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JCを拾ったら居付かれた  作者: 暗蔵暮らし
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アオ鬼

 5歳の頃、母親が家を出て行った。

 研究職で仕事人間だった父親に愛想をつかした事が原因だったらしい。

 母親を思い出すのが嫌なのか、父親は増々仕事にのめり込み、家に帰ることが日に日に減っていった。子供一人で暮らしていく事なんて出来る筈もなく、自分は父親の妹である叔母の家に預けられたのはそれからすぐの事だ。


 叔母も叔父も優しい人たちだった。父親に押し付けられるように、預けられた余所者を嫌な顔せず受けいれて、従姉いとこと変わりなく育ててくれたんだから。

 八歳年上の従姉も自分を良くこき使ったが、何だかんだで面倒を見てくれていた。

 テレビやネットを開けば、不憫なニュースには事欠かない世の中だ。両親が居たって、不幸な目にあっている子供は沢山いる。

 それに比べれば、自分は十分幸せな暮らしを送っていただろう。


 

 だから、不幸だと決めつけられることが嫌だった。

 可哀想だと思われることが、腹立たしかった。

 憐れむ視線に反吐が出た。

 嘲笑ちょうしょうする声に、怒りがわいた。


 

 小学校で親に捨てられと指を指しながら、馬鹿にしてくるクラスメイトが居た。

 母親に捨てられ父親に見放された自分の境遇は、悪い意味で目立ってしったのだろう。

 人を中傷する方も問題はあったが、当時の自分も感情的であり、考える前に殴り掛かっていた。

 勝算はなかった、クラスメイトはガキ大将であり、振り上げた拳が届く前に子分二人に抑えられ、問答無用にボコボコにされる形で自分の初めての喧嘩は黒星スタートを切る。

 傷だらけになって家に帰ると、従姉に烈火のごとく怒られた。

 たった三人相手に負けるなんて、情けないと叱られ、喧嘩の仕方がなってないからだと、そのまま河川敷かせんじきで日が沈むまで特訓が行われたのだ。

 女子生徒でありながら、通っていた高校で喧嘩をすれば無敗を誇っていた従姉の指導は、頭のネジが二・三本外れていると思えるぐらい厳しいものだった。

 しかし、耐えられた自分にはその才能があったらしい。

 結果、一週間後にはクラスメイト達に完勝。

 その後自分と従姉は、叔母と叔父に正座で説教をされる羽目になった。

 しかし、従姉は教える事が楽しくなってしまったらしく、河川敷での特訓は小学校を卒業するまで続けられる事になる。


 少々荒れた小学時代を経て、中学の入学初日。当然の様に、生意気な一年が入ってきたと上級生の不良グループに校舎裏へ呼び出された。

 従姉の言うとおりに、一発殴らせてから全員を叩きのめしたら停学にはならず、反省文だけ済んだことに、初めて尊敬の念を抱いたものだ。

 売られる喧嘩は、例え高校生相手だろと全て買い、勝ってきた。

 特に、喧嘩が好きだった訳でも、楽しかった訳でもない。ただ、望まれたからそれに応えただけだった。

 名前のあおいからとって、鬼の様に強いから、『アオ鬼』。

 そう呼ばれるようになったのは、中学卒業の頃だ。


 高校に上がってからは、喧嘩を売られることも殆どなくなっていた。

 大勢で闇討ちを仕掛けても、叩き潰される。

 校内で喧嘩をしても、悪くて1週間の停学で済んでいる気味の悪さ。

 処罰の甘さは、手を出されての正当防衛であったこと。喧嘩の現場に立っている者が自分だけであっても、その一人をリンチする様に複数人が地面でのびていた事が理由であったが、当事者しか知りえない事情は、黒い噂として広がっていく。

 向けられる敵意に対して拳を返しただけで、自分から先に手を出したの初めての喧嘩の時だけだったが、結果的に不良のレッテルは揺るがないものになっていた。

 メンツを気にする不良達は、虎の尾を避ける様に、目線を合わせすらしない。

 一般生徒は、肩がぶつかっただけで、泣きながら謝ってくる。

 結局、周りとの距離は自然と遠くなり、学校内では居場所を見失っていた。


 暴力に頼ってしまったのは事実であり、全て自分で蒔いた種だ。

 華やかな青春も、肩を組む友人も、甘酸っぱい恋を遠い存在にしたのは、全部自分の行いだった。

 別に喧嘩をしたことに後悔はないし、今の状況が不幸だとも思わない。

 一人の時間だって漫画や小説を読んだり、携帯でゲームや動画を見ていれば勝手に過ぎていくし、高校の3年間などあっという間に終わってしまうだろう。

 県外にある遠くの大学にでも進学すれば、恐がれることもない。それまで大人しく過ごしていればいいだけだ、なんの問題もない。


 

 だから、隣に誰かが居て欲しいなんて、憧れる必要なんてないんだ。

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