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幼馴染と視線

俺の後ろを覗き見た真輝は、察してしまったららしい。口元に手を当てて、でもこちらを見ると元のニコニコ顔に戻る。


「なんで嬉しそうなんだよ」

「いや、ゆーくん変わってないなって思って。視線から守ってくれたんでしょ?」

「……まぁ」


真輝は昔から視線をよく集める子供だった。それは美貌もあったろうが、それよりも髪や瞳の色のせいだ。明らかに日本人離れしたその容貌はよく人目を集めた。その中には明らかに珍獣か何かを見るような視線を向けてくる奴もいた。そういった視線を間に入る事で遮るのをやっていたわけだが、真輝はそれを思い出したらしい。


「その点、お前は変わったよな?」

「え? どのあたりが」

「周囲の視線をあまり気にしなくなった」


俺が遮らなくても、以前の真輝は視線が集まってくると俺の背後に隠れる事が多かった。


だけど電車に乗って以降、さっきの男ほど露骨ではないにしろ真輝に対して視線が集まっていたのに、それをあまり気にする素振りは見せなかった。


それを指摘する俺の言葉に、真輝はあははとちょっとだけ乾いた笑いを浮かべる。


「いやー。向こうの世界では割といつも注目を集めてたから、それで慣れちゃったというか」


あー、成程。

ここ一週間で聞いた話だと、真輝は向こうの世界では完全に英雄だったようで、それならばそりゃ視線を集めるだろう。視線に慣れるのも納得と言えた。


──ちょっと寂しさを感じるのは狭量だろうか。本来なら喜ぶべきところだしな。


でも俺の中の真輝のイメージは、つい数日前までは5年前のまま凍結されていたわけで。


それが一気に解凍され、新しい真輝を見せつけられている。実際には5年の長い月日を経て変わった真輝の変化は、俺には急に変わったとどうしたって感じてしまう。そこに寂しさを感じるのはどうしようもないことだとは思う。


「ゆーくん?」


そんな思いが、顔に出てしまっていたのだろうか。真輝が心配そうに俺の事を覗き込んできていた。


「いや、何でもないよ」


浮かんでいた思考をごまかすようにそう答えて真輝の頭をポンと叩くと、心配そうな顔から一転、真輝の顔がふにゃりと歪んだ。


「こういう所は昔のまんまだなぁ」

「えへへ」


昔のままの真輝と昔とはまるで違う真輝がかわるがわる見えて、ほんと脳みそが混乱しそうだ。


俺が無駄にいろいろ考えすぎなのかね。


「あ、そろそろ到着?」


電車内にアナウンスが流れる。そろそろ目的の駅に到着するようだ。


「こっちの駅は割と人多いからな、はぐれないように注意しろよ」


目的の駅はターミナル駅なので、地元駅に比べると圧倒的に人が多いし構内の造りも複雑だ。初めての真輝は人の流れもわからないだろうし、油断したら姿を見失うという事もありうる。そう思って声をかけると、真輝くは元気よく「うん」と頷いて、


「えいっ」


俺の左腕に抱き着いて来た。


「!?」


なんかやわらかいものがものが、というかおぱ──乳が!


ぎゅっと両腕で抱き着いてきたため、押し付けられた胸が大きく形を変えていた。わぁ、そんなにおっぱいって形変わるんだぁ。


ではなく!


「真輝、ステイっ!」

「わんっ!」


混乱した俺がまるで犬に命令するような事を口にすると、真輝が満面の笑みを見せてそう鳴いた。


あああああ周囲の視線が痛いものになってる! 俺がステイなんていったから真輝も乗って犬の鳴き声返したんだろうけども、周囲から妬みと一部蔑みの視線をビシビシ感じますよ!


──というか真輝、お前本当に視線に対して強くなったな!?


「と、とりあえず一回離れて……」

「え、なんで?」

「さ、さすがに歩きづらいので」


結局手を繋ぐことで妥協してもらった。笑いたければ笑うといい。相手が元男だろうが幼馴染だろうが、童貞には刺激が強すぎるんだよ!




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