表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電験三種と過ごした日々  作者: 37,5or9
34/52

④サーキュレーター/くまとりモーター

 今回かなり説明が判りにくいと思います。できたら参考書などを手元に置いて読んで頂けると嬉しいです。もしくはお手数ですがくまとりモーターの画像検索などして頂けると判りやすいかと思います。【2022.7.18写真を追加してみました。】



 ―2010年、夏―


 私は当時寮暮らしをしていた。2階建ての1階部分、壁の薄い6畳ぐらいの部屋で暮らしていた。今も大して金はないけれど昔はさらに金がなかったので、ベッドや事務机などが部屋に備え付けられていたのはありがたかった。ただ机やベッドはあったのだが、クーラーはなかった。


 当たり前だが夏と言えば暑い。その年は寮で暮らし始めてもう3年目だった。1,2年目は窓を開けて網戸にして、そして廊下から部屋が丸見えになってしまうが扉を少し開けて風通しをよくして、暑さ凌いでいた。が、流石にそれも嫌になった。そこでようやく扇風機を買うことにした。


 悲しいことに貧乏が体に染みついているせいで、何をするにしても買わなくても我慢できるなら買わなくていいんじゃないか、という考え方をしてしまいがちだった。今から思えばこれは間違いだった。多少(といっても扇風機なんて3000円出せば安いものなら買える)出費がかさんだところで、夏を涼しく快適に過ごすことができ、なにかに集中して取り組めたのならそれはかけがえのないことだ。月並みだが時間は戻らないし、金では買えないものだ。

 そんな風に今なら思える。でも、当時は思えなかった。


 もし、扇風機を買おうかどうか迷っている方が居たら思い切って買ってみることをお勧めする。


 ともかくその年、扇風機を買うことにした。銀行で貯金を下ろして寮から2キロくらい坂を下った所にあるホームセンターに向かった。持ち帰りを考えて徒歩で。ただ今思えば軽トラックを借りられたかもしれない。扇風機で借りられるのかは微妙か。店に入って扇風機売り場に着いたところで、また悩みだしてしまった。


 この期に及んで果たして本当に必要なんだろうか、と。売り場をウロウロしていたところで、なにやらこぢんまりとした扇風機を見つけた。(商品名としてはサーキュレーターとなっていた)当時の私はそれがお洒落に見えて、こっちの方がいいんじゃないかと思った。扇風機に比べるとコンパクトで持って帰る時も楽そうだし、名前が悪魔に少し似ていたのも気に入ったポイントだった。(当時中二病でした)そんなわけで私はそのサーキュレーターを買って帰った。2000円くらいだったと思う。


 買って正解だった。当たり前だが涼しいし、なんだか見た目もオブジェのように見えなくもなかった。当時は気にならなかったが、最近扇風機を買い二つを比べてみて思うのは、サーキュレーターは扇風機のように首が長くない(というより首がない)ので角度を合わせることが難しい。音もサーキュレーターの方が少しうるさい気がする。 


 今更だが、もしかするとサーキュレーターというのは直接人間に風を当てるものではないのかもしれない。サーキュレーターと扇風機の違いを調べてみようかとも思ったが、まあ別に知らないままでもいい。


□□


 そんなわけでそのサーキュレーターを買ってからもう10年以上経過した。まだ使えるのだが、部品が劣化してきたのか音と振動が大きくなってきているような気がして、寝る時、つけたままにしているとうるさく感じるようになってしまった。そして去年(2021)、とうとう扇風機を買った。サーキュレーターの耐用年数は6年と本体のシールには書かれていた。もう十分働いてくれただろう。


 ゴミに出そうか。それともリサイクルショップに売ろうか。でも、もともと2000円で買ったものだ。劣化しているし、多分いくらにもならないだろう。それでも誰かに使われるなら、その方がいいだろうか。


 いろいろ悩んだのだが、分解してみることにした。


 電験の勉強をするようになって、サーキュレーターの回転数の制御がどのようになっているのか気になっていた。ふと分解してみようと思う時があったのだが、肝心なところは外装を壊さないと見ることはできず、そこまではできなかった。肝心な所、というのはもちろんモーターだ。仕組みを見るために壊すというのはちょっとどうなのか、と思うと手が止まった。


 ネットで調べてみると交流の扇風機の速度制御は周波数制御をしているんじゃないかという意見が見つかった。なるほど、とも思ったのだが、そんな難しいことをしているのだろうか、と疑問も覚えた。2000円で買えるものだし。


□□


 壊してしまうことに抵抗はあったが、やはり分解することにした。

 ガードを外し、ネジを外し、羽を外し、スイッチを外し、外装を壊して……。超音波カッターのようなものを持っていたら綺麗に切れたかもしれないが、今更だ。いよいよモーター内部が見えた。手のひらにすっぽり収まる大きさ。見た目よりも重い。『凹』の形をした固定子、上の凹んだ部分に回転子。(というよりくりぬかれたような感じで回転子が収まっている)配線を除けばそれだけだった。これで回転するのか?


(これは……、…………なんだろう?)


