第32話 妹羊はお調子者
デメキンにゃんこ囮だにゃ~作戦は無事に成功した。今は作戦成功により小休憩中だ。
「ふっふっふ、どうだった? ぴぴ、ぷう。我輩の妖精の国映画大賞主演にゃんこ賞受賞間違いなしの名演技!」
「そうね、見事な名演技だったと思うわ」
「ミニぴぴぷちゃ号は助演にゃんこ賞なの? それとも、ダブル主演?」
「もちろんダブル主演に決まってるのである!」
『はぴさん、確かに主演にゃんこ賞ものの名演技でしたが、手伝ってもらえると嬉しいです』
「え、聞こえてた?」
『申し訳ございません。回線が開きっぱなしでしたので』
『バッチリ聞こえてたよ~。よ、主演にゃんこ賞!』
「あうあうあうあう」
まさかめめさんどころかババさん、ううん、めめさん達のパーティーに加えて熊さん達にも聞こえているはずだ。ううう、これはショックだ。いや、まだ大丈夫だ。無かったことにしよう。
「うむ、では小休憩を止めて、我輩達も戦利品の処理に手を貸すことにしよう。ぴぴ、切り裂き王の調子はどう? 応急処置した箇所に問題なかった?」
「消耗したパーツがあるから、私とぷうは修理しているわ」
「わかった。ではめめさん、我輩がミニぴぴぷちゃ号でお手伝いしよう」
『はい、よろしくお願いします』
『あ、はぴさん誤魔化した!』
『こらババ!』
おのれあの妹羊め! まあいい、我輩もミニぴぴぷちゃ号で戦利品の回収のお手伝いだ。なにせ黄色いののBPS30機はともかく、1000m級が2隻もあるからね。
戦利品の回収方法は簡単だ。まず、ミニぴぴぷちゃ号、めめさんの500m級親羊宇宙船。ババさ、いや、あの妹羊は呼び捨てで十分だ。ババの300m級子羊宇宙船の3隻のパワーを駆使して、2隻の1000m級生首型宇宙船をくっつける。ごっつんってね。
そしたらめめさんのところから、お猿さんを始めとしたの工作部隊が出てきて、2隻の1000m級生首型宇宙船の間に金属の棒を渡して、それぞれ溶接してくっつける。これで、2隻だった小鬼の生首型宇宙船が1つになる。
最後に、工作部隊にブースターをつけてもらったら完成だ。あとはブースターで勝手に惑星アルファ目指して飛んでもらえばいい。黄色いののBPSとか、1000m級に搭載されてた小鬼のBPSは、適当に集めて、小鬼の宇宙船の口とかその辺に突っ込むだけでいいね。
『はぴさん、めめさん、ちょっといいか? 見てほしいものがある』
熊さんに呼ばれて、我輩とめめさんは熊さんのもとに行く。するとそこには、比較的状態のいい壊れ方をした黄色いののBPSがあった。
『見てくれ、このBPSの胸部を』
熊さんに言われるがままに黄色いののBPSの胸部を見てみる。するとそこには、本来あるべきものがなかった。そう、コックピットブロックがなかったのだ。当然操縦者もいない。
『これは、コックピットブロックがない?』
『ああ、気になって撃破時のデータを確認したんだが、やつら、俺達と同じ、亜空間脱出フィールドを使っている可能性が高い』
『だとしたら、まずいですね』
『ああ。そう簡単に干渉出来るとは思わないが、下手したらやつら、俺達の亜空間脱出フィールドに干渉できるかもしれねえ』
『ハンターギルドと軍に至急連絡したほうがいいですね。私達ハンターは種族が多様ですので、様々な種類の亜空間を展開していますが、妖精軍は基本1種類で統一されていたはずです。もし解析されると、リスクが跳ね上がります』
亜空間脱出フィールドって、そんな欠点があったんだ。ぴぴとぷうはやられることないし、知らなかった。
「ねえ、ぴぴ、ぷう、今の話聞いてた?」
「もちろんよ。でも、私とぷうの倒した青鬼と、ここに来ていた黄鬼に関しては心配無用よ。全部退治したから」
「どういうこと? 逃げられたんじゃないの?」
「この前のテラフォーミング施設の自爆の時に、熊さん達の亜空間脱出フィールドが宇宙パワーの暴走で邪魔されちゃったの覚えてる?」
「そう言えばそんなこと言ってたね」
