第22話 おったっから! お宝! とっれじゃ~!
我輩達はテラフォーミング装置の中を、ミニぴぴぷちゃ号でどんどん進んでいく。時にテラフォーミング装置の暴走によって出来た亀裂を通り、特にミニぴぴぷちゃ号の鋭い爪で道を切り開いたりしながらだ。
「どこまで降りて行けばいいの?」
「もう少しかしら、広い洞窟に出るはずだから、そこが第1の目的地よ」
その後も順調に下へと進んでいくと、ついにテラフォーミング装置を通り抜け、洞窟のような場所へと到着した。
「へ~、ここがその洞窟なの?」
「ええ、そうよ。すごいでしょう? お宝だらけよ」
「お宝だらけ? ここが?」
「ただの洞窟じゃねえのか?」
ぴぴは堂々とお宝だらけとかいうけど、我輩にとってはただの洞窟にしか見えない。ミニぴぴぷちゃ号の目は高性能だから真っ暗な洞窟の中でも何の問題もなく外の様子が見えるけど、どこをどう見てもただの洞窟にしか見えない。そして、熊太郎も我輩と同じ考えのようだ。
「これほどすごくはないけど、十分なものがいっぱいあるでしょう?」
「「これ?」」
「これよ」
そういってぴぴは切り裂き王が咥えている石を指さす。我輩達はみんなでその石、いや、大きいから岩かな? を眺めていたけど、やっぱりどこがお宝なのかわからない。
「ねえ、熊太郎。これって、石っていうか岩だよね?」
「ああ、俺にもただの石か岩にしか見えねえ」
やっぱ熊太郎にも岩にしか見えないようだ。でも、我輩達の意見を聞いたぴぴとぷうがなんかため息をはいていた。そして、熊次郎が突然大声を上げた。
「こ、これ! ぴ、ぴぴさん、これって、スペースマテリアルですか!?」
「ええ、そうよ。宇宙パワーの保有量がかなり多い、質のいいスペースマテリアルでしょう?」
「はい! こんなすごいスペースマテリアル、初めて見ました」
「でしょう? それはここよりもっと下で採れたものになるけど、ここの洞窟のスペースマテリアルもかなりの品質よ」
「待ってください」
そういって熊次郎はミニぴぴぷちゃ号のモニターを凝視する。
「す、すごい。なんですかこの洞窟。この洞窟にあるスペースマテリアルだけで、一生遊んで暮らせますよ!」
「ええ、さっきから私はそう言っているんだけど、はぴも熊太郎も信じていないのよ」
「こんな石がお宝なの? 光ってないよ?」
「はぴ、お宝イコール光物というわけではないのよ?」
「うんうん」
「はぴさん、聞いてください。このスペースマテリアルは、宇宙パワーが凝縮してできた特殊な物質なんです。例えば鉄と混ぜれば、スペースマテリアルの保有する魔力の分だけ鉄の各種特性を引き上げてくれるんですよ。これさえあれば、いままでの常識では考えられないほど硬さと粘りを両立した鉄だって容易に生み出せます。それに、金なんかと混ぜれば、光沢、伝導性といったものを強化することだって可能です!」
「へ~、じゃあ、金と混ぜればもっときらきらな金になるの?」
「もちろんです!」
「おお~、ならすごいかも!」
「ぴぴさん、ぷうさん。早速採掘しますか!?」
「いいえ、そこのトロッコの中に小鬼達が採掘したものがあるから、それだけ後で頂いていきましょう。いまはもっと下を目指すわ。というわけではぴ、お願いね」
「うん」
我輩はミニぴぴぷちゃ号を巨大な穴の中に向けて動かす。うわ~、凄いな。ミニぴぴぷちゃ号の目だから周囲の様子はよく見えているけど。こういう穴のことを深淵っていうのかな。
「あの、大丈夫なのでしょうか? ものすごい強大な宇宙パワーを感じるのですが」
