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幼馴染とデパートにて②

「真輝っ!」


駆け寄りながら名を呼ぶと、冷たい表情で男二人の腕を捻っている真輝の顔がこちらを向いた。


それと同時。


凍り付いたかのように冷たかった真輝の表情が俺の姿を認めた瞬間瞬く間に氷解し、ぱぁっと春が来たように明るくなる。そしてまるでもはやどうでもいいとばかりに捻り上げていた二人のナンパ野郎の手首をぽいと投げ捨てると、こっちに駆け寄って来た。


俺はそんな真輝をそのまま自分の背後に回らせると、自分の手首を抑えている男二人を睨みつけた。


「ひぃっ」


それだけで男二人は慌てて立ち去って行った。ふん根性無しめ。


しかし、でかい図体と鍛えた体はこういう時に役立つな。こんな場所であまり目立つ事はしたくないし、連中はへたれ野郎でよかったと俺はため息を吐く。


「えへへ、ゆーくん、ゆーくん!」

「あ、こら、抱き着いてくんな!」


ほんの十数秒前までとは打って変わってご機嫌な真輝が飛びついて来ようとしてきたので、俺は慌ててそれを肩を抑えることで押しとどめる。


こんな所で抱き着かれたら目立つことこのうえないし、あと多分下半身がのっぴきならない事になって歩きづらくなる。ていうか止めるために触れた肩も柔らかいんだよな畜生! なんでこんなどこもかしこもふにふにしてるのに、男二人を捻る力が出せるのか謎すぎる。


肩を抑えられて勢いを止められた真輝は素直に動きを止めてはくれたが、その代わりに思いっきり不満そうに頬を膨らませた。


「もう、ゆーくん! なんで止めるの!」

「周囲の目を気にしてくれ!」

「……あ、うん。そうだね!」


俺の言葉に、真輝はその白い肌を少し朱色に染めて、素直に従ってくれた。ふぅ、そういった羞恥心はもってくれているようで助かったぜ。なぜか嬉しそうににっこにこ笑い出しのは、意味不明すぎるが。


「あー、でも、ゆーくん! 怖かったから、しばらくゆーくんに引っ付いていてもいいよね? えいっ」


そして、今度は止める間もなく俺の横に回ると、掛け声とともに俺の右腕に飛びついてきた。いや正面からじゃなければいいってわけじゃなくてな!?


慌てて腕を引っこ抜こうとするも、それより早く腕が絡められる。──くそっ、ピクリとも動かねぇ!


「ね? ゆーくん。さっきみたいな人達にまた絡まれると怖いし、デパートの中だけはこうしてて欲しいな?」


絶対嘘だ、お前さっき俺が来なければ自力で蹴散らしてじゃんアレ! いや、そもそも声が掛けられることが嫌なのかもしれないけどさ。


真輝は懐いてくる子犬のような瞳でこっちをじっと見つめてくる。


くっそ、こういう所は守ってやっていた頃のままなんだよな、こいつ! 


この瞳をされると……拒否しきれない。


「分かったよ……ただあまりくっつき過ぎると歩きにくいからもうちょい離れてくれ」

「はーい」


諦めて俺がそう告げると、真輝は素直に密着度を下げてくれた。腕は絡められたまだだけど押し付けられているわけではいから、これで大丈夫なはず。……歩くたびに柔らかいものが当たってきそうではあるが、さすがにその程度なら……耐えきれるだろう。


というか耐えきれるってなんだよ。修行か?


「ねっ、それじゃあっち行こあっち!」


腕を絡めたまま、真輝が俺を引っ張り出す。えっと確か……ああ、あっちにはいろいろな小物類が売っている店があったな、目的通りの店だ。なので、俺は真輝に引っ張られるまま歩き始める。この状態なら過剰に接触することがないからむしろ助かるわ。多少目立つのはもうあきらめた。どうせ普通に歩いてても真輝は目立つしな。


そんな感じでデパートでは人目は集めた物のそれ以上のトラブルに巻き込まれることはなく、無事に用事を済ませることが出来た。


明らかに若い男たちが真輝の事を見ていたけど直接絡んでくる事はなかったあたり、一応の護衛役としての役割は果たせたのかね?




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