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電験三種と過ごした日々  作者: 37,5or9
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2、2年目、理論、法規

 初受験(2018)の結果が出てから暫く腐っていた。が、腐っていたところで誰が慰めてくれるわけでもない。それ以外にやることはないのだからやるしかないのだが、少し別のことをしたくなった。気分転換もかねて。


 持ってないよりは持っていた方がいいかということで、危険物の乙4の勉強をした。


 資格を取ることはできたが、なんというかこれも電験に負けず劣らず掴みどころのない試験のような気がした。それでも乙4は1年に何度も挑戦できるから精神的に楽なのだが。


 この試験は電験の終わった後の10月にあったので時期的にもちょうどよかった。(磁気的と変換されて笑った)


****


 なんとか乙4を取れたことで少ない自信を取り戻し、電験の勉強をし直すことにした。


 ところで私の周りには誰一人として電験のことを相談できる人はいなかったし、今もいない。


 たまに会社の人に

「資格の勉強をしてます」というと

「色々な参考書に手を出すよりも一冊を完璧にする方がいいですよ」なんて言われた。


 言っていることは間違っていないと思うのだが、こと電験に関しては1冊で完璧に網羅しているものがないように感じられ(あくまでも個人の感想)色々と手を出してしまっていた。


 もう既に今(2020年)は理論だけで4冊参考書がある。


 そんな環境で学習方法なんかの情報をどこに頼るかというと「ソースは5ch」というやつである。


 法規は法律の原文に当たるのがいいという話を聞いて、分厚い電気の法律の本を買ったのだが


「これ全部覚えるって、無理じゃないか?」


と早々に思ってしまい、買って暫くペラペラめくったり、問題で出てきたところに線を引いたりしていたが、すぐ使わなくなった。無理だ。


 次にせめて重要な部分だけでも書いて覚えようと思って、ノートに重要な物だけ書いて暗記帳のようなものを作ろうと思ったのだが、法律を手書きしていくと一生終わらない気がしてそれも途中出放棄してしまった。


 結局、皆が感謝している『大手動画投稿サイト』に動画を上げて下さっている方のプリントをダウンロードして、それに書き込んで、寝る前とか、とにかく数をこなすことにした。


 他には法規のA問題の無料アプリが出ていたので、時間のある時(仕事の休憩時間とか)スマホで周回することにした。これを作ってくれた方には感謝しかない。


 あとは初年度から持っていた参考書、赤シートで隠して思い出すという作業をしていた。


 暗記に関してはこんな感じだったが、本当に悲しいくらい定着しなかった。ので繰り返したが、もっといい方法があったのだろうかと、考えてしまう。


 法規は法令の問題のほかに電線にかかる荷重の問題なんかが出て、しかもその計算問題のウェイトがかなり大きい。5chの猛者たちの情報によると、範囲の広すぎる法律はすべてカバーするのは無理なので、確実に計算問題を全問解いて、あとは法令の問題は取れるものは落とさない、という戦法がメジャーらしいということも知った。


 過去問の15年分が『分野ごと』に分かれているものを買い、ひたすら計算問題を周回し続ける。幸い、法規の計算問題に関しては過去問を押さえておけば対応できるくらいのひねりしか加えられていないということに気づいた。だから、計算問題を全問解いて……。


(計算問題だけとはいえ、全問確実に正答する? できるか? 1年に1回の試験で)


 そう考えるだけでプレッシャーがかかる。


 とにかく、この方法があっているかどうかはともかくとして、法規に関しては自分なりの勉強の仕方ができた。が、理論の方はどうしていいのか判らなかった。



****



 理論は甘く見ていたところがあったのかもしれない。


 前年と同じく過去問をひたすら繰り返したが、ただ問題を解いていただけだった。その年のその問題に対する解法しか判っておらず、深く踏み込まなかった。浅い知識しか身についていなかった。結局のところ、基本が全然なってなかった。