「同じ原理よ。亜空間脱出フィールドは母艦の性能にもよるけど、高濃度の宇宙パワーが同軸上に存在すると安定しないわ。だから、攻撃時に爪とかに過剰な宇宙パワーを集めると、干渉することも可能なのよ」
「え、それってまさか」
「わたしの噛み付き王もぴぴの切り裂き王も、扱える宇宙パワーの出力が違うからね。亜空間フィールドごとどっか~んってやってあげたの。それと、熊さん達が倒した分も、亜空間索敵機能を使って探し出して、ぷちぷちって潰しといたの」
「おお~、流石だね二人とも!」
『ぴぴさん、ぷうさん、お話伺わせていただきました。亜空間脱出フィールドを使用した敵への止め、ありがとうございます』
『ああ、俺からも礼をいうぜ。後でデータ貰っていいか?』
「うん、いいよ~。ただ、ぴぴの切り裂き王は、こないだ修理したとこが高出力の宇宙パワーに耐えられなかったみたいで、思いっきり消耗しちゃったんだよね。それで、またちょっと調子悪くなっちゃったみたい」
「ええ、まさかこの程度のことでまた調子が悪くなるなんてね。デメキンを沈めたら、本格的にオーバーホールしないといけないわね」
「だね~」
「う~む」
さて、どうしようね。我輩がう~むと、ハードボイルドにゃんこ的かっこよさを醸し出しながら悩んでいると、めめさんが提案してくれる。
『はぴさん、熊太郎さん、もう少しで戦利品の輸送準備も終わりますので、その後、これからの予定の話し合いをしたいのですが、よろしいでしょうか?』
「うむ、わかった」
『ああ、俺も問題ない』
我輩としても渡りに船だったため、めめさんの提案を承知する。
そして、戦利品を回収し終え、とりあえず距離を取ってデメキンと並走しながら、めめさんの親羊宇宙船で話し合いを開始する。
「お集まりいただきありがとうございます」
「いや、俺達としても今後の予定を話し合いたいと思っていた」
「うむ、我輩もだ」
「ねえはぴさん。はぴさんってさ、あたしやお姉ちゃんに対するしゃべり方と、ぴぴさんぷうさんとしゃべる時のしゃべり方って全然違うよね? どうして~? っていうか、どっちが素なの~?」
「こらババ!」
この妹羊め、今この場で我輩の中に眠る肉食獣の血を目覚めさせてやろうか!?
「え~、はぴさんの中にそんな血は絶対流れてないと思うな~」
ぐう、ついつい心の声が漏れていたようだ。だが、我輩としてもここで引くわけにはいかない。我輩のハードボイルドにゃんこ道を妨げる者がどういう目に合うのか、目にもの見せてくれるわ!
「見せてやろう、対めめさん用に考案したこの必殺技、スーパー回転猫パンチを!」
てしてしてしてしてしてし!
「はぴさん、痛くも痒くもないんだけど?」
「ふん、このスーパー回転猫パンチは、物理ダメージを与える必殺技ではないのだよ。そう、この攻撃は妹羊、お前のその大量の毛に、大量の毛玉を作る攻撃なのだよ!」
「え、ええ? ええええええ~!? うわ、ほんとに毛玉が出来てる!? ちょっとはぴさん、ダメ、この勢いで毛玉を作られたら、私の毛並みが~!」
「まだまだまだまだまだ~!」
てしてしてしてしてしてし!
「お姉ちゃん助けて~!」
「ふん、猫の機動力に、羊が勝てると思うなよ!」
我輩は小生意気な妹羊を追いかけまわす。
「はぴさん? ババにお灸をすえるのは結構なのですが、対私用に開発したっていうのは、どういうことですか?」
え? 我輩そんなこと言ったかな? なんか、めめさんが怖い。
「我輩、そんなこと言ってないよ?」
絶対に言っていないはずだ。妹羊はともかく、めめさんを敵に回そうとは我輩1mmも思ってないからな。
「い~や、言ってたね、あたしも聞いたもん! この耳でばっちりね!」
「ババ、あなたは黙っていなさい。はぴさん、言っていないということでいいのですよね? 私の気のせいですよね?」
「うん、めめさんの気のせいだと思うよ」
「ならいいのです。どうぞ、続けてください」
どうやら誤解は解けたようだ。危ない危ない。でも、流石めめさん、話せばわかるし、空気の読める羊さんだ、それに比べて妹羊め! って思ったけど、こんな空気の中バトルを再開できるほど、我輩も妹羊も心が強くなかった。




