タイムリミット(前編)
抗え
自分の限界を超えるまで
抗い続けろ
抗い続ければ未来は変わる
タイムリミットまで残り22時間
残り22時間の時にマームとトランスが車で地下駐車場内に侵入した。
トランスは着いたら直ぐに車から出てクリートに近づいた。
「クリート、お前大丈夫か?」
「ごめん、父さん、俺……」
「あぁわかってる!例えお前がキメラであろうとも俺たち家族の絆は断ち切れない!だから前を向け!お前のその力は人を守るためだろ」
「父さん……」
クリートから見て今のトランスの顔は救世主そのものの顔だ。
トランスの優しが今のクリートの心にとても染みる。
クリートは泣きそうな気分を抑え込みいつもの対応で耐え凌ぐ。
マームもクリートとトランスの傍に来て
「クリート、とりあえず今は応急手当よ」
「あぁわかってるよマーム、やるさ」
クリートのボロボロの体をトランスは無駄のない動きで何とか応急手当をした。
トランスの技術力もあり5分でその手当は終わった。
その後ボロボロになっているノルン、ヴェル、スクルド、ソルーを僅か10分で手当をする器用さ。
本当にクリートはトランスに頭が上がらない。
「とりあえずこんなもんだ、みんな!車に乗るぞ」
「父さん……」
「クリート、わかってるフレドとかだろ、大丈夫だ、ここに来る前に体育館に一度寄ったんだ、その時に手伝いをして何とか2人とも無事さ」
「ありがとう、父さん、でもあいつらどうやって連れて行くんだ?」
「そのことは大丈夫だ」
そう言うとトランスは携帯電話を出しクリートにあるメッセージアプリを見せた。
そこにはさっきまでの会話を全て送っていたのだ。
「父さん……俺本当に頭が上がらないよ」
「これも全て息子のためだからな」
「父さん、ひとつ聞きたい、俺の産まれを教えてくれ」
「……」
トランスは口を止めた。
今まで聞いたことの無いというか聞いてはいけない領域としてクリート自身が気をつけていたことだがこうなった以上聞かないといけない。
「はぁ、後悔しないよな?」
「もう覚悟は出来ている」
トランスは重たい顔で全てを打ち明けた。
本当は言いたくなかったのだろう。
しかしクリートの真面目な顔のせいで折れたのだ。
「俺たちが血の繋がりのない家族なのは知っているよな?」
「うん、知ってる」
「ビビるなよ、俺はこの世界の住民では無い、ある男に住んでいた世界を壊された、お前が言った通りでは無いが俺と同じ姿の人に……」
「……まさか!?」
「そうだ、俺は何とかの思い出あいつにしがみつきこの世界に落ちた。下が川じゃなかったら死んでたよ」
トランスはそう笑う。
しかし目は笑いを帯びていない、寧ろ悲しみの瞳だ。
「そして放浪しているうちにマームと出会い捨てられていたお前を拾いこうなったんだ」
「……ありがとう、父さん、もう知りたいことは終わったよ」
「なら行くか」
その話のおかげでひとつわかったことがある。
トランスには言わなかったがオーディンと初めて会った時何故かトランスの名前を言っていたこと。
そしてさっきのトランスの話。
それらを結びつけるとトランスも実験体のひとつとして何かしら前の世界でやっていたのだろうという結論になった。
これでクリートの持っていた全ての謎が紐解かれる。
あのオーディンは世界によって顔を変えている、しかし根本的な顔の特徴は変えにくい。
そのため血は繋がってないけど顔が似ているといった現象が起きたのだ。
(なんだこういうことか……やっと全て解けた、俺の謎が)
クリートはそう思いながら車の中を過ごした。
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タイムリミットまで残り20時間
イテシーのショッピングモールに着いたが予想外の出来事があった。
それは大量のキメラが居たのだ。
「と、父さん……」
「あぁ、あれは、キメラだ」
絶滅まで追い込んだキメラがショッピングモール内やショッピングモール外を彷徨いている。
しかし予想外の出来事はまだ起きた。
しかも悪い方向にその予想外は生まれた。
「く、クリートさん!キメラ達が私達のことを気づきましたよ!」
「そ、そんな!父さん!俺に考えがある!」
「クリート!少し待ってろ、俺も策が浮かんだんだ、そっちを使う」
そう言うとトランスはハンドルを握り直す。
その行動の意味がわかった。
「父さん、俺と考えてる事は一緒なんだな」
「お前もそういう考えなんだな」
そう言うとトランスはアクセルを全力で踏んだ。
「お前らー!しっかり捕まれよ!」
そう言うと車が限界スピードまで飛ばされた。
家庭用車のスピードは遅いと言えども最大となると明らかなスピードを感じさせられる。
「うわぁぁぁ!速ー!」
「の、ノルン、こ、怖い」
「ヴェルどさくさに紛れて胸揉むなー!」
「こりゃぁとても迫力あるねー」
「スクルドさん!?」
「ソルーさん、た、助け」
「シスちゃん!?」
「と、父さん、は、速すぎ」
車の中は楽しんでいるスクルド、マーム、トランスと死を悟ったその他のメンバーに別れた。
そのくらいスピードが速く感じる。
「オラオラオラ!救世主様達がお通りだー!オラオラオラ」
明らかに免許返納もののセリフを吐きまくりキメラを轢きイテシーのショッピングモールに続く最短ルートを突破した。
最短ルートは法律違反もののショートカットだが今はそんなことを言ってる場合も止める人も止める障害物も無いため走りたい放題だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!死にたいヤツから前に出なー!」
トランスの性格上1度熱くなると中々止められない。
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「このままショッピングモール内にダイレクトで入るぞ!」
「え、ま、待って心の準備を」
「おりゃぁぁ!」
トランスはスピードを減らす訳もなくショッピングモールの入口に突撃をした。
入口付近はガラスなため衝撃は多少緩和できる。
しかし目の前にある者が落ちてきた。
「ぐぉぉ!め、目の前にキメラか!?」
そのせいで車はコントロールをミスり多少壁にぶつけガラス入口に突撃した。
ドゴーン!
「うっぐぅ!耐えろー!みんな!」
車内は悲鳴や興奮の声で包まれた。
とてつもない衝撃が車に加わっため車内はこの世の終わりみたいになったのだ。
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「・・・さん・・・ですか・・・クリー・・・さん・・・大丈・・・です・・・」
「う、うん」
聞き馴染みのある声が聞こえる。
とても必死そうだ。
まだ現実と仮想の区別が上手くつかない。
しかし徐々に目が冴えてくるにつれわかってきた。
「クリートさん!目を!良かった、クリートさん」
「ノルン、大丈夫だけど、あれここって入口?というかみんなは!?」
「マームさんとソルーさんヴェル、スクルドは近くに居ますよ、トランスさんはフレド達のところに行くって言ってました」
クリートは何か思い出した。
家族の一員である。
大事な人。
「あれ、ウルズは」
「・・・え!ウルズさん!?ねぇみんなウルズさんは!?」
状況が混沌を迎えているため誰が生存しているかなどはもう確認していなかったらしい。
そのためウルズの行方が分からない。
(でもウルズは割と1人行動多いしもしかするとひとりで・・・)
しかしそのような甘い考えは目の前で崩れ落ちた。
目の前で崩れ落ちるのは一瞬だ。
「う、ウルズ・・・」
「う、ウルズ、さん……」
そのウルズの姿に2人は声が出ない。
目の前のキメラにウルズは……
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!変身!」
クリートは怒りで変身した。
(この惨劇で黙って見ろは無理だ!)
タイムリミットまで残り19時間
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