 加えて、法規はどこまでやっても身についている気がしないという不安があって、時間配分を法規ばかりに偏らせてしまった。


 もちろん理論についての基本ができているのなら、それは間違っていないのだが、情けないことに私は基本ができていなかった。



****


  2019年7月


 この年は大手の会社の主催している、研究会というかセミナーにも行ってみた。


 無料なのがありがたいが、やはり隣県まで出向かなければならなかった。


 大変だったが、ここまで努力したのだから、きっと受かるはずだという変な安心感を得たかったがためだけに、わざわざ足を運んだような気もする。


 最近の電験の問題を見ていて思うが、どの資格会社でも問題を予想することは不可能なのではないかという気がしている。なんというか、出題者の方々はものすごく自由だな、思ってしまう。


 いいのか悪いのか、過去にまるで囚われない問題を繰り出してくる。


****


 2019年9月1日(日)


 令和元年になって初めての試験、これで合格すれば免状は新元号の元年、是非欲しいと思った。


 受験会場は科目合格しているからだろうか、前回とは違い自分の住んでいる県の大学で受けることになった。朝自転車で40分くらいかけて、大学の工学部棟へ向かう。


 体調は正直悪かった。精神がぐちゃぐちゃに落ち込んでいた。


 お盆休みあたりから、俺は今回で受かるしかないが、落ちたらどうなるんだろう? どれだけやりこんでも、合格するという確信が持てない。確信でなくとも自信が持てればまだいいが、それもない。


 なんだが試験範囲を知れば知るほど、自分のカバーできる限界が判ってくる。

 もしそのカバーしきれていない部分がたまたま多く出たら? 20問中12問解ければいい、8問も間違えられる。受ける前ならそんな能天気なことを言えたかもしれないが、もうそんな風には考えられない。そもそもどうしたって判らない問題が1、2問混ざっている。そうしたら18問中12問取らないといけない。つまり3分の2取らないといけない。


 もう止めようか、とも考えた。こんなに苦しんでまでやらないといけないことなのか、この1年ほぼほぼ試験のことばかり考えていた。隙間時間はアプリで、家に帰ってから1時まで勉強して7時に起きて会社に行って…その繰り返し(もちろんすべての時間を勉強にあてられたわけではないです。かなり意志が弱いため)


 そもそも受かったところで本当にいい働き口があるのか?


 自分は丸きり無駄なことに、貴重な人生を費やしているのではないのか。


 勉強するより不安になっている時間の方が長くなってくるような。無理やり、元気の出る言葉をネットで探したり、気合の入る曲を聞きながらやったり。精神のドーピングだ。


 お盆休みになると昔の友達に会ったりする機会があった。もうこの年だから会えば、彼女がどうだとか結婚がどうだとか、聞かされる。俺は資格の勉強をしていて、それが終わったら正社員になってそれから考える。なんて言葉を返していた。


 本当に? そんなにうまくいくと思っているのか?


 考えても仕方のないことは考えないようにする。とにかく資格を取ってしまえばいい。それが役に立つかどうかは今考えても仕方がない。だから今は勉強に集中しないといけない。他の人々は、楽しそうに見えるし、正直羨ましい。俺はなんでこんなことしてるんだ。お前らが上手く行ってるのだって結局運が良かっただけじゃねえか。俺はなんでこんなことになってんだ。本当はもう何をしたって駄目なんじゃないのか。


 俺は気づいていないふりをしているだけじゃないのか。


 派遣社員はボーナスが出ない。


 自分より後に入った会社の後輩は、業績が不振になるとすぐに切られてしまった。


 昇給はない。


 通帳にも大して入ってない。


 考えれば嫌なことしかない。


 直視すれば、悲しい現実しかない。


 俺はこの資格に逃げているだけじゃないのか?



 ****


 努力の方向性が正しかったかどうかはともかく、この資格に価値があるのかもともかく、この1年間、時間は費やした。2年と言ってもいいか。


 これで受からなかったら、他の人だって受からないはずだ。そんなふうに自分を納得させる。

 

 理論が始まる。最初から計算量が多い、見たことのない問題、とばす、とばす、とばす。B問題 選択問題、17、18見比べる。


(なんだこれ)


 失笑してしまった。


 体の力が抜ける。全部がどうでもよくなってしまうような感じ。


 そういうことか……。


 どういうことかというと、自分にとっては選択する意味がほとんどない問題だったのだ。要するに両方訳わからなかった。


 少し放心してしまったが、それでも取れる問題は10問くらいはあったはずだから、他に何かまぐれで当たれば、1問でも取れていたなら合格できる。そう思っていたが


 結局駄目だった。



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