幼馴染と帰り道
やや沈みかけた陽が照らす見慣れた街並みの中を、真輝と並んで歩いていく。
俺のに比べたら手で俺の手をしっかりと握る真輝はご機嫌だ。時たま何かしら聞きなれない歌を口ずさんでいるが、異世界の歌だろうか?
デパートで一通りの買い物を終えた後も、真輝はせっかくだからと何か所も俺を別の場所に連れまわした。こっちに戻ってきて間もないのになんでそんなに詳しいんだと聞いたら、5年ぶりに俺と一緒に出掛けられるのが嬉しくて事前にいろいろ調べたらしい。
ニコニコと満面の笑みを浮かべてそういわれてしまうと俺ももう帰ろうなんてことはいえず、結局こんな時間まで付き合ってしまった。
……まぁ、真輝が楽しそうだったから、いいか。
そういや昔はこれくらいの時間に、いつも二人で遊びから帰ってたなぁとか思う。当時は小学生だったからな、当然暗くなる前に帰ってた。さすがに小学生に上がってからはそうそう手を繋いで帰ったりはしなかったけれど。
「ねぇねぇ、ゆーくん」
そんな事を思い出していたら、真輝が鼻歌をやめてこちらを見上げて来た。
「なんだ?」
「今日ね、僕ね、デートとっても楽しかったんだ」
その言葉を聞かないでもわかるくらいの笑顔で、真輝がそう口にする。
そこまで楽しんでくれたのなら、俺も満足だ。それに俺も、以前の真輝に対する懐かしさと今の変わった真輝の新鮮さもあり楽し……
「ん、デート?」
「あ! えっとね。それはなんでもなくてね! ……とにかく、また一緒に出掛けたいねってこと!」
「お、おう、そうだな」
今日みたいに付き合うのはやぶさかじゃないし、遊びに行くのもいっこうにかまわないので俺は頷く。もう少し離れて歩いて欲しいというのはあるが。
というか今日の電車やデパートの出来事を考えると、一人で出かけさせるのはやはり不安が残るしな。真輝のように外見上目立つのが一人で歩いていたら、それこそ声を掛けられまくるだろう。デパートでの対応を見る限り危険な目に合う可能性は高くはなさそうだが、今の真輝は世間知らずだ。妙な事に巻き込まれる可能性はある。
そういう意味では、少なくとも俺の存在は虫よけにはなるだろう。俺としても5年ぶりに再会した幼馴染に付き合う以上に、優先すべき用件は今の所ないしな。恋人がいるわけでもなし。
恋人……デートかぁ……本気なのかなぁ、いや、本気だよなぁ。そういう冗談いう奴じゃないし、これまでの反応を見ていれば嘘じゃないのはわかる。もし嘘の可能性があるとすれば、真輝が向こうの世界でめっちゃ男を誑かす悪女になっていた場合くらいだが、そんなことがあったら俺は人間不信に陥りそうだ。
俺は横を歩く真輝の姿を改めてみる。
……うん、純粋に女の子としてめっちゃ可愛いのは間違いない。ただ真輝だ。真輝なんだ。
「うん? なぁに、ゆーくん」
「ああ、いやなんでもない」
「?」
不思議そうな顔をしながら、小首を傾げる真輝。くそっ、そういう仕草も可愛い……。顔は、顔は間違いなく昔の真輝の面影はちゃんと残っているのに、雰囲気というか細々とした仕草が女の子になってるせいでもう女の子にしか見えない。いや女の子なんだけども。
握った手のひらも柔らかいしさぁ……
電車を降りてから手はつなぎっぱなしで離す気もないらしい。家までこのままなんだろうなぁ……そんなことを考えながら彼女を見ていたら、これまで先導するようにほんの少しだけ前を歩いていた真輝が急に足を止めた。
それと同時、ほぼ終始にこにこしていた真輝の表情がスンッという感じで唐突に真顔になる。
どうしたんだ?
真輝はじっと前を見つめている。ちょっと半眼になっている、その視線の先を追ってみると……
そこには一人に男が立っていた。




