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神威絢爛〜國護神羅の戦奇譚〜  作者: 語部シグマ
第一章・第一部:神威を持つ者
3/3

教室にて

〝なんか話し飛んでるなぁ……〟と思ったら、書き溜めていたやつを投稿するのを忘れてました!

申し訳ありませんm(_ _)m

 その後の神羅の状況は最悪と言ってもいい程であった。


 屋上から教室へと戻ってきた神羅。生徒達は先程の出来事などとうに忘れたかのように談笑を繰り広げており、その誰しもが神羅が教室に戻ってきたことに気づく様子もない。


 神羅は自身の席へとつくと、居眠りをするべく机に突っ伏し、顔を両腕へと(うず)める。


 しかし暫くして教室内がザワつき始めたことに気づいて、その顔をゆっくりと上げた。するとそこには、神羅の前の席の椅子をこちらへと向けて座る、微笑む弓鶴の姿があった。


 非常にニコニコとしている弓鶴に、神羅は数秒の間その場でフリーズしてしまった。



「……」


「ごめんなさい。睡眠の邪魔をするつもりは無かったのよ」


「何故いる?そこはあんたの席じゃねぇだろ」



 窓際の一番後ろ、比較的に目立つ事の無い席である神羅に対し、弓鶴の席はほぼど真ん中に位置している。


 ちなみに神羅の前の席の本来の主は〝熊川雄三(くまがわゆうぞう)〟という柔道部の男子生徒で、神羅とは比較的に仲の良い、数少ない友人であった。


 そんな雄三は大柄な体格からは似つかない程、鼻の下を伸ばしデレデレとした表情をしながら、少し離れた位置に立っている。



(熊がデレデレしてんじゃねぇよ……)



 心の中でそう愚痴りながらも神羅は自身の問いかけに対する弓鶴の返答を待った。


 すると弓鶴は更にニッコリと笑みを浮かべながら、神羅を含めこの場にいる全員が驚くような発言をした。



「愛する許嫁に一秒でもそばにいたいと思うのは当然の事でしょう?」


「ブッ────?!」


『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?』



 神羅が吹いたのと教室内の生徒達の驚く声が重なる。


 女子生徒達からは悲鳴じみた声が上がり、男子生徒達は今すぐにでも神羅を問い詰めたがっていたが、弓鶴がいるからか二の足を踏んでいる状態であった。


 そのタイミングで次の教科の担当教師が教室へと入ってきて、未だ席についていない生徒達に激を飛ばしていた。


 弓鶴も席へと戻る為か椅子から立ち上がり、しかし徐ろに神羅の隣へと移動すると、その頬にチュッとキスを落とした。


 それを見ていた生徒達はもちろん、教師でさえも思わず凝視してしまう。


 そんな彼らを他所に弓鶴はまたニッコリと笑ったあと、〝また後でね〟と告げて自分の席へと戻っていった。


 神羅はそんな彼女を見送ってから、頭を抱えて机へと突っ伏す。



(や……やられた……)



 哀れ────弓鶴にしてやられた神羅は授業中、生徒達からの悪い意味での熱い視線をその身に受けながら、休憩時間は何処へ逃げようかと考えさせられる羽目になるのであった。



 



