第5話 彼女の証明
霊体のローサ。
愕然とするリィの前で揺らぎ、瞬く間にその姿を消失する。
脳裏で、つい先程まで相対していたローサにそっくりな悪鬼の姿が思い浮かび、その姿と重なった。放ったセリフごと。
『私たちの仲間になれ、リィ……』
リィは思わず涙を流して右手を伸ばす。
しかし、その時には幻覚だったのか霊体だったのかわからないそれは、完全に跡形もなくなっており、ただ沈黙だけがその場を支配していた。
リィの心に疑問が満ちる。
(今見えた霊体が、ローサだったの? ならさっきの言葉は、悪鬼の仲間になれっていっている? だとしたら、ローサはやはり悪鬼の仲間……魔女——)
それ以上は考えない方がいいことだった。
考えれば考えるほど、リィの胸は苦しくなって、辛くなって、なおさらに生きる意味を失っていく。本当に自分が『魔女の娘』であるというのなら、ウィルグリッド家の行動や独房で経験した暴力は正当化され、自分が間違っていたことになる。自分は、最初から——非難されるべき存在として育てられたのだ、と。
元々生きる目的なんてなかった。あるとすれば、ローサが間違っていなかったということを証明したかっただけだった。