幼馴染と異界の扉
大体10分くらいして、真輝は戻って来た。
表からは騒がしかった声は全く聞こえなくなっている。というか出て行った真輝をしばらく呆けて見送った後、下に降りて外を確認したらすでに誰もいなかったんだよな、真輝も含めて。それで玄関先で首を傾げていたら、普通に真輝は走って帰って来たんだけども。
白い肌を少し朱く上気させた真輝は、走って来た勢いのまま俺に抱き着いてきた。
「ただいま、ゆーくん!」
あちょっとまって胸が胸が胸が! むにゅって! 潰れてる! うわこんな変形すんの!?
昨日も抱き着かれているんだけど、昨日はコイツとの5年ぶりの再会や女になってる事で混乱してそれどころじゃなかったけど、冷静な状態で受けるとヤバイってこの感触! なんなのこれ……もう、なんなの!?
「ゆーくん?」
硬直してしまった俺を、不思議そうに真輝が見上げてくる。
その蒼い瞳を見て、過去の真輝の姿が今の彼女に重なる。そのおかげで、俺はなんとか硬直から回復することが出来た。
「おかえり、真輝。どこいってたんだ? 外みたら誰もいなかったけど」
心の中で深呼吸しつつそう問いかけながら、真輝の肩を掴んでそっと体を離す。すると真輝は一瞬だけ寂しそうな顔をしてからすぐに元気な笑顔に変わって、答えた。
「邪魔な人たち捨てに行ってきたんだよ。これでしばらくは静かになると思うよ」
「捨ててって……何も物音しなかったけどどうやったんだ?」
争う音どころか、真輝が降りて行った後は言い争う声すら聞こえなかったんだけど。
「あああれは内部の事が認識できなくなる結界を貼ったんだよ」
「結界」
「ん、向こうの世界で覚えた魔法。その中で何が起こってても認識できないし、外に音も聞こえないの。ものすごい大きな声だと聞こえちゃうけど」
……なんか恐ろしい事を聞いた気がする。そんなの悪い事やりたい放題じゃん……
でも、うん、きっと真輝なら悪用しないはず。しないはずだ、信じよう。うん、信じるしか俺にはできない。悪用しそうになったら俺が止めればいい。向こうの世界と倫理観ちょっと違う可能性があるしな……
っていうかこっちでも使えるんか魔法。
「それで拘束魔法で捕獲して引きずって捨ててきた」
「どこに」
「向こうの世界にだよー」
「真輝が戻ってくるのに使った魔法陣、開きっぱなしなんだっけ? どこにあるんだ」
「正面の道真っすぐいって右に曲がった所にある森の中」
近っ! ウチから300mくらいしか離れてねーじゃねーか!
え、何、今俺んちのすぐ近くに異世界への扉開いてんの? ええ……
「それ大丈夫なんか? あの森、山菜取りに古村のばあちゃんが入って行ったりするけど異世界転移したりしない?」
山菜取りに近所の森に入ったら異世界転移した件とか意味がわからんだろう。いや、異世界転移自体が意味がわからん事象ではあるけども。
「それは大丈夫。エーテルが無いと魔法陣は発動しないから」
「エーテル?」
「魔力みたいな奴かな。こっちの世界の人は殆どもってないらしいから、近くによっても転送される事は多分ないと思うよ。古村のおばあさんがエーテル持ってると自動転送されるけど」
……古村のばあちゃんが失踪したという話が聞こえてこないことを祈る。まぁ開きっぱなしなら、誤って向こうとやらにいっちゃっても戻ってこれるだろう。
「ねぇねぇ、ゆーくん。そんな事より部屋戻ろ? 僕もっとゆーくんと一杯お話したい」
「あ、ああ……って腕抱きかかえるな、行くから、ちゃんと一緒に戻るから!」
だから柔らかいものを押し付けてくるんじゃない! 真っすぐ立ってられなくなるだろ!




