未来の始まり(前編)
4階からの落下な為ダメージはソードフォームとはいえ軽いとは言えなかった。
落下後多少受身を取ってたとは言えども変身が解除されるくらいダメージは受けていた。
だがここでじっとしているわけはできないので満身創痍気味の体にムチを打つ勢いで立ち上がる。
(はぁはぁはぁ……でもどこへ向かったのだ)
もちろんロキの居る場所がわかるわけが無い。
でも何となく飛ばされた位置から粗方の位置を特定することは苦戦するようなことでは無い。
(飛ばされた方向は……運動場側……まさかあいつ!)
今はもしかしたらの次元なので賭けるしかできない。
とにかく走った。
走るしかできない。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ!……やっぱりか……」
やはり予想は的中していた。
ロキが変身体を解除して運動場の真ん中に立っていた。
周りは本当なら体育祭の活気で溢れるはずだったオブジェが無言で圧など出さずに鎮座している。
その様子は少し儚げさを持っている。
雨がポツポツと降ってきた。
その雨は希望なのか絶望なのかはこの時は知る由もない。
「・・・俺は戦う・・・人間を守るため・・・自分を守るため・・・みんなを守るため、俺は人間界の盾になる!」
「随分立派な夢を持って……ならその盾を壊してやるよ!」
その時後ろからバルドルの声が聞こえた。
「クリート!」
「バルドルさん!?」
同時にロキは変身体に姿を変えた。
大きめの片手剣をがっしりと握りクリートの方をじっと見つめている。
バルドルは変身体できている。
ピストルを持ちロキの動きを止めながらクリートに話した。
「今まで酷いことをさせておいてこんなことは言えない……逃げてくれ」
「……無理です……例えあなたがどんな人でも俺は逃げません……未来は自分で掴みたいんです」
「そう言うと思っていたよ」
バルドルは少し呆れた声だ。
しかしそれは「やはりか」といったオーラがある。
「もしこれが未来を奪う者なら負けたくない……変身!」
変身という前に幻聴が聞こえた。
『クリートさんならやれます!未来を掴めます!』
『貴様なら……負けるなよ』
『クリート君ならきっと明日を掴めるよ……僕は信じてる』
『クリート、俺達に希望を見せてくれ……』
『クリートさん、あなたとお兄さん、フェークさんがいればきっと』
『クリート、お前はやれる人間だ……負けるなよ』
『クリートさん、フレドさん、フェーク君、あなた達が未来を創ってくれるのかな』
バックボーンのように聞こえる。
本当は聞こえないのに。
覚悟が着いたのかボタンを押せた。
「ダウンアーマー」といった無機質な機械音声が聞こえる。
その音声の後アーマーがクリートに付き姿を徐々に変わっていった。
姿はスピードモードだ。
雨は強まる一方だ。
だが3人は動かない。
3人は一触即発のような状態だ。
誰かが動けば戦闘が始まる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最初に動いたのはバルドルだ。
ホルスターにかかってあるピストルを抜きバルドルに放った。
ロキは静かにそして華麗に避けた。
ロキは固く握りしめている片手剣をバルドルに振るがクリートが蹴りでロキを飛ばした。
「これで!」
「ぐはっ!」
ロキはぐしゃぐしゃになりかけている地面に激突。
雨のせいでドロドロになりつつある砂の地面に腕をつけまた立ち上がる。
もちろん片手剣も握り直す。
クリートはマキシマムフォーム、ブラスターフォームに変身し直した。
大きなブラスターをロキ目掛け構える。
「ファイア!」
そうクリートは言うとトリガーを引く。
しかしロキはそう簡単に当たらずすぐにクリートの近くの距離に近づいた。
ブラスターフォームの圧倒的に不利な距離感だ。
だがバルドルが飛び蹴りでロキとクリートを離した。
しかしロキは今度こそはタダではやられなかったらしい。
蹴られて飛ぶ寸前にバルドルの体を数回斬ったようだ。
激しい火花がバルドルの体から散る。
その衝撃でバルドルはドロドロになっている校庭の床に転がってしまった。
クリートは大型ブラスターのグリップを取り体に付いている刃をつけた。
「使うぞ!アクト!」
久しぶりの体にアクトはかなり苦しい。