 〇 回転子(分解はできなかったけれどおそらくかご型回転子だと思います)

 凹 固定子(下の辺にエナメル線が巻かれている。)


※ 本当はもっと固定子の先端が回転子の周りを包み込むように、固定子が円形にくりぬかれたようになっています。そして固定子の先端のそれぞれの片側には短絡コイル(くまとりコイル)が対面になるように巻かれています。


 『機械』の単相誘導機の分野を探すとすぐに見つかった。単相誘導モーターの始動方式、その最後に図と一緒に説明が書いてあった。『くまとりモーター』だった。


(これがくまとりモーターか。実物は初めて見た)


 よく見れば(よく見なくても)、固定子の先端の一部に切り込みが入っていて、そこに短絡コイルが巻いてあった。これによってその部分の磁束の変化を遅らせているのだと思う。


 固定子の下の方の絶縁テープで巻かれた箇所をはがしてみる。するとグルグル巻きになったエナメル線(と思う)が見えた。差し込みプラグの線はスイッチを介してここに繋がっている。交流の電源に繋げられた、これは絵に描いたような電磁石だ。固定子がそのまま電磁石になっている。


挿絵(By みてみん)

 

□□


 説明してみようと思います。(間違ったことを言っていたら申し訳ない。)


① 鉄心にエナメル線を巻いて、電流を流すと電磁石ができます。N極とS極は『右ねじの法則』で決まります。家庭のコンセントに来ている電気は交流で、電流の流れる向きが定期的に変わります。周波数が60Hzなら1秒間に60回変わります。電流の向きが変わるということは、電磁石のN極とS極が変わり続けているということです。 


 電磁石の両端を回転子を挟むような形にすると、交番磁界ができます。


※ 単純な鉄心ではない気がします。もっと損失の小さくなるような素材だと思うのですが、これだと断言することができないです。すみません。



② 回転子を挟む電磁石の両端の一部、例えば右下と左上に切り込みを入れてそこに短絡コイルを巻くと、『レンツの法則』でコイルは変化を妨げる向きに磁束を発生させるので切り欠きのある部分は変化が遅れます。


 仮に右側がN極になるときを考えてみると、先に右上の部分が強いN極になり少し遅れてくまとりコイルの巻いてある部分が(右上のピークが去ったころに)強いN極になります。


 電流の流れる向きが逆になると、今度は右側がS極になり、左側がN極になります。左下が強いN極になり、少し遅れてコイルの巻いてある左上の部分が強いN極になります。


 これを通してみるとN極が右上から右下、左下、左上へと移動しているように見えます。対面がS極なので、回転磁界ができている、のだと思います。



③ 次に回転子の方を考えます。中身まで見ることはできなかったのですが、おそらくかご型回転子だと思います。かご型回転子の周りで磁界、N極とS極が回転するとそれを追いかけるように回転子も回り始めます。これは『アラゴの円盤』の原理です。


■■

 アラゴの円盤というのはアルミの円盤の板の近くで磁石などで磁界を発生させて動かすと、同じ向きに円盤も回転するというものです。

■■


【フレミングの右手の法則】

 導体棒の周りで固定子の ①磁界が ②動く。この時動いたのは固定子の側なのですが、逆に、『導体棒』が固定子の磁界の変化の方向と『逆向き』に動いたと考えます。

 そうすると『フレミングの右手の法則』、①磁界と②力があるということになり、導体棒に③電流が流れます。


【フレミングの左手の法則】

 そして今度はこの➀電流と固定子の②磁界について『フレミングの左手の法則』を使って考えます。①電流と②磁界があるので③力が発生します。この力により、この導体棒には磁界の移動方向と同じ方向に移動しようとします。こういうわけで回転します。


※ 飽くまでも素人が言っていることです。間違っていたら本当にすいません。

 

□□


 仕組みが判ると感心した。こんなにコンパクトで、少ない部品点数でモーターができていたのかと。これならそうそう壊れないだろうなと思った。ただ肝心の速度制御の方法がよく判りませんでした。配線をちゃんと記録しておかなかったのがまずかったです。嘘を言ってもあれなのでこの辺で止めておきます。


 くまとりモーター一つで色々なことの復習ができた。多分に身近にある電化製品、どれをとっても、色々な法則や原理を応用してできているのだと思う。


 しかし本当にくまとりモーターの原理を思いついた人ってすごい。もっと言うと法則の名前になっている方々や、単位名に取られている方々は本当にすごいと思う。どうしたらこんなこと思いつくんだろうか、と本当にすごいと思う。(こればっかりですね。語彙が貧弱で申し訳ない)


 ■■


 後日ホームセンターに行ってみた時、サーキュレーターや扇風機の内部をガン見してみた。(するな)そこで判ったのだがくまとりモーターがむき出しになっているタイプのサーキュレーターもあった。これを先に見ていればわざわざ分解しなくてもよかったかなと少しだけ、後悔した。


 今回で身近な電気編は終わりです。つき合って下さってありがとうございました。自分でこんなことを言うのは卑怯だと思うのですが、判りにくかったと思います。


 申し訳ないですが参考書などをよくご確認しておいてください。間違ったことを言っているかもしれないので。すみません。


 あとは車についての事と最近思うことを書いて、今度こそ終わりにします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