「ミニぴぴぷちゃ号なら大丈夫よ。すごく頑丈だから。でも、外に出るのはお勧めしないわ。さっきの洞窟ならぎりぎり活動できたかもしれないけど、ここはたぶん熊さん達のBPSだと活動が厳しいレベルの宇宙パワーだと思うわ」
「そうですね。戦闘用ではなく、採掘用のパワードスーツをこしらえないと厳しそうですね」
そして、とうとう最下層へとやってきた。
「これは、宇宙パワーの大河、でしょうか?」
「ええ、実際には液体ではないのでしょうけど、まさに大河に見えるわよね」
「はい。ですがここまで宇宙パワーの濃度が濃いと、採掘用のパワードスーツでも迂闊に近寄れませんよね」
「そうね、実際小鬼達も採掘していたのは上の洞窟までで、この縦穴には一切手を触れてなさそうよ」
「ぴぴ、切り裂き王が妙にダメージ受けてたのって、まさかここに飛び込んだからじゃないよね?」
「ごめんなさいね、ぷう。その通りよ」
「この中に飛び込んだんですか? 自殺行為ですよ!?」
「切り裂き王なら少しは平気だと思ったのよ。でも、思った以上にダメージを受けてしまったの」
「はあ、まったくもう。切り裂き王を直すのはわたしなんだからね!」
「それに関しては本当にごめんなさい。でも、切り裂き王をいじるにしても、ここのスペースマテリアルはいい材料でしょう?」
「ん~、それはそうだけど」
「というわけだから、はぴ、ミニぴぴぷちゃ号で採掘お願いね」
「へ? こんなやばそうなところに入るの?」
「あら、ミニぴぴぷちゃ号なら平気よ」
「それはそうかもしれないけど・・・・・・」
我輩としてはちょっと嫌だったんだけど、ぴぴだけじゃなくてぷうまで行こう、というような顔をしている。しかたなく我輩はミニぴぴぷちゃ号で宇宙パワーの大河の中にもぐる。
「流石はミニぴぴぷちゃ号ね。どうってことなさそうね」
「うんうん。あ、ぴぴ、あそこの尖ってるの良さそうじゃない?」
「本当ね。はぴ、あれをポキって折って回収して」
「は~い」
我輩はミニぴぴぷちゃ号の爪で、スペースマテリアルの塊を壊して確保する。長さはミニぴぴぷちゃ号よりもちょっと長いけど、あんまり太くないから、これなら口に咥えて持っていけるかな。
「じゃ、ミニぴぴぷちゃ号で咥えて持ってくね」
「おい、はぴさん。口で咥えるのはまずくないか? この部屋にこの濃度の宇宙パワーが流れ込んできたら、俺たち全員死んじまうぞ!」
「大丈夫大丈夫、ミニぴぴぷちゃ号の口は入れたいものしか入んないようなバリア機能付きだから」
「そうか、なら安心したぜ」
「それじゃあ、あとは上の洞窟に戻ってトロッコを回収すればいいのかな?」
「ええ、それでいいわ」
上の洞窟まで戻り、トロッコに積まれた小鬼達が採掘したスペースマテリアルを、トロッコごとミニぴぴぷちゃ号の手で持って回収する。さあ、あとはテラフォーミング施設を脱出するだけだ。でも、来た道はテラフォーミング施設の暴走によって完全に破壊されている。そして我輩は、それ以外の道を知らない。
「それじゃ、後は脱出だね。ぴぴ、道案内をお願いね」
「道案内も何も、ミニぴぴぷちゃ号なら無理やり上に進んでいけるでしょう?」
「いや、だって上って完全に壊れてるっぽいよ?」
「口も開かないし、手も使えないけど、ミニぴぴぷちゃ号なら頭突きでなんとかなるでしょ? この基地にもう用事は無いから、周辺がどれだけ壊れても大丈夫よ。だからよろしくね」
「は~い」
ううう、ぴぴもぷうもミニぴぴぷちゃ号使いが荒いよ、もう。でも、ほかに方法はなさそうだし、しょうがないから我輩は頭からテラフォーミング施設の残骸に突入し、そのまま強引に外まで脱出した。
ミニぴぴぷちゃ号。後できれいに洗ってあげるから、許してね。




