最終回(前半) 生きる理由になるから
あと1話で最終回!
皆さんありがとうございます
ドゴーン!
ショッピングモールの天井に大きな物が落ちる音がした。
雨の音と混じっていたが確かにその音はするし雨の音をかき消す勢いで鳴った。
オーディンの拘束で一緒に飛ばされ最初にダメージを受けたのはクリートだ。
「がはっ!」
さっきの音から分かるようにかなり攻撃力が高い。
そのためクリートはマスク越しで血を吐いてしまった。
だがオーディンは普通そうだ。
「ここなら誰も邪魔は居ないな!」
オーディンはまた姿を変えた。
姿はクリートのトラウマのあのキメラの姿だ。
その姿でクリートはかなり怖気付くが今は退けない。
クリートはもう諦めれない、そう自分は考えた。
だが一つだけ疑問がある。
(冷静になれクリート、よく良く考えればなんでこんなに姿が変わるんだ?おかしい)
これだけ姿を変えることに疑問しかない。
クリートは一瞬最悪の展開を考えてしまった。
(父さん!)
クリートは立ち上がりオーディンを静かに見つめた。
「ひとつ聞きたい、父さん、トランスはどうした!」
「ふ、バレちゃったか」
「!?」
「言うよ、俺がトランスにしたことをな」
そう言うとオーディンはクリートの周りを歩き出した。
語りかけるような話遣いで話すがクリートからしてみたら心がぶっ壊れるくらいの怒りが現れる。
「俺はトランスから力を取り上げたんだよ……あいつの変身する力をな、まぁ軽い変身能力を与えただけだから1つしか姿を変えれないけどな、取り上げたおかげで俺は元の力を手に入れれたよ」
「なら今トランスは?」
クリートは最悪の展開が目の前で見えるために声が震えてきた。
気のせいか腕が震えてくる。
恐怖が体全体を包むような感覚だ。
「……今どうしてるかは知らない、でも死にかけ……」
「わかった……もうお前は……喋るなぁー!」
最悪な展開は避けれたものオーディンの喋り方全てが癪に触ったのかクリートは思いっきりオーディンを殴った。
クリート自身でも自分の小ささに激しい絶望を抱くが今はそれを認めるしかない。
オーディンの体は不意打ちで殴ったせいか体が力無く倒れた。
だがまたすぐに立ち上がりクリートの方をじっと見つめる。
「なぁお前は何がしたいんだ?」
「……正直俺に夢なんてそんな大層なものは無いよ」
「ならなぜ戦う!?」
正直こういう質問は1番黙ってしまう。
だがクリートだって戦う理由などほとんどないただの獣だ。
「戦う理由が無い、でも小さな夢を叶えたいだけだ」
クリートはさっきまでの激しく怒鳴り散らすような言葉遣いから優しく語りかけるような喋り方に変わった。
クリート自身まだひとつ踏切がついていなかったことがやっと踏み切れたのかはクリート自身分からない。
「みんなと、ただ普通に過ごしたい!俺はノルン達と、平和な生活を望みたい!だから戦える」
そう言うとクリートは銃剣を握り直し走り出す。
オーディンもクリートの覚悟を受け取ったのか走り出す。
クリートの斬撃が先に入りその後にオーディンのパンチが入った。
ジャキ!
ゴン!
「ぐぅ!」
「ごふっ!」
オーディンはまた元の体勢に戻り次は蹴りを加えてきた。
だがその蹴りをクリートは自身を守るように銃剣で防いだ。
ジャキ!
ゴン!
ジャキ!
ゴン!
一進一退の攻防がずっと続いた。
火花が大量に散る。
そのくらい彼らの戦いはとても激しいようだ。
「クリート!お前は戦う気があるのか!」
「あるさ!まだ諦めれないからな!」
クリートはオーディンに向かいジャンプキックを数発くらわせた。
ゴン!
その攻撃でオーディンはかなり怯んだがオーディンはまだやられない。
「ははは、やっと面白くなってきたな」
「ふぅー!はぁー!」
クリートの紫色のラインが銀色に変色した。
フレドとの決戦の時に使ったあの力だ。
今の体にアクトを使うのがいけないのはわかっている。
でも決着をつけるためには仕方ないことだ。
「おぉ、面白そうなものを」
「まだ諦めれないんだ!うぉりやァァ!」
クリートは叫ぶと大量の分身体を出した。
一人一人が独自の攻撃を初めてオーディンに攻撃を加える。
銃剣で斬ったり射撃をしたり物理的に殴ったりの攻撃でオーディンを翻弄させている。
ジャキ!