 ◆






 その日の最後の授業の終了を告げる鐘が鳴り始めたと同時……その前に教科書等を鞄へとしまっていた神羅は礼をし終えた直後に鞄を持って勢いよく走り出した。



「待て、逃がさんぞ!」



 ところが逃げ出すと踏んでいた男子生徒達が行く手を阻み、神羅を取り抑えようと一斉に突っ込んだ。



「捕まるか!」



 神羅は応戦すること無く跳躍すると、男子生徒達の頭上を飛び越えそのまま廊下へと飛び出した。



「逃がすな!」



 それでも男子生徒達は諦めることなく神羅を追う。


 神羅は廊下を歩く生徒達の間を縫うようにして駆け抜けるも、目の前に体格の良い男子生徒達の集団が現れた。


 彼らはこの倭杜学院高校のアメフト部の生徒達で、今まさに部活へと向かおうとしていたのである。


 神羅を追いかけていた男子生徒達はそれを確認すると、アメフト部の生徒達へ声をかけた。



「お前ら、そいつを捕まえてくれ!」


「なんだなんだ?」

「いったいどうしたんだ?」



 いきなり〝捕まえてくれ〟と頼まれたアメフト部の生徒達は戸惑いを見せていたが、次の男子生徒の言葉で目付きが変わる。



「そいつ、俺らの女神、矢神さんの許嫁だってよ!」


『なんだとぉ!!』



 いつの間にやら〝女神〟と称された弓鶴……神羅がそんな弓鶴の許嫁であると聞いたアメフト部の生徒達はギラリと眼光を光らせ、神羅の前に立ち塞がった。



「俺らの天使、矢神さんの許嫁だと!!許せん!!」


「女神なのか天使なのかどっちかにしろ!つーか、あいつはいつからテメェらのもんになった!!」



 そんな事を言っている場合ではなかったが、思わずツッコミを入れてしまう神羅。


 そして彼は走りながら周囲を見渡したあと、教室側の壁へと飛び、三角飛びの要領でアメフト部の生徒達を躱したのだった。



『嘘だろ?!』



 追いかけていた男子生徒達も立ち塞がっていたアメフト部の生徒達も声を揃えて驚愕する。


 無理もない話である。


 挟み撃ちに陥ったことで諦めるのが普通の状況下において、まさか三角飛びでその窮地を脱しようなどと、いったい誰が予測できただろうか?


 アメフト部の生徒達を飛び越え走り去ってゆく神羅の背中を呆然と見送っていたアメフト部生徒達であったが、直ぐに我に返って追跡を開始する。


 アメフト部生徒達とクラスの男子生徒達に追いかけられ続ける神羅。そして彼はある事に気が付き、何故か天井に当たるか当たらないかの高さまで跳躍した。



「なんだあいつ……なんでいきなりジャンプしたんだ?」



 そう疑問に思いつつも追い続けていた先頭を走るアメフト部の生徒達。しかし彼らは神羅が跳躍した理由を直ぐに知ることになる。


 何故ならばアメフト部の生徒達の前で、一人の教師が職員室から出てきたからである。


 アメフト部の生徒達と引けを取らないほどの体格のその教師は、こちらへと突進してくるアメフト部の生徒達を前に避ける暇もなく彼らと衝突した。



「ぐわぁぁぁぁ?!」


「か……監督?!」



 アメフト部の生徒達に吹き飛ばされる教師……彼はアメフト部の顧問、つまり監督でもある教師であった。


 非常に厳しく、また生徒指導の担当でもあるからか校則にはかなりうるさいとのもっぱらの噂であった。


 そんな自分たちの監督を吹き飛ばしてしまったアメフト部の生徒達はサーッと顔を青ざめさせ、一言も発せずにその場に立ち尽くしている。


 そんな彼らの前でアメフト部監督の教師はゆっくりと立ち上がると、次の瞬間には鬼の形相で彼らを睨みつけていた。



「貴様らぁ……廊下を走るとは何事だ!」


「か、監督……これには深い事情が……」


「どんな事情があろうとも拘束を破っていい理由にはならん!それとも何か?走らねばならん程の理由があるのならば話してみろ!」


「実は……」



 やめておけばいいものを、アメフト部の生徒達は自分たちの監督を前にすっかりと萎縮してしまい、馬鹿正直に神羅を追いかけていた理由を話してしまった。


 それを聞いた教師は当然のごとく目を吊り上げ、正に〝鬼〟のように彼らを怒鳴りつけた。



「馬鹿もん!!そんなくだらん理由で一人の生徒を追いかけ回すとは何事か!貴様ら、今日の部活は時間まで走っていろ!それとそこの生徒達は学校内の全てのトイレ掃除だ!」


『そんなぁ〜……』



 アメフト部監督の教師から罰則を受けた生徒達はその場で仲良くガックリと項垂れるのであった。


 一方その頃、見事に逃げおおせた神羅は校門前で一息入れていた。



(追ってはこないようだな……)



 時折、校舎の方を見ながら生徒達が追いかけてこない事にホッと安堵する。


 すると────



「あっ!あの人だよ、矢神さんの許嫁だっていう人!」


「げっ……」



 校門から出てきた女子生徒に見つかり、またもや逃走する事になる神羅であった。


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