「うぐっ!ぐぅ!がぁ!」
「こいつ馬鹿なのか」
1度死にかけた戦闘以来の言葉だ。
今その言葉はクリートに対して怖気付いているといった判断になるので正直嬉しい。
体から力湧いてくる感覚が久しぶりだ。
「時間は30秒以内だ・・・その間に始末する!」
「やれるものならやりな……こちらも負けられないのでね」
クリートは本気で30秒に終わらせれるようなスピードで戦いたい出した。
高速の二刀流斬撃に中々ロキは対応することが出来ずやられるままだ。
しかし20秒時点で何かを掴んだようだ。
「ここだ!」
その一言で件を振るうとそこに居たのはクリートだ。
「ぐわぁぁ!」
ロキの思わぬ攻撃でクリートは今までのスピードの反動と攻撃の衝撃で飛んでいってしまった。
その全てを見たバルドルは走りながらピストルを放とうとしたがロキが一太刀バルドルに重たい一撃を加えると一発ダウンだ。
(し、しまった……策を……策を練らなくちゃ…)
だがこのような無駄なことを考えている間にロキはこちらに近づいていたようだ。
ロキがクリートを片足で踏み足をぐりぐりと動かしている。
「ぐ!がはっ!はぁはぁはぁ」
「さぁこのまま残り10秒待つかな?さぁバルドル屈辱かぁ?」
足をグリグリ動かす度に体が折れている感覚を感じる。
その行為は屈辱そのものだ。
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10秒が経つと強制的にアクトが消えマキシマム通常フォームに戻った。
バルドルは立ち上がりクリートを助けようとしたがドロドロの地面に足を奪われ上手く立てない。
あと痛みもあるのだろう。
しかし立たないと目の前で本当は関係の無い人を見殺しにする罪がある。
(この一瞬に本気になれ)
自分の心にそう誓った。
腕を気合いで上げて体を上げやすくする。
結局気合いの話になるがバルドルなりの気合いで地面に立つことができた。
ピストルを構えずっとクリートのことを踏んでいるバルドルを撃つことができた。
バルドルは衝撃でクリートからのマウンティング体勢を強制的に退去される。
しかしタダで終わる訳もなくまた立ち上がり次は剣を構え走り出した。
2人は激突寸前まで近づいている。
(バルドルさんは何を考えているんだ)
もうぶつかる、しかし結末が気になるので目が離せない状態だ。
「バルドルさん!早く撃ってください!」
だがそれを言ったところには2人は激突してしまった。
なにかの攻撃の爆風か辺りが灰色の煙で包まれた。
周りが見えないので2人がどういう結末をとったのが分からない。
(バルドルさんは・・・いやあの人なら必ず……)
今は信じるしかできない。
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煙が徐々に消え去るのが見えた。
しかし煙の外は残酷な現実だ。
「バルドルさっーー!」
声がそれ以上出てこない。
目の前には信じたくない現実が広がっていたのだ。
「がはっ!」
何か血を吐いた声が聞こえる。
きっとバルドルだろう。
ロキも完全に健康でこの戦闘は終わらせれていない。
バルドルの射撃を受けていたのでロキの可能性も少なからずあるが今目の前の現実は100%確定させるものだ。
腹にロキの片手剣が刺さっている姿のバルドルが居たのだから。
クリートにとっては実質初めての身内の死。
「バルドルさん!バルドルさんー!」
叫んだが応答が来ない。
だがロキも至って普通では無い。
「ぐっ!あいつ最期に撃ちまくりやがって」
バルドルは胸を抑え徐々に体を小さくしていっている。
(バルドルさんがこんなことで死ぬわけ……バルドルさんは絶対生きている!)
しかし声が出ていない。
嫌でも信じるしか無さそうだ。
だが目の前での死を超えたのかクリートは声が普通だ。
「終わりにしよう……全て」
「終わりになるのはお前自身だよ!」
ロキがそう言うとバルドルに刺さっていた剣を横に斬るように抜いた。
2人は激突する勢いで付き合う形に走り出した。
そのせいかバルドルの体からさらに多量の血が流れている。
「うわぁぁぁ!」
もう何も怖くない……たったそういった行動に変わったのだ。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