バン!
ドゴーン!
「ぐわぁ!」
「さぁ!はぁはぁはぁ、これで終わらせてやる!」
そう言うとクリートは大量の分身体の行動を止めた。
止めたと思えばクリートの分身体達はジャンプをした。
「これだけの攻撃なら!お前は!お前は!お前はー!」
ドゴーン
ドゴーン
大量のクリートのジャンプキックがオーディンを襲った。
その攻撃のせいかショッピングモール内に大量の爆音や轟音が反響された。
その時ショッピングモールの頂上に大きな爆発が見えたようだ。
ドゴーン!
その爆発を見たのはノルンだ。
ショッピングモールに近いせいか上手く見えはできなかったが音と少しだけ見えた爆発は決着をつけたのが感じる。
「クリートさん」
不意に出た。
不安からかそれとも無意識のうちにかは知らない。
だがその爆風はノルンにとっては安心感を包むような感覚だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁはぁはぁはぁ、終わった」
アクトの効果が切れたのか体から力が無くなるようだ。
クリートも膝を着いて倒れたがまだ意識はある。
前を見ると白いロングの服が赤くなっている。
オーディンは死んだのか。
「がはっ!はは、神に逆らうとはな、タイムリミットまで後19時間、か」
その声は悲壮感がある。
実質オーディンの完敗のような感じだからだ。
「これで、終わり……だ」
そう言うとクリートはオーディンの元に行き軽く殴った。
しかしオーディンはクリートのメーターベルトに激しめの風を与えた。
その疾風のせいでクリートの変身は解かれた。
その後オーディンはクリートに生身のままクリートの額にパンチを加える。
その攻撃に怯むがまだ倒れはしない。
何をクリートの電動力になっているのかは知らないがまだ諦めていない。
「はぁ!」
クリートはオーディンの頬に激しめに殴る。
オーディンは怯みはしないもののかなり一瞬ぐらついた。
その瞬間クリートは隙と見なしたらしく雨でびしょ濡れになった服で体が重いがパンチを加えた。
それらのパンチのせいでオーディンは何度も血を吹く。
だがそれでもオーディンは倒れない。
クリートも殴りすぎたせいか体が少しづつ動きが鈍くなりその瞬間クリートの腹にオーディンはかなり力を込めて殴る。
「がはっ!」
口から血をこちらも吹き出す。
もちろん紫色だ。
ぼん!
ぼん!
ぼん!
ぼん!
お互い一進一退のステゴロが続く。
だがしかし2人とも服が濡れすぎて重くなり動きにくくなっているのか攻撃頻度が落ちてきている。
しかしお互い血に飢えた肉食獣のように互いを貪りあう。
そのステゴロの戦いが始まり3分ぐらいだった時だった。
クリートはついにこの泥沼の戦いに決着をつける行動に出た。
「はぁはぁはぁはぁ、はぁー!」
クリートはオーディンに向かい走り出す。
オーディンは何かを読んだのかクリートに向かい走り出す。
そして2人がぶつかり合う寸前この読み合いの上を読んだのはクリートだったようだ。
互いがぶつかり合う寸前に足を踏ん張り飛んだ。
変身体では無いし服の邪魔があるのであまり飛べないがキックするには申し分ないくらいは飛べた。
「はぁー!」
そのジャンプの力でクリートはオーディンにジャンプキックを食らわすことに成功できた。
ごん!
ジャンプキックを受けるとオーディンの動きは止まった。
キック後クリートは着地をとる体力も無いためただ物が落ちるように落ちてしまった。
バシャーン!
