表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電験三種と過ごした日々  作者: 37,5or9
18/52

8、③忘年会2021

※ 今回かなり金のことについて書いています。苦手な方はご注意ください。


※ 今回もBさんの部分は創作だと思っていただいて構いません。

 私の職場にはいろいろな派遣会社から人が来ている。

 同じ部署に同い年の方がいた。会社は違う。Bさんとしよう。


□□


 2021.12

 二人で忘年会をすることにした。

 この時期、会食は許されていた。というよりは禁止はされていなかったという方が正確かもしれない。

 

 流石にもうコロナウイルスも終わりかと皆思っていた時期だ。

 ただ一応、社員の方に確認をしておくことにした。


「今って忘年会とかしてもいいですかね?」


「まー、内緒でやるならいいんじゃないですか」


 ……内緒? 微妙だった。


 ただ実際その頃の張り紙には外食は禁止だとは書かれていなかった。書いてあるかないかの問題じゃないだろ、と怒られるかもしれない。責めてもらって構わない。申し訳ないです。


 ただ私は彼と話しておきたかった。彼はじきにこの派遣先を辞めると言っていたからだ。


□□


 人に相談する時、答えは既に決まっているという言葉がある。だが逆に自分の意見を知りたければ他人と話すべきだ、という言葉もあったような気がする。


□□


 忘年会と言っても二人だけだ。


 3人以上になってくると調整が厄介になる。店はどこにするか、どこに集合するか、電車の時間の都合はどうか。そういったすり合わせも面倒に思って、今日の帰りどこか食べに行こうと誘った。普段の自分にはこういう積極性はない。これが最後になるかもしれない、という予感があったからだ。


 仕事帰り、そのまま彼を車で拾って、食べ放題のなんか適当な店に行くことにした。予約もしていなかった。一応車内では対角に座ってもらった。私が運転席、彼は助手席側の後ろの席。(食事の時も対角に座った)自分の車に人を乗せるのは3年振りくらいだった。


 最初にはっきりさせておかなければならないことがあった。


「もしこれでBさんがコロナウイルスにかかったら、責任取って俺は会社を辞めます」


「いやそう言うわけには……俺が辞めますよ」


「俺が」「いや俺が」……


 要するに二人とも辞めようと考えていた。


□□


 Bさんは車を運転する自分に気を遣ってアルコールを頼まなかった。ずっと気になっていた年収を聞いてみた。


 400万弱だと彼は言った。


 衝撃だった。


(……ハッタリか?)

 だがそんなことをする理由がない。年収バトルをしているわけではない。むやみに嘘をつく人でもない。とすれば本当に400万弱ということだ。(普通にそう言ってます)


 Bさんの会社(常用型派遣)の方が待遇がいいということには気づいていたが、ここまで差があるとは思っていなかった。ちなみに私は去年(2021年)の年末調整の紙によると年収240万だった。150万も違うのか、やっている作業はほとんど変わらないのに。(この考えは完全に傲慢です)同じ作業を協力してやったりしているのに。


 先に言ってもらってよかった。私の年収を聞いた後だとBさんならおそらく、傷つけまいと少なめに申告されたかもしれない。この件に関してはショックを受けておいた方がいい気がした。


□□


 派遣社員というのに疲れた。会社に言われれば日本中行かないといけない。ずっと同じ仕事をするのにももう飽きたと彼は言った。30も過ぎてしまった。このままここに居ても仕方ない、と。

 自分も概ね同感だった。けれど年収だけ見れば悪くないように思えた。他はともかく。


 でもここは居心地がよくないですか、と聞いてみると。

 それはここが甘いからだ、と彼は言った。


 私には人間関係以上に重要なものはないように思える。だが、それ以外は軽視していいということになるだうか。年収240万。ここから増えることはない。3か月更新。いつ切られるか判らない。これでいいわけがない、とは言い切れなかった。


□□


 今の待遇に文句があるならば、さっさと辞めればいいのになぜそれができないのか。


 怖いからだ。これまで正社員でいろいろあって、今派遣社員をやってみて判った。(ここが自分に合っていただけかもしれません)やはりストレスがはるかに少ない。(別方向の種類の違ったストレスはある。年収や将来など)良くも悪くも所詮派遣社員だ。大して期待もされない分、大して追い詰められることもない。


 そのくらいの精神の負荷が自分のような人間にはちょうど良かったのかもしれない。

 だが一度切られたのは事実だ。また切られるかもしれない。そして240万円だ。一生変わらない。そして歳だけ取っていく。それでいいのだろうか。でも今の自分にちゃんと正社員が務まるのか。


□□


 年収が100万も違えば今の生活も違ったものになっただろうか。

 引っ越しだって気軽にしていたかもしれない。本屋で悩んだ挙句、買わなかった本をすべて買ったとしても10万も行かないだろう。


□□


 2021年、人と話しながら食事をしたのはこれを含めて2回だけだった。


 私がウダウダ悩んでいるうちにBさんは辞めていった。健闘を祈っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