりゃそうよな」
「フェーク君は強いね」
「強くなんかないよ・・・ただやりたいからやっただけさ」
「フェーク君らしいと言えばらしいですね」
「頭の中も読めるとはね」
「そんなことないですよ」
少し声が甘い。
完全に落ち着いている時の声だ。
多分この襲撃の混乱と恐怖、焦りが全て解き放たれもう今は大型犬ムーブをかましている。
フェークはそんなソルーとは裏腹にもしクラスにバレたらどうしようかや理性を保つことで必死になっている。
ここまで2人の気持ちが対立しているのは見ていて面白いものがある。
たった2分だがフェークにとっては2時間くらい感じたであろう。
「もういいか?」
「わかりました、すみません」
「いや、いいぞ、怖かっただろうし」
「・・・優しいですねフェーク君は」
「こっちは男だ、理性保つのはまぁまぁしんどいんだがな」
「急に怪しさ満タンになりましたね、まぁ私のせいなのですが」
「なんか悪ぃな」
「本当はこちらが謝るべきなのですがね」
フェークは辺りを見回すが誰も居ない。
少し安堵を覚えながら公園で過ごした。
やっとここで羞恥心を取り戻したらしく顔を赤くし顔を手で隠しながら
「本当に・・・す、すみません」
と急に謝ってきた。
シラフに戻った時に後悔することをしないでおこうと軽く決心した。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