水溜まりになっていた中に落ちてしまい大量の雨水が服を濡らした。
だがクリートは立ち上がりオーディンの前に立つとオーディンに軽いパンチを当てる。
「俺が運命を掴んだ……」
その時オーディンは体が消えていく。
光の粒が徐々に天にまうような感じだ。
「俺は……人間を許せない……」
「……」
オーディンのセリフはどんどん悲しみを帯びている。
よく見ると目の端に涙を浮かべているのが見えた。
「俺は許せない……どの世界でも人間は……人間は!」
「ならなぜ作った……」
そう言うとオーディンは1度目を閉じ再び開けると口を開く。
「世界の繁栄のためだ……みんなが楽しく……笑顔で」
「……人間は希望がある……まだ諦めれない」
クリートの目は覚悟を本当に決めたような顔だ。
その顔を見てオーディンは何か満足したような反応でまた話し出す。
「ならやってみな……お前もまた絶望するだろう」
「わかったんだ、俺が戦えた理由は人を守るためだ、最初は自分のためだった、でも今は1人の戦士として言える、人を守りたい、そして人の希望に賭けたい」
そう言うとオーディンはまた目をつぶる。
今回は長かった。
沢山考えたのだろう、でも次見た時の顔はさっきのように満足そうな顔だ。
「そうか……全ての……力を……お前に……渡す……あとはお前の……自由だ」
「……ありがとう……お前の望み……俺がきっと果たす」
そう言うとオーディンは体が遂に消えた。
クリートは何か光り物を体に入れられた。
その時いろいろな物が見えるがやはり体が持たない。
一気にたくさんの力を得てしまったクリートはその反動のせいか一気に意識が消える。
(みんな、ごめん、そしてありがとう)
「・・・リートさん!」
「さま!」
「……リート君」
どこかから声が聞こえる。
その声はクリートの心を落ち着かせるものだ。
目が冴えそうな感覚がある。
「あ、あれ、ここは、病院、家……」
目が冴えるとそこは毎日見慣れた天井だ。
時計を見ると明らかにタイムリミットをオーバーしている。
仮にタイムリミットが死んでもなお進んでいたら今、目は覚めていない。
でも起きたらこの天井だ。
体を起こすとみんなが居た。
「ノルン、ヴェル、スクルド、フレド、フレイヤ、フェーク、ソルー、母さん、父さん」
全員参戦だ。
その時何かが崩れ落ちたのか知らないが目から涙が零れ落ちてきた。
「み、みんな……あ、ありがとう」
みんなの暖かさ。
過去からの解放、全てが解き放たれた時。
今まで抱えていた大きな悩みは全て消えあるのはこの軽い体だけだ。
しかし一つだけ異変がある。
(腕が……血も)
もう自身の体の限界が見えてきた。
しかしそれらのことがバレるとまたみんなに悲しませることになるので一瞬だけ見るとまたみんなのいるところに視線を移させる。
(最期は近い……でもこれが運命なら、甘んじて受け入れるよ)
目の前でみんなが色々なことを話している。
それらをクリートは笑顔で答えていった。
この時間が永遠に続けば良い、そう思いながら。
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9月24日。
色々な事件が終焉を迎えた。
テロリストの事件、異現混交事件の犯人は分からずじまいだがクリートは何となくだが犯人がわかっている。
そしてその犯人の力をクリートは受け継いだ。
クリートとノルンが出会いはや数ヶ月またいつもの日常に戻りつつある。
ノルン達は未来に帰ると思っていた。
しかしノルンたちの選択はこの時間軸に居るという選択なようだ。
なんでもスクルドとかノルンが「私たちの家はここしかないから」と言ったのが理由らしい。
しかしクリートは嫌なわけが無い。
むしろ嬉しい限りだ。
こうしてまた何気ない日々が繰り広げられようとしている。
「ねぇ!クリートさんはどこ!?」
「クリート君?あぁ、クリート君ならもう学校へ行ったよ」
「えぇ!一緒に行こうって言ったじゃん!」
ノルンの大きな声がクリートの家を包む。
スクルドはラノベを読みながら冷静に言っていた。
しかしそんなゆったりしているスクルドとは対照的にノルンはとても急いでいる。
「マームさん!パン貰いますね!」
「え、でもそれまだ焼いていないけど」
「大丈夫です!行ってきます!」
ノルンは急いで服を着替え学校の鞄を持ちパンを加え恋愛ゲームのヒロインのような様子で外へ出ていった。
外は晴天の日だ。
ここ一番の快晴の日。
こんな日はあまりない。
雲ひとつないという天気はこういうのだと言いたくなるぐらいの晴天だ。
あと1話で終わりです
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




